2008年1月30日水曜日

家族シネマ

読後に何か嫌な感覚が残る。もっと言えば、読んでいるときから苦痛だった。途中で読むのを止めようかと思うほど。

柳美里氏の作品は「」、「」、「」、「」といういわゆる「命四部作」しか読んだことが無かったので、本書とゴールドラッシュを購入し、さっそく本書から読み始めてみた。

3つの短編で構成されている。「家族シネマ」は芥川賞受賞作。ばらばらとなった家族が妹の映画出演のために再開する話だが、ストーリーがとっぴ過ぎる。そういう小説は嫌いではないが、なぜかストーリーを冷静に読んでしまって入り込めない。「真夏」は短すぎて何も残らない。「潮合い」は3作の中では最もテンポ良く進み、ストーリー展開にもひきつけられるものがあるのだが、いかんせん暗すぎる。転校生に対するいじめの話だ。

全体的に思うのだが、不幸が前面に出すぎている気がする。投げやりな感じというか、厭世観に浸っているというか。いずれにしろ読み進めるのが辛くなる。カスタマーレビューなどで作品よりも著者が酷評されていたが、その理由が少しわかったように思う。

これと一緒に購入した「ゴールドラッシュ」も読む前から印象が思いっきり悪くなっている。だけどせっかく買ったのだから、とりあえず読み始めてはみよう。

家族シネマ (講談社文庫)
柳 美里

4062646684

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脳が若返る30の方法

脳が若返る30の方法 (中経の文庫)
脳が若返る30の方法 (中経の文庫)

最近、物忘れがひどい。


こんなことを言うと、やたら年寄りに聞こえるかもしれないが、事実なんだから仕方ない。他人と話す時にはメモ帳は放せない。そうでないと、何を話したか忘れてしまうから。

今年も新年とまだ呼べるくらいの時期に某所にて仕事をしていたのだが、仕事が一段落した後の軽い打ち上げ(かつ新年会)でやってしまった。あとで、その場にいた人に教えてもらったのだが、重要なことを何件も結論出していたようだ。まったく覚えていないので、メモ帳を見直してみたが、何も書かれていない。んー。どうしたものだか。

というような、めちゃくちゃな状態の私のような人間のための本かと思い、購入したのが本書だ。トレーニングという形で中に実践できる生活上の注意を30与えている。内容は脳のしくみから、それを活かす形のトレーニングの説明。簡単なトレーニングが多いが、今後のプロダクトアイデアを出す際などに使えそう。

ちょっと「キッパリ!」を思い出すのは、文体なのか内容なのか。いずれにしろ、読みやすいのは良い。もうちょっとトレーニングの内容が濃いものでも良かったかと思うが。

2008年1月29日火曜日

エディット・ピアフ~愛の讃歌

昨年観ようと思っていたのだけど、見逃していた映画の1つがこの「エディット・ピアフ~愛の讃歌」なのだが、下高井戸でまだやっていたので、会社を早めに切り上げて行ってきた。

エディット・ピアフというとシャンソンの女王というようなイメージしかなかったのだが、この映画では彼女の波乱に満ちた人生を心のそこから搾り出すような歌声を重ね合わせて描いている。

以下、ネタバレあり。

父親がサーカスから飛び出し、一人で大道芸をやるようになった時に、観客から「その子も何か芸をやるのか」と聞かれて、しかたなく歌いだすところから彼女の歌手としての人生が始まる(Wikipediaに書かれているものと異なるが、映画ではこうなっている)。この部分の歌声がとても印象的。スピルバーグの「太陽の帝国」のエンディング近くで少年が両親を探し出すときに、透き通る声で歌い、両親と再会するのを思い出す。同じことはエンディングの最後のステージでの歌にも言える。

シャンソンにはあまり興味が無かったが、少し聴いてみようかと思った。

2008年1月28日月曜日

佐藤可士和の超整理術

ユニクロやNTT DoCoMoの「FOMA N702iD / N703iD」などのデザインで有名な佐藤可士和氏が整理術について書いた一冊。

整理を「空間の整理」、「情報の整理」、「思考の整理」に分けて解説する。後半に、それぞれ氏の手がけたプロジェクトのエピソードを交えて説明しているのだが、今ひとつ新しい情報としては物足りない。コンパクトにまとめたら、10ページくらいで解説できる話かもしれない。これは整理術などというように無理にまとめないで、氏のプロジェクト紹介をしたほうがまだ読み物として面白かったのではないだろうか。

ちょっと期待はずれ。

佐藤可士和の超整理術
佐藤 可士和

4532165946

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Daisuke Kawai meets Minako Yoshida @Motion Blue Yokohama

約1週間も前のことになるが、横浜の赤レンガ倉庫にあるモーションブルーヨコハマ(Motion Blue Yokohama)で行われたハモンドオルガン奏者の河合代介氏とボーカリストの吉田美奈子氏のライブに行った。河合氏には申し訳ないのだが、吉田美奈子氏目当てだ。ただ、予想外に河合氏のソロも大変素晴らしいものだった。



2部構成になっていたのだが、途中で入れ替えなし。当然それぞれの部で演奏される曲も異なる。1部も2部も前半がハモンドオルガン単体でのソロで、後半から吉田美奈子氏が参加した。今回は吉田美奈子氏のオリジナル曲は封印し、ジャズのスタンダードが歌われた。

ハモンドオルガン
のソロというのは初めて聞いたのだが、なかなかソウルフルな演奏でよい。ディープパープルのジョンロードの演奏を思い出す(曲調はぜんぜん違うけど)。

吉田美奈子氏のボーカルも冴えている。もう10年以上も前に大久保にある東京グローブ座でのライブに行ったことがあるのだが、小さい小屋だったので、そのときはマイクを離して地声で一部歌っていた。今回もマイクの使い方が非常にうまい。マイクを離して声を延ばしたときなど、鳥肌がたつかの思いだった。

モーションブルーヨコハマがある赤レンガ倉庫というのも夜行くのは初めてだったのだが、とても綺麗。また来てみたい。

送信者 Daisuke Kawai...

