本書ではファシリテーションを次のように説明している。
ファシリテーション(facilitation)を一言でいえば、「集団による知的相互作用を促進する働き」のことさらには、一部孫引きの形になってしまうが、次のようにも説明されている。
もう少し具体的にいえば、「中立的な立場で、チームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、そのチームの成果が最大になるように支援する」(フラン・リー著、黒田由貴子訳『ファシリテーター型リーダーの時代』)のがファシリテーションです。またその役割を担う人がファシリテーターであり、日本語では「協同促進者」または「共創支援者」と呼びます。本書では、このファシリテーションを実践するためのスキルとして1) 場のデザイン、2) 対人関係、3) 議論の構造化、4) 合意形成 を解説している。いくつかはファシリテーションとは独立して身につけられているものもあると思うが、このようにファシリテーションという視点から解説されるのはそれなりに意味がある。ざっくりとファシリテーションを知りたいという人にお勧め。説明がわかりやすいのも好感持てる。
ファシリテーションのポイントはふたつあります。ひとつは、活動の内容(コンテンツ)そのものはチームに任せて、そこに至る過程(プロセス)のみを舵とりすることです。そうすることで、活動のイニシアチブをとりながらも、成果に対する主体性をチームに与えることができます。
もうひとつは、中立的な立場で活動を支援することです。それによって客観的で納得度の高い成果を引き出していきます。このふたつがそろって初めて、ファシリテーターへの信頼が生まれ、チームの自立的な力を引き出すことができるのです。
なお、ファシリテーションが必要となっている背景を解説した部分で「リーダーシップ」と「マネージメント」の違いが解説されているが、この解説もなかなか面白い。
少しおさらいをすると、リーダーのもっとも大切な役割は、組織の方向性を決めることです。複雑な環境に対して、組織が存在する意味(ミッション)を明らかにし、組織がめざす目標(ビジョン)とそこに至る道筋(戦略)を指し示します。その上で、自らが望ましい行動の模範を示しながら、人をつくり組織を育てていきます。特に、競争と変化が激しい現在では、常に変革の方向性を示し、それを推し進めていくのがリーダーの本質的な仕事となります。なるほど。
それに対してマネージャの役割は、定められた目標を達成することです。リーダーが「なにを(What)」を明らかにするのに対して、マネージャは「どうやって(How)」を決めるのです。すなわち、目標を達成するための具体的な計画をつくり、組織が持つさまざまな資源の配分や構造を決めます。さらに、メンバーの進捗を管理して成果へと導き、その過程を振り返ることで業務の質を高めていきます。これがマネジメントです。
ファシリテーション入門 (日経文庫)
堀 公俊
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