2012年11月27日火曜日

富士山マラソン

日曜日に富士山マラソンを走ってきた。

過去2回、前身となる河口湖マラソンを堪能していたので、大変楽しみにしていたのだが、
なんとも後味の悪いマラソン大会になってしまった。


すでに多く報道されているように、渋滞により、5千人ものランナーが出走できなかったのだが、なんと私がその5千人の1人になってしまったのだ。

昨年までの河口湖マラソンが今年から富士山マラソンとなり、それにともなって参加者が1万人増えていた。世界遺産を目指す富士山を名前に持つ名誉あるマラソン大会になるはずだったのだが、残念ながら運営がそれに追いついていなかったと言わざるを得まい。

スタート時間に間に合うようにするのは、参加者側の責任であることは認める。しかし、それにしても今回の事態は参加者側にだけに責任を押し付けることは出来ないだろう。

何が起きたかは、第1回富士山マラソン、交通トラブルで最大で約5000人が出走できず - NAVER まとめ を見ると良くわかるが、私なりに整理すると以下のようになる。

  • 参加者は昨年よりも1万人増えて、2万3千人
  • そのうちの5千人ほどがスタートできなかった
  • スタートできなかった人の中には、公式にはスタート記録は録られていないが、走ることができた人もいる。しかし、遅れてスタート地点には辿り着きながらも、スタートを許可されなかった人も多くいる
  • 主催者は当初返金は認めないと言っており、来年の優先参加権利を提供するとしていたが、午後になり返金を認める方針を打ち出す。所定スタート打ち切り時間(1周の部午前8時24分、フルマラソンの部午前8時50分)に、スタートラインを通過出来なかった参加者に対して返金
  • スタート時間は、河口湖一周は8:00、河口湖と西湖を周るフルマラソンは8:15であり、東京方面からスタート時間に間に合う電車は無い
  • 前泊しようにも、2万3千人を収容できるほどの宿泊施設群は無い
  • 駐車場は4,500台しかない
  • 高速の河口湖出口を出たすぐにある富士急ハイランドの駐車場が埋まってから、ほかの駐車場に誘導するようになっていた。ちなみに、昨年までは、大小様々の駐車場があり、特にどこから優先して誘導するようなことはなかった。そのため、参加者は各々、高速から降りた後に、自分の判断で駐車場へ向かった
  • 主催者からは10月になって以下のようなメールが参加者に送られている(「第1回富士山マラソン」 参加のご案内 の一部なので見落としている参加者も多いと予想される)。
大会当日は、周辺道路の交通渋滞が予想されます。大会指定駐車場に関しましては、4,500台ご用意しておりますが、数が足りなくなる可能性がございます。
お車で参加予定の方は出来るだけ相乗りしていただくか、公共交通機関への変更にご協力をお願いいたします。また、本大会では、新宿発の直行マラソンバスもご用意いたしました。ぜひご活用いただけますようお願いいたします。
  • ここで書いてある主催者が薦める「新宿発の直行マラソンバス」も遅れて、それで参加した人の中にもスタートできなかった人が多数発生

私は昨年と一昨年の2回、河口湖マラソンに参加していて、だいたいどのくらいから混み始めるかは理解していたので、昨年とほぼ同じ時間に自宅を出発した。国立府中ICから中央道に入ったのが、午前3時半くらいだ。途中、談合坂で休憩をとり、河口湖に向かったのだが、河口湖ICの2kmほど手前から渋滞になってしまった。時間で言うと、5時過ぎくらいだったと思う。

その時点では追い越し車線はまだ動いており、1つ先まで行ってから下で駐車場に向かおうかと悩んだのだが、さすがにあと2kmしかないので、いくらなんでも間に合わないことは無いだろうとそのまま渋滞の列に着いた。これが間違いだった。

良く映画で事故などで高速で立ち往生する場面などがあるが、まさにそのような状況にすぐなった。2車線ともまったく動かない。それでも最初は10分で100mほどは動いたのだが、6時半も過ぎたころからは本当にまったく動かない。