2008年1月27日日曜日

ファシリテーション入門

以前に購入して、軽く一読していたのだが、あるイベントでファシリテーターを務める必要があったので再読してみた。

本書ではファシリテーションを次のように説明している。
ファシリテーション(facilitation)を一言でいえば、「集団による知的相互作用を促進する働き」のこと
さらには、一部孫引きの形になってしまうが、次のようにも説明されている。
 もう少し具体的にいえば、「中立的な立場で、チームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、そのチームの成果が最大になるように支援する」(フラン・リー著、黒田由貴子訳『ファシリテーター型リーダーの時代』)のがファシリテーションです。またその役割を担う人がファシリテーターであり、日本語では「協同促進者」または「共創支援者」と呼びます。
 ファシリテーションのポイントはふたつあります。ひとつは、活動の内容(コンテンツ)そのものはチームに任せて、そこに至る過程(プロセス)のみを舵とりすることです。そうすることで、活動のイニシアチブをとりながらも、成果に対する主体性をチームに与えることができます。
 もうひとつは、中立的な立場で活動を支援することです。それによって客観的で納得度の高い成果を引き出していきます。このふたつがそろって初めて、ファシリテーターへの信頼が生まれ、チームの自立的な力を引き出すことができるのです。
本書では、このファシリテーションを実践するためのスキルとして1) 場のデザイン、2) 対人関係、3) 議論の構造化、4) 合意形成 を解説している。いくつかはファシリテーションとは独立して身につけられているものもあると思うが、このようにファシリテーションという視点から解説されるのはそれなりに意味がある。ざっくりとファシリテーションを知りたいという人にお勧め。説明がわかりやすいのも好感持てる。

なお、ファシリテーションが必要となっている背景を解説した部分で「リーダーシップ」と「マネージメント」の違いが解説されているが、この解説もなかなか面白い。
 少しおさらいをすると、リーダーのもっとも大切な役割は、組織の方向性を決めることです。複雑な環境に対して、組織が存在する意味(ミッション)を明らかにし、組織がめざす目標(ビジョン)とそこに至る道筋(戦略)を指し示します。その上で、自らが望ましい行動の模範を示しながら、人をつくり組織を育てていきます。特に、競争と変化が激しい現在では、常に変革の方向性を示し、それを推し進めていくのがリーダーの本質的な仕事となります。
 それに対してマネージャの役割は、定められた目標を達成することです。リーダーが「なにを(What)」を明らかにするのに対して、マネージャは「どうやって(How)」を決めるのです。すなわち、目標を達成するための具体的な計画をつくり、組織が持つさまざまな資源の配分や構造を決めます。さらに、メンバーの進捗を管理して成果へと導き、その過程を振り返ることで業務の質を高めていきます。これがマネジメントです。
なるほど。

ファシリテーション入門 (日経文庫)
堀 公俊

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ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則

ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則 (幻冬舎新書 さ 3-1)
ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則 (幻冬舎新書 さ 3-1)

私は社会人になってから、基本的にずっとソフトウェアの開発を行っている。社会人に成りたてのころは特定のお客様へのシステム開発を担当していたが、その後、そのシステムを汎用パッケージにし、さらには巡り巡ってOSの開発まで行うようになった。一昨年の2度目の転職で、ウェブアプリケーションを担当するようになったのだが、どのようなソフトウェアを開発するときも、常に自分の担当するソフトウェアのユーザビリティには頭を悩ませている。

おそらくユーザビリティスタディを行ったことのある人なら誰もが経験したことがあるだろうが、開発者の意図とはまったく違う行動をユーザーはとることが多い。この順番で選択していくだろうと考えたオプションがぜんぜん違う順番で選択されたり、そもそも気づかれなかったり。また、汎用のソフトウェアだと、ユーザーのレベルを固定することができない。その場合、いかに低いレベルのユーザーを救うか。ウィザードなどを用いることもあるが、その機能をすでに理解した人にウィザードのまどろっこしい操作をいつまでも強要することは好ましくない。

このような中、ゲーム機(ゲームコンソール)やゲームソフトのユーザーインターフェイスというのは、説明書を熟読することなく、どのようなレベルのユーザーもすぐに利用できるような工夫がされている。しかも、社会問題になるほど、熱中して利用するようになる。このようなゲームにおける開発技法を解説しているのが、「ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則」だ。「ゲームニクス」とは著者のサイトウアキヒロ氏の命名だ。

ゲームニクスは1) 直感的な操作性と2)段階的な学習効果を目的としたもので、次の四原則から成る。
  • 第一原則「直感的ユーザーインターフェイス」
  • 第二原則「マニュアルなしでルールを理解してもらう」
  • 第三原則「はまる演出」と「段階的な学習効果」
  • 第四原則「ゲームの外部化」~ファミスタで読み解く
第一原則から第三原則までは説明するまでもないだろうが、ゲーム機やゲームソフトがどのようにこれを解決しているかについてが詳しく本書に書かれている。第四原則の「ゲームの外部化」というのはゲームの中での経験をゲーム外に持ち出すことやリアルな世界をゲームの中で再現することを指す。この四原則を基本とするゲームニクス理論の全体像については本書のP.68-69で整理されている図を見るのが一番だろう(ここに貼るのはさすがに問題あると思うので、それは控えておく)。

なお、本書ではDSやWiiの成功を例としてゲームニクス理論が解説されているが、DSの競合はPSPではなく、経路依存性だったというのはそのとおりだ。経路依存性とは
過去の出来事が現在の行動に影響を与えること
だ。
二画面+タッチペンという操作スタイルが反発を招いたのは、誰もが「両手で握って遊ぶ」スタイルに慣れ親しんでいた
からである。

膨大なインストールベースというのは時としてイノベーションの阻害要因になるが、このDSの例も同様のケースであろう。これに対して、任天堂がとったのは次の方法だ。
 一度ゲームを遊んでもらえば、すぐに内容が理解できて、絶対おもしろいと感じてもらえる製品にすることです。これができなければDSプロジェクトは瓦解します。ユーザーの第一印象がDSのすべてを決めるのです。
 そのために徹底的に追求されたのがゲームニクスの観点でした。ゲームニクスの重要性を正しく理解し、それを豊富に取り込んだ製品開発を行ったからこそ、二画面+タッチパネルという奇抜な操作系が、逆にDSならではの長所となりました。
本書では、さらにゲームニクス理論でiPodやMixiなどのヒットも説明し、後発組がシェアを獲得するための「ブルーオーシャン戦略」にマッチするのがゲームニクス理論だとしている。

どのような製品にも応用できるものではないかもしれないが、技術革新が早い分野の製品などでは、かなり参考になるのではないだろうか。

参考: ブルーオーシャン戦略(Wikipedia)




ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則 (幻冬舎新書 さ 3-1)
サイトウ アキヒロ

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2008年1月20日日曜日

アンカー展 -Albert Anker

送信者 Anker2007


渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで行われている(今日まで)アンカー展に先日の昼休みに行ってきた。渋谷にオフィスがあるとこういうときに便利で良い。

アンカー(Albert Anker)は日本では無名だが母国スイスでは国民的画家として人気の19世紀の自然主義画家だ。スイス中央部のインス村の生活を描いたものがほとんどだ。

Albert Anker - Wikepedia (English)



村人の人物画がほとんどなのだが、その細密な作品は思わず見入ってしまう。作品に登場する人々への愛情が感じられる。幼くなった自分の子供(2名)の亡骸を描いた作品もあったが、どのような気持ちだったのだろう。

作品はウェブ上でもChildren in Artで少し見ることができる。

効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法

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なんかベストセラーになっているらしいのだが、タイトルだけ見てアマゾンで購入した1冊。著者の勝間氏も著名人らしい。そういえば、名前も顔もどこかで見たり聞いたりしたことがあった。

