2012年11月8日木曜日

「うつ」を克服する最善の方法

生田 哲
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「抗うつ薬 SSRI に頼らず生きる」というサブタイトルが気になって購入した本。

SSRIとは選択的セロトニン再取り込み阻害剤の略だ。と言っても、なんのことかわからないだろう。

うつ病の原因はまだ確かになっていないが、現時点でもっとも有力視されているのが、脳内のセロトニンが不足していることによってうつ病を発症するという「セロトニン仮説」だ(正確には、「モノアミン仮説」と言い、セロトニンに加えて、ノルアドレナリンとドーパミンを合わせた3つの神経伝達物質であるモノアミンが不足していることでうつ病が発症するという仮説だ)。

参照 : モノアミン仮説-うつ病の発症メカニズム | utsu.jp うつ病と不安の病気の情報サイト

脳内のシナプスから放出されたセロトニンは受容体(レセプターもしくはトランスポーター)と呼ばれる神経細胞に取り込まれるが、いくつかは放出したシナプスに再取り込みされる。この再取り込みが多くなると、神経伝達がうまくいかずにうつ症状になる。

SSRIはこの再取り込みを阻害し、セロトニンの多くが受容体に取り込まれるようにする薬品である(上の参照で示したページを見ると良い)。

「仮説」と呼ばれることからわかるように、本当の仕組みは良くわかっていないのだが、SSRIは良く効くとされている。

本書はこのSSRIが覚せい剤や麻薬と同じように脳内を興奮させるものであり、副作用が恐ろしい薬であると警告するものである。多くのデータによりそれを明らかにしている(ただし、ソースが全部示されているわけではない)。その上で、うつ病は生活習慣や食品(サプリメントを含む)により克服可能であると言う。

Amazonのカスタマーレビューを読んでもらうとわかるが、本書に対する賛否は分かれる。

多くの人がSSRIの危険性は感じており、副作用や依存性についても不安を感じている。しかし、本書の言うように、薬抜きで治癒を期待することは難しい。可能な人も多くいるだろうが、不可能な人も多い。また、途方も無い時間が必要で、そこまで余裕が無い人も多い。

さらに、本書ではプラシーボ効果と決めつけてしまっているが、実際に効果がある人も多くいる(だからこそ、危険性が一部で言われながらも使い続けられているのだろう)。

SSRIは麻薬と言い切ってしまっているわりに、同じような効果(セロトニンの増量)をもたらす5-HTPというサプリメントを勧めていたり(SSRIの場合のセロトニンが再利用されるスピードが問題であると言っている)、セントジョーンズワートを自分自身がうつ症状のときに使ったりしている。

セントジョーンズワートとはハーブの一種であるが、うつ病に効果があると言われているものである。
セント・ジョーンズ・ワートが機能する機構は正確には不明であるが、従来の選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) 系の抗うつ薬と同様にセロトニンの再吸収を阻害することが関係すると信じられている。

セント・ジョーンズ・ワート - Wikipedia より
SSRIの危険性を警告するという意味では良書であると思うが、ではどうすれば良いかという部分において現実的な解を示せておらず、下手をすると患者の不安を煽るだけのものになってしまっている。

下に引用する、まえがきの最後の部分などは、ここまで警告しておいて無責任ではないかとさえ思った。
本書で紹介した事柄は、あなたのかかりつけの医師の処方や他の専門家の指導を肩代わりするものでも、撤回させるものでもない。どのような病気の診断や治療も医師の監督下においてなされるべきである。

著者と出版社は、本書で紹介した治療例、あるいは提案を実行したときに発生する副作用や不具合にかんして一切の責任を持たない。
残念だ。

生田 哲

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