待ちきれずに、路肩を走って向かう参加者も出始めた。路肩を違反走行する車両も久しぶりに見た。トイレを探し彷徨う人などもいて、危険なこと極まりない。

結局、河口湖出口から2kmのところに5時過ぎには到着していながら、それから3時間も高速の上に留まることとなった。

9時過ぎにやっと高速を降りることができ、高速出口にいた警察のアナウンスにしたがって、北麓駐車場に向かった。途中、ボランティアスタッフと思われる人の誘導にしたがって、駐車場を見つけて中に入ったが、今度は駐車できるスペースが無い。中には1人もスタッフがいない。少なくとも、私が見た範囲では誰も見つけられなかった。駐車スペースが無いのならば、この駐車場を案内すべきではないだろうと憤りながらも、まだ遅れて走れるかもしれないとの希望を少しは持ちながら、急いで停められる場所を探し、どうにかして停めて、会場に向かう。シャトルバスがまだ動いているのだから、走れるのかもしれないと期待をしながら。

スタート地点から少し離れた河口湖駅が参加賞の交換場所だ。同じシャトルバスに乗った人は参加賞を交換するつもりなのか、スタッフに状況を確認するつもりなのか、その交換場所の方に向かっていたが、私は参加賞などは後でも交換できるし、ここで下手にスタッフに聞くと、もう走れないと言われるだけだと思い、直接スタート場所に向かった。

スタート地点に行くと、河口湖一周を終わったランナーが続々とゴールに入ってきている。これはもう無理なのかもしれないと思ったが、まずは手荷物を預けなければと、預け場所を探す。だが、見つからない。仕方ないので、適当にゴール地点の辺りに置いて、スタート地点に向かってみる。後に知ったのだが、なんと手荷物を預かってくれるトレーラー車はスケジュール通りに7:30には荷物の預かりを停止してしまったそうだ。どれだけ融通の効かない官僚システムなんだ。

スタート地点に向かう途中で、若い女性のグループが「ここまで来て走れないなんて、ざんね~ん」とか話しているのを見て、やはり無理なのかと暗くなってきたが、とにかく話してみようとスタート地点に向かってみると、案の定、なにやらスタッフともめている人多数。スタッフが「いや、だから、我々は8:50には取り外すように言われたので、撤去したのです」とか言っている。おそらく、スタート地点のランナーズチップ計測用のマットを撤去してしまったことの釈明をしているのだろう。

しばらくすると、何名かが走りだした。私も慌ててスタッフの1人に聞いてみると、「もうスタート時の計測はできないですが、走るのは自由です。ですが、第一関門の20km地点を11:20までに通過しないとその時点で失格です」という。その言い方は無いだろうと思ったが、すでに9:30を回っている。もめている余裕は無いので、自分も急ぎ走りだした。

第一関門の制限時間まで1時間40分ほど。この時点で、事前に考えていた前半を抑えめにして走るという計画はもろくも崩れた。靴ひもの再点検や軽い動的ストレッチによるウォームアップなどもできなかった。

走ってすぐに、前で大声でランナーを励ましている人がいる。握手をしたり、ハイタッチをしたり。こっちはAndroidでRunkeeperをスタートさせようとしているところだったので、面倒だし無視しようかと思ったのだが、よく見ると有森裕子さんだった。前回2回でも彼女にエネルギーをもらったのだが、この人は凄い。本当にマラソンに命をかけている。一度でも大会で彼女を見たことがある人はわかるだろうが、この人に背中を押されたり、ハイタッチをされたりすると、どんなに疲れていても生き返る。有森さんと分かった時点で、急いで右手を自由にして、がっちりと握手をしてもらった。おそらく、多くのランナーがトラブルに巻き込まれてスタートが遅れたことを知っていて、それでも彼女ができることとして、このように励ましているのだろうと思った。


途中で強制的に棄権させられてはかなわないので、前半を5:10/km前後のペースで走った。サブ4をやっと切れるくらいの実力しかない私としては、ハーフマラソン並のハイペースだ。無謀とはわかっても、ほかに選択肢はない。

ヘトヘトになりながらも20km地点に到着したら、「制限時間 11:20」というのが修正されて、11:50となっている。いっきに脱力した。それならそうで、途中の給水所(エイドステーション)などでアナウンスすることもできたろう。

中間地点を過ぎたところから、噂の急坂が始まった。事前に情報は仕入れていたものの、予想以上の傾斜だった。80m程度と予想していたのだが、後からRunkeeperで見てみると、約100mの坂だった(26、52、11というのが標高差)。


この坂でペースを落としてしまってからは、すっかりやる気が無くなってしまった。前半飛ばしたつけも回ってきているし、一緒に走っている人たちは自分よりもペースが遅い人なので、もうすでに歩き出している。途中からは足も痛くなってきた。