効率的な情報の取得と整理や時間管理については常に考えていて、そのためライフハックやGTD(Getting Things Done)などについては書籍を読んだり、ウェブなどでも情報を取得していた。本書もその類の本と考えてもらってよい。ただ、著者の経験談に基づくポイントを絞った明確な解説は説得力がある。ただ、あまりにも著者の実践している内容が凄すぎて、ここまではできないと読者に思わせてしまう可能性はある。

たとえば、表紙を開いて最初に出てくる見開きのページ。ここには自転車での通勤姿と思われる勝間氏と氏が使っているデジタル(だけではないけど)機器の数々の写真が掲載されている。こういうと失礼かもしれないが、思わずキカイダー(と言っても今の若い人はわからないらしい。要するに人造人間だ)を思い出してしまった。ここまでしないと情報社会では生きていけないのか。

と思いつつ、かなり自分も同じことをしていることに気づいた。携帯電話は(日本で動作するものだけでも)2キャリア(3機種)常時持ち歩いているし、ノートPCは常に1台で出張時にはバックアップのためにもう1台。今はしていないけれど、1990年代後半にはカシオがとち狂って出したとしか思えないMP3腕時計をまっさきに購入していた。同じく今は使っていないけど、シャープのザウルス、カシオのPcoket PC、IBMのWorkPad(パームのOEM)、シャープのLinux版ザウルスなどのPDAも使っていた。勝間氏と違って、健康面の管理はまったくやっていないが、それでも睡眠時間を1.5時間で割り切れる時間にする(体内時計のリズムに合わせるため)ことや極度に眠くなったときには短時間でも睡眠をとるようにすることなどは心がけている。

勝間氏の書かれていることの多くはすでにほかの書籍などで知っており、いくつかは自分でも実践していることであったが、自分の価値を発揮できないところをばっさり捨てることや読書を著者との対話にたとえるところ、優良な情報ほど価値があると考えるところなどは参考になった。読書については、以前より速読と言われるものに興味があったのだが、本書でもフォトリーディングとして紹介されている。一度きちんと勉強してみようかと考えている。

勝間氏はアウトプットの最終目標として本を出すことを勧めているが、私もこれには同意する。私が書籍の執筆をさせてもらったのはもう10年以上前になるので、私の著作(共著だったが)を覚えている人は今はもう多くないだろうが、少し前までは会う人に「あのXXXを書かれた方ですよね」と聞かれることも多かったし、本書でも紹介されているように、本が元でさらにほかの執筆の依頼や講演の依頼が来るようになっていた。本を書くことで世界が広がるのは確かだし、そもそも本を書くためには日ごろの勉強が欠かせない。普段勉強しているつもりでも、書籍として一般に販売するとなると、中途半端に理解していた部分でも完全に把握しないといけない。さらには単なる情報を整理しただけでは付加価値は生まれない。そこに新たな価値を付け足す必要があるので、情報の再加工が必要となる。勝間氏はブログからまずスタートしたほうが良いと言う。そのとおりだと思うのだが、私の場合、このブログもはてなに書いている技術系のブログにしろ、そこまでジャーナリスティックな視点を持ったものではなく、どちらかというと備忘録的なものであり、かなり私的なものだ。ただ、実名でしかも少なからずの人に読んでもらえているのだから、もう少しほかの人に役立つ情報を加えられるようにしなければと思う。

最後に、本書の最初やほかの多くのところに著者である勝間氏の実績が書かれている。氏に悪いが、ちょっと鼻についた。プレゼンテーションなどでも、プレゼンターがどこの誰かわからない場合には、権威付けのために、受賞したアワードや第三者からのレコグニションを冒頭に話すことがある。ここでの氏の実績紹介も同様のものかもしれないが、そこまでしなくても氏のすごさは皆分かっているのではないか。あと、有償の情報の価値を認め、それに対する敬意を表するためと古本は購入しないと言っている(P.155)のであるが、一方で読者には古本(古書)を勧めたり(P.91)、手元に残すわずかな書籍以外はブックオフに売ると言っている(P.162)。ちょっと矛盾を感じる。本質的な部分ではないが、今、情報商材と言われるものについていろいろと考えていたので、少し気になった。

勝間氏はほかにも「無理なく続けられる年収10倍アップXXX法」というようなタイトルのベストセラーがあるようだが、今度ちょっと書店で眺めてみよう。本書とあまり重なるところが無いようだったら、買ってみるかもしれない。


効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法
勝間 和代

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2008年1月19日土曜日

クワイエットルームにようこそ (映画)



クワイエットルームにようこそを渋谷でレイトショーで見た。以前すでに小説は読んでいた。そのときの感想を読み返してみると、ありえないくらい酷評しているんだが、この映画版はすごい。松尾スズキは天才じゃないかとさえ思う。というか、小説でこのすごさがわからなかった私が鈍いのかも。

蒼井優という女優。名前は知っていたのだが、もしかして顔と名前が一致するようになったのは、この映画が初めてかもしれない。女優としてこんなにすごい人だったのね。ファンだという同僚に蒼井優がすごかったと話して、映画のワンカットでの出演場面を見せたところ、「これは僕の知っている蒼井優じゃない」とボソっと言っていた。確かに公式サイトや画像検索で出てくる彼女とはだいぶイメージが違う。髪形が違うせいもあるだろうが、拒食症の役作りの為に7kg減量したせいもあるだろう。

その蒼井優演じる「ミキ」が言う「システム」。中村優子演じる「栗田」が言う「娑婆」-これも一種の世界や社会だろう。どちらが外でどちらが内かわからない。戻るのはどちらからどちらへだろう。いろいろと解釈できる映画だ。笑いをとりながら、この重いテーマを語れるところにも松尾スズキの力量を感じる。

一番好きだったのは、「ミキ」の言った次の台詞。

“あたしが狂ってるんじゃない、システムが悪いだけ”


狂っているのは果たして誰か。以前からこのようなことを考えることが多かったが、つまりはみんな狂っているんだろう。

役者はみな良い演技をしている。宮藤官九郎も良いし、大竹しのぶも良い。主演の内田有紀も良いのだが、もうちょっと汚れてても良いかも。でも、あのぶっきらぼうな台詞廻しと壊れっぷりはなかなか。

以下、ほかに印象に残ったところ。ネタバレあり。
  • 病棟では極めてまともに見える栗田が最後に病棟に戻ってくる。明日香はタクシーの中で彼女からもらったメールアドレスを捨てる。そのアドレスが life_is_happy@loop.com。life_is_happyとloop。Loopするのは誰か。栗田だけなのか。
  • さらに、同じく栗田。「泣くわよそりゃ。こんなに人間が集まっているのに、こんなに孤独な場所、ほかにないもの」。それは中か外か。
  • ブルジョア拒食症の子が作っているパズルがエッシャーの無限階段。昇っているのか降りているのか。
それと、いろんな人がブログに感想を書いているけど、以下のブログが特に印象に残った。なるほど、28歳女性ね。

悪魔の小部屋-クワイエットルームにようこそ



クワイエットルームにようこそ 特別版 (初回限定生産2枚組)

