これもニューヨーク滞在中に読んだ一冊。
湯川氏はポッドキャストを拝聴しているし、いろいろな場ですれ違ったこともある(今度ちゃんとご挨拶します)のだが、実は著作を読むのはこれが始めてだったりする。もう1年近く前の書籍なので、ちょっと情報が古くなっているところがあるが、なかなかの力作。ちょっと表現方法が荒いかなと思わせるところもあるが、後で書くように、これは実は湯川氏の思いをぶつけた一冊だと思うので、その意味では、この荒さも肉声を伝えているという意味では悪くない。
いくつかの類書と同じように、ネットによるメディアの変化-特にソーシャルメディア(湯川氏はCGMと同じだとしている)-による新しい潮流を解説する。いくつかのサービス、たとえば今となっては新しいとはもはやいえなくなっているが、YouTubeやセカンドライフなどをその誕生から内容までを解説している。その解説自身も読み応えはあるものの、正直類書と大きな差はない。
ただ、湯川氏も自ら書いているように、実は本書はマーケット情報を解説しただけの本ではなく、湯川氏自身の「表現」というものに対する考えをぶつけるものとなっている。全体を通してそれは伝わってくるのだが、四章の「爆発するクリエィテイビティ」はまさにそのための章と言っても過言ではない。
特に、氏が言う、「表現欲求は日本人も米国人も同じ」というところには共感した。ネットのあり方のすべてを国民性のせいにしてしまうことは、正直私もあるが、それは安易な方法に思える。方法の違いや時期の違いはあるが、おそらく日本も表現するということに貪欲な人々が多くネット上に誕生してくることになるだろう。ちょうど、時期を前後して読んだ「大人が知らない携帯サイトの世界 ~PCとは全く違うもう1つのネット文化~」で解説されているケータイ世代がその突破口になるのかもしれないし、団塊の世代によりそのような潮流が生まれるのかもしれない。
また、表現するという欲求が生まれる背景をマズローの欲求段階説やマルクスの理論を持ち出し解説している(四章)。ここもなかなか面白い。
爆発するソーシャルメディア セカンドライフからモバゲータウンまで グーグルを超えるウェブの新潮流 [ソフトバンク新書]
湯川 鶴章
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