途中で、「世界一美しいマラソンコース」という宣伝が響く。確かに、景色は綺麗。富士山も紅葉も。だけれども…

結局、後半はかなりの部分を歩き遠しで、どうにかしてゴールした。結果として、今までで最悪の4時間25分ほど。完走(完歩と言うべきか)した後も、普通に歩けたので、まだまだ余力はあっただろう。実際、翌日も翌々日も筋肉痛はひどくない。もっと追い込めたはずなのだが、やはりサブ4を切れないというのが早い段階でわかってしまうと、ここまでモチベーションが下がってしまうものなんだなと思った。周りが自分と同じレベルの人でないのも頑張りきれなかった一因だろう。トラブルに巻き込まれたとは言え、自分の精神力の弱さを思い知った。

運営に関しては、ほかにもいくつか問題点があるように感じた。

  • 給水所(エイドステーション)でのサプリメントやスポーツドリンク(ザバス)が十分でないように思われた。私が通ったころにはすでに水しか置いていないところがあった
  • 交通規制を解除するのが早すぎるエリアがあったように思われる。河口湖大橋などもそうだったと記憶するが、歩道を走らされるところがいくつかあり、歩行者の人とぶつかりそうになった
  • ゴールした後の導線がわかりにくい。ランナーズチップを外すように言われるが、ゴール後すぐのところでそう言われても、すぐには外せない。完走賞(メダル)をもらった後にどこに行けば良いのかわからない(どこにも行かなくて良かったらしい)
  • ゴール後に、昨年までは、ドリンクやけんちん汁のようなものが無料で提供されていたが、今回はバナナと小さい紙パックのドリンクだけ
  • 着替え場所も制限されているし、温泉サービスもない(あったのかな?)

走った後のことで、あり得ないほどひどいと思ったのは、河口湖駅から各駐車場までのシャトルバスへの案内だ。長距離を走ったランナーに寒空の下、1時間以上も待たせるというのはどうだろう。預けられる(実際には私は預けられなかったのだが)荷物の量が制限されているので、あまり上に羽織るものを持っていない人も多かったろう。近くにいた、若い女性のランナーなどは寒さのあまりずっと震えていた。雨など降ったらどうなっていたんだろう。

なんでもかんでも昨年までと比べるのは良くないかもしれないが、昨年利用した富士急ハイランドまでのシャトルバスは15分も待たなかったのではないだろうか。

こう言うと申し訳ないが、昨年からの変更分がすべて失敗に終わったように思う。運営に関わった人たちは最後まで努力されていたのだとは思うが、今回のことをきちんと振り返り、次回に活かして欲しいと思う。

考えただけでも、いくつもの疑問が浮かぶ。

主催者側で今回のことを予期できた人は本当に誰もいなかったのだろうか。いたとしたら、何故それを事前にきちんと話し合い、対応を考えられなかったのだろうか。交通シミュレーションくらいはしなかったのか。

当日の朝に異常に気づいた時点で、なにかもっとできることはなかったのだろうか。河口湖ICに向かう前にいた人に、ほかの出口に向かうように促すような方法はなかったのだろうか。ウェブやTwitterなどで情報を流すことはできなかったのだろうか(公式Twitterアカウントは無い模様だが)。公式サイトでは電話が繋がりにくかったことを謝っているが、電話以外にも手段はあったはずだし、有用な情報ならば、それは自然に伝播したはずだ。

なによりも、なぜ、参加者の2割以上がまだ会場にたどり着いていないという状況にもかかわらず、スタート時間を遅らせないという判断をしてしまったのかが疑問だ。ランナーズチップでスタート地点を通過した人の人数を把握して、初めて正確な人数が分かったというのはあるだろうが、高速の上の大渋滞やランバス(主催者推薦の公式バス)でさえ遅れているという情報から事態の深刻さはわかったはずだ。スタートを遅らせるということは、関係各所との相談などがあり簡単ではないことは想像できるが、結局、スタートを変えなくても、遅れて走りだした人が続出しているのだから、どちらが良かったかは明らかだろう(終わった後ならなんとでも言えると言われればそれまでだが)。

綺麗な富士山を見て、完走したにもかかわらず、もやもや気分のまま高速に乗ると、そこはまた渋滞だった。




<参照>
Runkeeperでの記録

公式サイトに掲載された検証報告