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ウェブ国産力 日の丸ITが世界を制す

連続しての投稿になるが、こちらも佐々木俊尚さんの書籍。またまた、贈呈いただいたもの。佐々木さん、いつもありがとうございます。

本書は「検索」と言われている技術に再注目し、まだイノベーションが起き得るものであること、また日本発の検索技術が世界に向けて飛び立つ可能性について書かれている。直前に感想を書いた「ネット未来地図 ポスト・グーグル時代 20の論点」以上に立場上感想を書きにくい内容だ。

まず、検索がまだまだ成長過程の技術であるということには激しく同意する。私は会社では、まさにその検索の担当者なのだが、そのことを話すと人によっては「何することあるの」というようなキョトン顔をする人がいる。彼にとっては、もはや検索は枯れた技術に見えるのかもしれないが、そんなことはまったく無い。日々新しい技術が投入されている、いまだに最も熱い技術領域の1つだ。

その中で本書は日本ならではの検索についてスポットを当てる。経済産業省が進める「情報大後悔プロジェクト」、もとい「情報大航海プロジェクト」は当初「グーグル対抗検索エンジンを開発」などと言われたため、誤解を受けていたようだが、そうではなく、日本の得意分野である日本語のデータマイニングやリアルワールドの情報を吸い上げるセンサーネットワークやP2Pなどからのデータに対しての検索技術を開発している。あまり多くを語れないが、検索がウェブのためだけでないというのはもっともであり、日本のベンダーの技術が生きる部分も多くあるのも同意する。

それよりも、本書の中で、特に最後に書かれている日本のIT業界の歪な構造の是正こそ政府には是非進めてもらいたい。本書の中では、新しいネットベンチャーの登場や90年代後半に終身雇用制が崩れたことにより、状況は改善されつつあるとしているが、逆にドットコムバブル崩壊のトラウマがいまだ残っていて、優秀な人間がそもそもコンピュータサイエンスに興味を示さなくなっているという事実もある。3Kと呼ばれる土建屋のような業界構造も嫌われる理由だ。いかに魅力的な業界であるかをわれわれは結果を持って示していかなければいけない。あと、若い人だけでなく、大企業の研究所で決して高くない給料でいつ世の中で使われるかもわからない技術の研究(研究テーマの話ではなく、官僚的な組織でせっかくの良い技術が外に出ない構造のことを言っている)をしているような人。たくさんいるのは知っている。寄らば大樹のつもりかもしれないけど、大樹だって倒れる。一度しかない人生なんだから、社会に影響を与えるようなことをしたらどうだろう。いまだに大企業の研究所が優秀な人材を死蔵させているのがこの業界の問題だと思う。この「情報大航海プロジェクト」だけでなく、そういった人たちに外に出てきてもらうような(別に転職や起業しなくてもいい)ことを促進するようなことを大企業や国には期待したい。

ところで、本書の内容はかなり「ネット未来地図 ポスト・グーグル時代 20の論点」とかぶる部分がある。たとえば、こちらの書籍でもNTTドコモのマイライフアシストサービスは紹介されているし、リコメンデーションについての解説もある。本書が検索にフォーカスしているとは言え、「ネット未来地図 ポスト・グーグル時代 20の論点」でも検索に関するトピックが多くカバーされていたので、重なるのは仕方ないところか。ただ、検索に関するトピックについては、本書のほうがさらに詳しく解説されているので、両方読むとさらに理解が高まるだろう。両方読む読者は多少既視感(既読感というほうが適切か)をいただくことになるだろうが、出版社が異なるから、続編にすることもできなかったのだろう。仕方ないところか。もっとも、こちらだけ読む読者も多いだろうから、私のようにここ数年の佐々木氏の書籍をほぼすべて読破しているものでもなければ気にならないかもしれない。

ウェブ国産力―日の丸ITが世界を制す (アスキー新書 047)
佐々木 俊尚

4756150950

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ネット未来地図 ポスト・グーグル時代 20の論点

本書も著者の佐々木俊尚さんからいただいた本。佐々木さん、いつもありがとうございます。

それにしても、すごい勢いで書籍を出されている。まず、そのパワーに圧倒される。

ネット未来地図 ポスト・グーグル時代 20の論点 (文春新書 595)

日々新しいサービスやビジネスが生み出されるネット社会。今後のネット社会の方向性を20の論点に整理して解説したのが本書だ。佐々木氏の書籍はかなり読んでいるが、このような切り口で書かれたのは初めてではないだろうか。1つ1つの論点が明快で、すんなりと頭に入ってくる。後で読み直すときも、該当する論点を探し出すのも容易だ。氏のライターとしての実力を思い知らされる。

解説されている20の論点は以下のとおりだ。
  • ビジネスとインターネット
    • 論点1 amazon アマゾンが日本のオンラインショッピングを制覇する
    • 論点2 Recommendation お勧め(レコメンデーション)とソーシャル(人間関係)が融合していく
    • 論点3 行動ターゲティング 行動分析型広告は過熱し、ついには危うい局面へ
    • 論点4 仮想通貨 電子マネーはリアル社会をバーチャルに引きずり込む
  • インターネット業界
    • 論点5 Google グーグル vs. マイクロソフト 覇権争いの最終決戦
    • 論点6 Platform 携帯電話キャリアは周辺ビジネスを食い荒らしていく
    • 論点7 Venture 日本のネットベンチャーの世代交代が加速する
    • 論点8 Monetize ウェブ2.0で本当に金を儲ける方法
  • メディアとインターネット
    • 論点9 YouTube ユーチューブは「ネタ視聴」というパンドラの箱を開いた
    • 論点10 動画 動画と広告をマッチングするビジネスの台頭
    • 論点11 TV 日本のテレビビジネスはまもなく崩壊する
    • 論点12 番組ネット配信 NHKが通信と放送の壁をぶち壊す
    • 論点13 雑誌 雑誌とインターネットはマジックミドルで戦う
    • 論点14 新聞 新聞は非営利事業として生き残るしかない
  • コミュニケーションとインターネット
    • 論点15 Second Life セカンドライフバブルの崩壊する時
    • 論点16 ネット下流 携帯電話インターネット層は新たな「下流」の出現
    • 論点17 Twitter 「つながり」に純化するコミュニケーションの登場
    • 論点18 Respect 「リスペクト」が無料経済を収益化する
  • 未来とインターネット
    • 論点19 リアル世界 検索テクノロジーが人々の暮らしを覆い尽くす
    • 論点20 Wikinomics 集合知ウィキノミクスが新たな産業を生み出す

自分の仕事に関係がありすぎるトピックが多く、会社と関係ない立場で書いていると宣言しているこのブログでもなかなかコメントしずらい。とりあえず無難なレベルでのメモ書きおよび感想を以下に書く。

行動ターゲティング広告に関しては、Yahoo! JAPANとOvertureがYahoo! JAPANの持つ膨大なユーザーデータを活かすことによるアプローチを解説している。ただ、仮想通貨のところでも触れられているように、個人-少なくとも個人の属性を利用したサービスは常に個人情報(PII)をどこまで事業者に提供するかという問題との兼ね合いが難しい。常に、Opt-inモデルを採用することはユーザーの利便性を低めることになる。OSを開発していたときに、セキュリティと利便性は相反するということが痛いほどわかった(Windows VistaのUACを考えてみて欲しい)が、同じことがウェブベースのサービスの場合に当てはまるのであろう。ただ、OSなどのパッケージソフトと異なり、利用者、事業者そして実際の社会におけるコンセンサスビルディングが必要になる。

仮想通貨では、PiTaPa(関西で利用できるSuicaやPasmoのような仮想通貨)の行動ターゲティング広告が面白い。本書の中では次のように解説されている。
駅の自動改札を通るたび、乗降駅や時間帯などに応じて、周辺のグルメ情報や自動的に携帯電話にメール配信される仕組みになっている。
また、仮想通貨はもともと事業者における利用者の囲い込みがゴールであったが、今ではポイント交換などを含めた共通インフラの可能性について協議しているようだ(経済産業省の「企業ポイント研究会」)。データ交換のフォーマット統一などが検討されているようであるが、この「フォーマット統一」というのはほかのサービスでも今まで何度か試みられたことがあるものの、すべてが成功しているわけではない。今回はどうであろうか。利用者から見た場合、異なる仮想通貨が存在していることによる利便性の低下はもはや苦痛にさえ感じるレベルになっている。1社にすべてを握られることの不安はあるが、必要以上のプレイヤーが存在することは期待していない。

論点6 Platformで紹介されているNTTドコモの「マイライフ・アシスト・サービス」は面白い。これについては書籍に詳しく解説されているが、日経BPのITProでも簡単に紹介されている。

経産省の検索エンジン開発、NTTドコモと日本航空の案を採択
 NTTドコモは、携帯電話を利用した技術/サービスを提案。携帯電話を介して人の行動情報を蓄積し、高度な解析技術を使って、個人にマッチする情報/コンテンツを探し出して提供するものだ。

<中略>

NTTドコモの提案は、書籍販売のECサイトで用いられる“レコメンデーション・エンジン”に近い。単純にいえば、「過去の行動履歴から判断して音楽好きな人が、音楽イベントの会場に近づいたらその案内を表示する」といった形だ。ただ、行動情報解析はより複雑なものになる。

 この核となる技術は、ユーザーの行動履歴を解析して、次の行動を予測してその人に役立ちそうな情報を検索する「行動連鎖型検索エンジン」。行動履歴の解析のために、大量の行動情報から行動モデルを作成する。携帯電話の位置情報などを入力として、モデルを介して必要な情報を検索するわけだ。
この考えは携帯ではがすでに多くの人々に行き渡っており、さらに単なる音声通信機器からインターネット端末へと進化したという事実をベースとしている。確かに、身の回りには携帯電話だけでなく、多くのコンピューターがあるが、どんなときにも身に着けているのは携帯電話だ。さらに、これに必要十分なインターネット接続機能、一昔前のメインフレームに匹敵するほどのデータ処理能力、地理情報を把握するためのGPS、一般のケースではほぼ事足りる携帯カメラ機能がついているとしたら、身の回りのコンピュータデバイスすべてに重複した機能を持たせるよりも、デジタルパーソナルアシスタント(PDA)として期待できる携帯電話を最大限に活用し、それ以外の役割を回りのコンピューター機器が持つようにすれば良いだろう。

論点9と10のYouTubeと動画についての部分は、あまりに艶かしすぎて、コメントしずらいので、ちょっとだけにするが、YouTubeの目的を「ネタ視聴」としたのは面白い論評だ。もっとも、ニコニコ動画などはさらにそれを進化させたものと市場では評価されているようだ。ニコニコ動画については、本書や日経BP - ニコニコ動画が示した「ネタ視聴」の新たな可能性を読んでみると良いだろう。特に、ニコニコ動画の「番組制作者ではなく、視聴者がCMを入れる」 という考え方は面白い。

論点11のTVでは、米国で1970年代に相次いでプライムタイムアクセスルール(PTAR)とフィンシンルールを制定し、これにより3大ネットワーク(ABC、CBS、NBC)の影響力を強め、コンテンツ産業の力を強めることに成功した。この2つのルールについては、日経ネットマーケティング TV 2.0への道のり: 番組コンテンツの流動化実現するための条件とはの説明がわかりやすい(と思ったら、これも佐々木氏だった)。
米国では「プライムタイム・アクセスルール(PTAR)」と「フィンシン・ルール」という政府が定めた二つの規制政策が存在したからだ。前者のPTAR は、3大ネットワークの直営局と加盟局は、プライムタイム(午後7時~11時の視聴率の高い時間帯)4時間のうち、1時間はネットワーク以外の番組を放送しなければならないという規則。1971年から96年まで施行された。また後者のフィンシン・ルールは、3大ネットワークの独占的影響力を排除するために 72年に導入された規則で、3大ネットワークが外部制作会社の制作番組について所有権を確保することを禁止し(フィナンシャル・インタレスト・ルール)、 3大ネットワークが自社ネットワーク経由以外でローカルテレビ局に対する番組放送権の販売を行うことも禁止している(シンジケーション・ルール)。この法律も当初の目的を果たしたとして、95年に廃止されている。
この後にも解説されているが、「コンテンツ」と「コンテナ」のそれぞれのプレイヤーが独立で存在できることが今のネット社会であるが、従来のメディアはその両方のプレイヤーであることで市場を独占してきている。このモデルはTVだけでなくすべてのメディア、さらには業界に当てはまるのではないだろうか。

論点12での番組ネット配信においては、NHKがキャスティングボードをつかむというのは確かにそうだろう。本書でも書かれているように、「CM広告料を維持する」という足枷を持っていないのは大きい。監督官庁により、NHKは次の世代のサービスを先んじて行わせるという方針があるようだが、この話に関してはそれは正しい方向かもしれない。これもかなり艶かしい話なので、これ以上はコメントしないが。ただ、本書の中で書かれていた「大道芸方式」から「木戸銭方式」へというのは非常に面白い例えだと思う。前者は今の受信料方式のことで、後者は番組ごとのPPV(Pay Per View)のような方式だろう。

論点13の雑誌に対する考察もおもしろい。マスメディアとマイクロメディアの間のマジックミドルという層をネットと雑誌がとりあっているという話であり、今後はやはりネットが伸びていくのではないかと佐々木氏は考察する。マジックミドルについては、
FPN-注目すべきはロングテールでもヘッドでもなく、真ん中のマジックミドルらしい
でも解説されているが、本書の中で佐々木氏は次のようにこの3つを分類する。
1. マスメディア 新聞、大手週刊誌など大部数の国民的雑誌
2. マジックミドル ローカル紙、コミュニティ誌、ソーシャルブックマーク、月間百万ページビューを誇るような人気個人サイト
3. マイクロメディア 個人のウェブサイト、ブログ、ミクシィの日記、2ちゃんねるの書き込みのひとつひとつ

このようなメディア層に対してネットと雑誌が真っ向からぶつかるというのだ。しばらくは雑誌のメリット(手軽さや表現力)が勝つだろうが、その後はネットに移行すると佐々木氏は分析する。

インターネットは基本的に無料経済モデルであるが、論点18ではこれをRespectによって解決しようというモデルが提示されている。「投げ銭」という考え方である。システムとしては面白いと思うものの、無料であることが当たり前の世界で、どこまでRespectしてもらうような文化を生み出すかが課題に思う。結局はコンテンツを大事にし、そのクリエイターに対する尊敬が生まれるような社会でない限りはいくらシステムやインフラが整ってもそれが利用されることはない。日本においてプロシューマーがなかなか登場しないのも同じような理由ではないだろうか。

簡単に自分の覚書程度にメモを書くつもりだったのだが、思いのほか長くなってしまった。それほどまでに、論点ごとに分かれた非常にコンパクトな書籍ではあるのだが、中身は濃く、かつこれを元にいろいろと考えさせられるものがある。

あまりにも自分のやっていることと近いため、会社とは関係ないブログであっても、あまり突っ込んだコメントができないのが残念なくらいだ。ということで、この本はお勧めだ。

<参考> 本ブログでの佐々木氏の書籍の感想

ガンバレMNEMOSYNE(ニーモシネ)

以前に紹介したマルマンのMNEMOSYNEがピンチ。

ほかのサイズはそこそこ売れているようなのだが、私の欲しいA4サイズはどこも在庫切れ。地元の文具店でも昨年の春にはまだ売っていたのだが、まずそこが昨年秋にA4は置かなくなっていた。そして、ついに渋谷の東急ハンズでも「お取り寄せ」になっている。

前に購入したことのある楽天ショップでも、A4サイズは在庫切れ。唯一見つかったのが、ここ。げっ、ヤフーだと思ったけど、背に腹はかえられないので、ここで10冊ほど購入(東急ハンズで取り寄せても良かったんだけど)。

マルマンがんばれ。

「お取り寄せ」でまだ購入できるうちは良いんだけれど、「メーカー在庫のみ → 生産中止」の流れは阻止したい。

このノートの良いところは、A4横を使って、自由に文章、図、グラフ、表などが表現できるところ。これと4色ボールペンで色を使い分けて、文章や図などをブロック化しておくと、どんなミーティングのメモでも非常にわかりやすく整理できる。また、一人で考えたり、少人数で議論したりするときに、ロジックツリーやメモリーマップを書いたりするときにも大変重宝している。1ページ1ページを切り離し保存できるところも良い。

マルマンがんばれ。

もしくは誰かほかの良いノートを教えて欲しい。

[2008年3月4日更新]
楽天でも購入できるところを見つけた!! 上が1冊単位で、下が10冊のまとめ買い用。

2008年1月15日火曜日

吐いて 吐いて 吐いて 吸う

呼吸をしなければ人間は死んでしまう。呼吸とは、息を吸うことと吐くこと。吸うのと吐くのと、どちらが先かはニワタマ問題かもしれないが、結論から言うと、吐くことのほうが先だ。

糸井重里氏の「小さいことばを歌う場所」の中には次のように書かれている。
自分という器をいくら逆さにして振っても、
出てくるのは綿ぼこりくらいのものさ。

吸ったり吐いたりのしくみが
動いていないことのほうが、
中身がからっぽであることなんかより、
ずっとおそろしいことなんだよ。

<中略>

問題は、吐くこと。
吐けないと思ってから、さらに吐く。
吐いて、吐いて吐き出しつくすと、
しょうがなく吸うことになる。
ここで、吸えということだ。

表現をするんだ。
そしたら、いったん空になる。
空になったら死んじゃうから、
呼吸するだろう?
その分だけ吸ったら、もう十分だ。

「吐いてから吸う」。すべてのことはこの順番のように思う。自分から何かを出すことから始めて、後からその分補充すれば良いではないか。出すことにより、次に補充しようとしたときに、いろいろなオプションが生まれることになる。

田口ランディ氏の「できればムカつかずに生きたい」にも似たような話がある。
呼吸は、その字の通り「吐く」そして「吸う」である。いかに吐くかが問題であって、吸うのはまあ、どうでもいいと言えばどうでもいい。オギャーと生まれたときも人間はまず息を吐くのだ。というよりも吐かないと吸えない。あまりにも単純なので忘れてしまいがちなんだけど、呼吸というのは生命活動の基本だ。
実は私は高校のころプレッシャーに弱く(と書くと、当時の同級生には俄かには信じてもらえないのかもしれないが)、しょっちゅう精神的に追い詰められていた。あるとき、自分で呼吸が出来なくなるような錯覚に襲われ、「吸って、そして吐いて」と自分に指示を出したことがある。近くにいた姉に「息が止まっていたら教えて」と頼んだことも。すべては意識しすぎだっただけなのだが。

転職などを繰り返し、小さい会社に行くと、前の会社までで学んだことでしばらく食っていく状態になる。転職先の上司/先輩/同僚、さらにはお客様やパートナーの方々から得るものがあっても、それに気づくのには少し時間がかかる。転職した後に、「この会社からは得られるものが少ない」と嘆くことも多い(私が以前の会社のときに、そうだった)。だが、使うだけ使ったら、きっとそこから得られるものも多いのだろう。

また、こういったブログなどでの発言も、吐いていることにほかならない。これは別途機会を設けて詳しく書きたいと思うが、ブログを用いた出力があるからこそ入力としての読書や映画や美術館への参加が必要となる。もちそん、それで足りなければ自分なりに調べる。インターネット上の呼吸がブログなどによる個人の情報発信なのかもしれない。

まずは吐いて、さらに吐いて。まだ吐いて。
もう限界。さぁ、では吸おう。

2008年1月14日月曜日

六本木クロッシング2007:未来への脈動

六本木クロッシング2007を観てきた。六本木ヒルズの森美術館で今日まで行われていた展示会だ。4人のキュレーターにより選ばれた36作家による作品が展示されていた。

どの作品もすばらしかったのだが、エンライトメントによるマインド・プリーツが秀逸だった。私は偶然にも昨日、林さんのブログで紹介されていたのを読んだため、この作品の正しい見方を知ることができた。正直、最終日でやや混んでいる中、他人の目も気にせず、スクリーンの60cm手前に立つのは勇気がいる行動であったが、確かに自分の心がどこかにトリップするような錯覚に襲われる。村上龍氏の「愛と幻想のファシズム」の最初のほうに視覚に訴えるイメージビデオを制作する話が出てきたように記憶している。確か、目をつぶった後に残る網膜のイメージをビジュアル化するような話だったと思う。それを思い出させるような作品だ。作品の中にサブリミナル効果を埋め込んだりしたら、洗脳されるのではないかとさえ思わせる(サブリミナルというのは科学的に実証されていない効果だというのは知っているが)。時代が時代なら、時の権力者はこのような作品を利用したくなるだろう。それこそまさに、「愛と幻想のファシズム」の世界だが。

ほかには榎忠氏のRPM-1200も素晴らしかった。榎氏が収集したいわゆる金属ごみを旋盤加工器械で磨き上げ、それらを利用し、近未来都市のミニチュアのように作り上げている。ライトニングも素晴らしく、銀色に磨き上げられた金属と一方向から差し込む光による見事に調和した世界に酔わされる。作り出される影もまた独自の世界を作り上げている。用意された隣の高台から見下ろすことができるのも良い。

このほかにも、できやよい氏のサブカルチャー的なポップな世界、田中偉一郎氏の笑いの世界、立石大河亞氏のコミックの手法を油彩に持ち込んだ作品などにも感銘を受けた。田中偉一郎氏のビデオ作品は、そのタイトルからも内容が想像できると思うが、「ハト命名」(ハトをビデオで録画し、その一羽一羽に命名していく)、「クラッシクカラオケ」(クラッシックの名曲のカラオケビデオ)などYouTubeにアップロードして欲しいとさえ思うような作品が多かった。同じく氏の「刺身魚拓」(その名のとおり、刺身の魚拓)も楽しめた。

また、吉村芳生氏のドローイング新聞(ある日の新聞を鉛筆で克明に描写-再現というほうが適切か-したもの)も目を引かれた。特にこの途方も無く労力がかけられた作品に「特に意味が無い」というところがなんとも芸術らしいではないか。

字面ばかりで説明してもなかなかわかってもらえないかもしれないが、行った人はその感動を再び思い出してもらえればと思うし、行けなかった人は一生後悔して欲しい(なんちて)。
送信者 六本木クロッシング2007

2008年1月13日日曜日

water [水:water] - 佐藤卓ディレクション

東京ミッドタウン内にある21_21 DESIGN SIGHTで行われているwaterを観てきた。

第2回企画展
佐藤卓ディレクション
コンセプト・スーパーバイザー: 竹村真一
water [水:mizu]



我々をとりまく自然や社会に対してどのような視点をデザインが示すことができるか。21_21 DESIGN SIGHTでは、今回「水」をテーマとした展示が行われていた。水はデザインのテーマにもなっているのと同時にデザインを構成する重要な要素にもなる。2時間ほど見て回ったが、五感に訴えかける作品の多くに時間を忘れるほどだった。

六本木経済新聞の記事(佐藤卓さんディレクション「water」展-水を体験する作品群)に佐藤氏の次のような発言がある。
 開幕前日に開催された記者発表会で佐藤さんは、展示準備を振り返って「デザインするという言葉の中には、能動的な意味合いが強くあるように思う。しかし、水と向かい合っていると、教えられることや単純に面白いと思えることがたくさんあり、何かをしてやろうという気持ちがなくなった。水が、どんな展示をするのか、どういうふうに水と人をつなぐか、ということを教えてくれるような体験をした」と話した。
確かに展示作品の多くは「水」という素材の良さをそのまま生かしたものが多くあり、変に気負ったものはほとんど見られなかった。「水」というものがこんなにも美しく、楽しく、そして愛おしいものかということを考えさせられる。

以下、特に面白かった作品。

アートとしてはもう少し工夫して欲しかったと思うところが無いでもなかったが、4番目に展示してあった「水球儀」が「水」に関する情報の提供という意味では面白かった。水球儀を用いて、水の持つ力をわかりやすく解説していた。ただ、壁に映す解説についてはもう少し工夫が欲しかった。

また、7番目の「HOH(ホッ)」には大変癒された。暗い部屋の中で映像と音によって水の魅力を伝えるものだ。リラクゼーションのCDなどで水の音を流すものがあるが、それと同じように人間の五感に訴える水の魅力を見事に表現していた。しばし床に座ってボーっとしていた。

「水の器」(9番~20番)や「ふるまい」(21番)-六本木経済新聞の記事(佐藤卓さんディレクション「water」展-水を体験する作品群)やTABlogの記事(佐藤 卓ディレクション「water」)で写真が見れる-は、揺るぐ特徴を持つ「水」というデザイン素材がうまく活かされていた。「水の器」の中では14番の「water X」がウェブから「water」という単語にヒットする言葉を元にネットの画像を引き出す作品だった。職業がらついつい厳しい目で見てしまうのかもしれないが、あと一工夫あるとさらに面白くなりそうに思った。

このほかに携帯でQRコードを読み込ませ、指定された方法で写真を送るとウェブ上で見れるようになっていたり、水への想いを言葉にして携帯から送ると、床に表示されたり、携帯との連携が多く見られたのも特徴だろうか。携帯だけでなく、インタラクティブ性が多く取り入れられた展示だったと思う。
送信者 Water 21_21 D...

我々とは切っても切れない関係の「水」。それを楽しみながら感じることのできる展示。仕事に疲れた方にはお勧め。って言っても明日までだけど。

2008年1月12日土曜日

ONCE ダブリンの街角で

観たかった映画「ONCE ダブリンの街角で」がまだ渋谷で上映されていたので、先週末に行ってみた。

送信者 ONCE ダブリンの街角で


ほかの映画を見ていたときに予告編で流れていたFalling Slowly(テーマ曲)にやられてしまったのだが、この曲に限らず、映画と音楽が見事に調和のとれた映画だ。主役のGlen HanzardMarkéta Irglováという二人が実際の設定と同じアイルランドとチェコのミュージシャンだったというのは知らなかったが、実際の二人の生い立ちもかなりドラマチックなものであることが公式サイトにあるインタビュー(トップページからレポートをクリック)を読むとわかる。

まず、Glenの生い立ち。
グレン:5年間ストリートミュージシャンでした。学校でたまたま先生がDJだったのですが、自分の集中力がなくて授業がちゃんと受けられなかったんです。それで13歳の頃、ディランのアルバムで誰が演奏したか分かるくらい音楽が好きなら、一回外に出て何かやったみればとアドバイスされたんです。1年後に戻ってきたとき何か理由を見つけて学校を卒業できるようにしてあげるよと言われ、母が了解してくれました。自分にとっては目が開かれた状態になり、世の中が広がりました、当時は絵描きの女性と一緒に住んでいたのですが、彼女はとても優しくしてくれました。
そして、Markétaとの出会い。
グレン:まず彼女に会ったのは6年前で、彼女は13歳でした。彼女の親も知っています。当時、滞在する場所を探していて、彼女の家に滞在することになったのですが、そのころ自分はホームレコーディングという形でバンドの曲作りをしていました。彼女はたまたまピアノがすごく上手だったんです。なので、参加してもらおうと考えたのですが、彼女はこれまで譜面がない状態の音楽をやったことがありませんでした。彼女は即興などを含めて色々と勉強してくれて、すごく上手くできるようになり、そのうち一緒に歌ってくれるようになりました。とても勇気ある行動だったと思うのですが、一緒にチェコなど旅してコンサートに参加するようになり、ピアノと歌を担当してくれたんです。
映画はわずか17日間で撮影されたようだ。このときの模様をGlenは次のように語っている。
撮影では金銭的な制限があることで、逆にクリエイティブになるということがあると思います。17日という短い期間で、朝から晩まで作業をしていました。朝 6時から夜7時まで作業して、時々夜に曲を書いたりしていました。最初にリリースパーティーをすると決めてしまうのが一番良い解決策なのかもしれません。人というのは、時間と金銭的な制限があれば逆にクリエイティブになれるのだと思います。母親は例えお金が無かったとしても、考えながら一週間分の食料をつむぎ出すことができるんです。映画も同様だと思います。そして、曲のひとつひとつがそういった制限の中から生まれてきたのだと思います。
「人というのは、時間と金銭的な制限があれば逆にクリエイティブになれるのだと思います」というのは、以前のブログ投稿にも書いたが、亀田誠治氏が言っていたのと同じだ。
自由なだけな環境からはアイデアしか出ない。制約のある環境でこそ、アイデアを元に複数の人間でクリエイティブなものを生み出すことができる。
この映画は、日本語の予告編では「ラブストーリー」と紹介されていた。確かにラブストーリーなのだが、いわゆる恋愛とは違うラブストーリーだ。特に、結末に関しては、正直予想と異なっていた。ハリウッド映画だったら、こういう終わらせ方はしなかったのではないだろうか。これについては、GlenとMarkétaが次のようにインタビューで語っている(公式サイトより)。(ネタバレ注意
グレン:まず、結ばれないということが、この映画にとってとても大事な点だと思います。それが、映画で伝えたいことそのものだと思うんです。ロマンティックにならないことが必要であって、そうすることで逆によりロマンティックな状況が生まれるのではないかと思います。ジョン・カーニーは最初にキスシーンを入れていました。それで、一度だけキスをするという意味で「ONCE」というタイトルが生まれたのですが、僕たちは皆反対していて、キスはないと思っていたんです。彼女の役は、とても相手を尊重する人で、子供や夫もいるので、キスをしないということが前提になっていました。男はもちろんキスしたいのですが、彼女の意思を尊重します。彼女はとても素晴らしく、良い人間で、実際にキスをしてしまったら何か違うと思うんです。実生活においては、二人はその後キスをしましたけどね(笑)。

マルケタ:私も彼の意見に賛成です。彼女には子供や夫がいますし、基本的に友情を描いた物語だと思っています。まず、愛が二人の間に通い始めるのですが、ロマンティックな愛にまでは至りません。私が演じたキャラクターは、そういうことはしない人間だと思っています。子供たちのことを考えながら、二人の関係を見ていくという、親の視点になるわけです。ベストを尽くして諦めないというのも彼女のキャラクターだと思います。なので、キスをしてしまうのは間違っていると思います。子供や夫がいながら、他の関係も始めてしまうというのはありえないと思います。と同時に、一般的な男と女の関係に見られることを避けたかったという気持ちもあります。現実では、好きな人と必ずしも一緒になれるわけではないということを表していると思います。
最後に二人の演奏するFalling Slowlyのライブビデオを張っておく。二人の素敵な声をもう一度。

2008年1月4日金曜日

Little DJ 小さな恋の物語



ストレス発散には泣くと良いという説があるらしい(参照:泣こうよ.com)。

ストレスが溜まりまくっているわけではないのだけれど、何故かここ最近見る邦画は、いわゆる「お涙頂戴もの」が多い。製作者の意図がみえみえなんだけれど、それにはまりに行っているわけなので、当然怒る必要もなく、むしろ満足して泣けている。

この映画もそう。日本テレビの24時間テレビの中で2時間ドラマとして作られていてもおかしくないようなストーリーと言われても仕方ないし、そのとおりだと思う。子供が難病で初恋だ。しかも美少年と美少女。文句無い。

2時間ドラマを映画館に見に行ったと思えば良い。そう考えると、非常に出来の良い2時間ドラマだし、人目を気にせずに泣けるのも良い。

映画としては低予算で作られたように思うので、このように「2時間ドラマ」と連呼してしまうが、神木君をはじめとする役者たちの演技は悪くない。古すぎて誰もわからないかもしれないけれど、小さな恋のメロディーを思い出してしまった。

ところで、神木君演じる主人公は1977年で12歳ということだから、私と同い年だ。映画の中でかかる曲も私の小学校高学年から中学にかけてのものだ。クィーンのSomebody to Loveなどが出てくるが、確か実家にもそのシングルがあったはずだ。道理で感情移入できるはずだ。関係ないか。

とりあえず、正月早々、初泣きということで。

Little DJ―小さな恋の物語
鬼塚 忠

Little DJ―小さな恋の物語
小さな花が咲いた日 Little DJ―小さな恋の物語 Little DJ小さな恋の物語Official Photo そのときは彼によろしく (小学館文庫 い 6-1) エブリ リトル シング
by G-Tools

世界の日本人ジョーク集

世界の日本人ジョーク集 (中公新書ラクレ)

図書館で予約していたのが、忘れたころにやってきた。風呂の中だけでの読書で2日ほどで読了。現実逃避? ハイ。

外資系に勤めていると、日本人以外の同僚や上司/部下と食事することが多い。仕事の話だけならば、どうにか会話も成り立つが、気の利いた冗句の1つでも言えればといつも思う。本書はそんな場で使えるネタが満載。もちろん、中でも書かれているように、ネタによってはコントラバーシャルなものもあるので、空気を読まないといけない。ネタの背景となっている「日本人が諸外国からどのように見られているか」をきちんと説明しているので、簡単な国際文化比較の勉強にもなるだろう。ただし、その説明は深くはないので、気になった項目があったら別途調べる必要がある。

私は外資系勤めが長いとは言っても、米国に本社がある会社にしか勤めていないので、どうしても考えが日本と米国を中心にし勝ちになる。その点、本書は北欧や中東の事情もふんだんにカバーされている。その点も勉強になった。

2008年1月2日水曜日

三島由紀夫文学館



理由あって年末年始を富士吉田で過ごしたのだが、山中湖近くに三島由紀夫文学館なるものがあると聞いて、今日行ってみた。場所は山中湖に沿って南を走る国道138号線沿いの文学の森の一角。

 



隣に徳富蘇峰館もある。



 

こじんまりとした洋館といったたたずまいであるが、中もそれほど大きくはない。

 

じっくり見ても、30分か1時間もあれば十分だろう。三島の略歴や文学作品の解説、再現された書斎などを見ることができる。また、映画や劇として上映/上演された作品も紹介されている。

入ってすぐに展示されているのは、三島の初版本の数々。今、書店や図書館で見るものと違う装丁の本も多い。たとえば、「仮面の告白」の装丁は初版本のほうが内容にはマッチしているように思う。

三島の生涯を紹介したビデオ上映もされていたが、時間が無かったので、見ることができなかった(インターネットで配信してくれれば良いのに)。

都心からも近いので、三島が好きな人(私は別にそうではないんだけど (^^;;;)にはお勧め。

なお、ここから138号を少し北にあがったところには、富士山レーダードーム館という富士山頂観測所にあったレーダードームを展示している施設がある。ここはここで面白いのだけれど、新田次郎が気象庁に勤務していて富士山頂にレーダードームを作ることを提案した本人だとは知らなかった。