2009年5月25日月曜日

ウェブはバカと暇人のもの

久しぶりにネット関連の本を読んだ。「ウェブはバカと暇人のもの」というタイトルが微妙に座りが悪い。インパクトはあるのだけれど、なんかもうちょっと言葉としてリズム良く出来なかったのだろうか。このリズムに乗れなかったモヤモヤのようなものが最後まで解けなかった。

ネット関連の本というと、「将来成長が見込めるネット vs. 旧メディア」とか「未来のITのあるべき姿であるクラウドコンピューティング vs. レガシーコンピューティングとなる既存システム」というような形で、今後はネットが中心になるという論調のものが多い。私もそれを信じており、そのような将来が実現されるように公私に努力しているのだが、この本はそのような通り一辺な論調を一貫して否定するもの。

著者もこの業界の人なので、ネットの将来性を否定しているわけではないのだが、「既存メディアを凌駕する」などの美辞麗句を並べたようなものからは程遠い、サイト運営者としての生々しい経験を元にした、ネットの現状を暴露する。

実際の利用者や業界で手を動かしている人から見ると、すべて当たり前のことであるが、書籍として書かれているネット関連の本の多くが、泥臭い現状については触れないか、もしくは現状に触れたとしても、未来の社会基盤の萌芽となりうるようなエピソードの対比として触れられるだけである。

どこまで著者が本気でこの本を書いたのかわからないが、アンチテーゼとしてはこの本は傑作だと思う。PV至上主義。そのためにはジャーナリズムも何もなく、いかに民衆がクリックしたくなるような見出しと内容にするか。ソーシャル機能などをつけたがために、コメント欄でのクレーマー対応に追われるはめになる。すべて事実だ。バラ色のネットの話は、著者の言う、「コンサルタント・研究者・ITジャーナリスト」の書籍を読むと良いので、それらを一通り読んだら、この本を読むと良いだろう。今のメディアがネットに軸足を移すまで、まずはネットでの収益を上げなければいけないのだから、それにはこのくらいの生々しく、泥臭い話をきちんと理解しておいたほうが良い。読んだ上で、とてもじゃないがネットなどに自分の貴重なコンテンツを載せられないと思うのならば、サイトを閉じてしまえば良いだろう。数年後にどうなっているか知らないが。

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)
ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

2009年5月24日日曜日

太らない病気にならない体のつくり方

現代人は体を冷やしすぎ。もっと温めるべし。副交感神経を高めたいときには温めのお湯で半身浴を、朝シャワーなどは熱めのお湯で交感神経を高める。飲み物や食べ物も温かいものを。というようなことを最初から最後まで書いている本。

太らない病気にならない体のつくり方 (じっぴコンパクト)
川嶋 朗

4408451991

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心もからだも「冷え」が万病のもと (集英社新書 378I)
冷え取り☆美人 体を温めてキレイ&健康!
病気にならないカラダ温めごはん
病気は心のメッセージ
秘伝 冷えとり手ワザ77―おうちでできる血の道療法
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体の部位ごとや疾病ごとにページを割いているのだけど、おそらくコンパクトにまとめたら、数十ページで収まるだろう。東洋医学についての考えなどもわかるので、書かれているサイドノートはそれなりに参考になるけど、おそらく読み終わったあと覚えていない。漢方の紹介や陰陽の食材などはカタログとしては良いけど、どっかにコピーでもしておかないと実践しそうにない。

律儀に全部読んでしまったけど、前半だけで、あとは自分の興味のあるところ、自分に当てはまるところだけで良かったかも。

これこそ、フォトリーディングで15分で読んじゃうべき本だった。

っていうか、そこかしこにちょっと「トンデモ系」の香りがしたんで、著者を調べてみると…。
でも残念ながらこの川嶋朗、医学会ではけっこうトンデモ系の人物として胡散臭がられている人物でもある。

川嶋朗はトンデモ医師ではないのか?
なんていうのを見つけてしまったので、著者が所属する東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニックのページを見てみると、あららら、正真正銘の「トンデモ」だったのね。
役職等

日本内科学会 認定医・専門医・指導医
日本内科学会認定専門医会 評議員
日本腎臓学会 学術評議員 認定専門医・指導医
日本透析医学会 評議員 認定医・指導医
日本医工学治療学会 外保連委員

・自然医療関連
日本統合医療学会 理事
日本ホメオパシー医学会 理事
日本東方医学会 理事・学術委員
日本代替・相補・伝統医療連合会議(JACT) 実行委員 認定医
日本東洋医学会 東京都部会 幹事
日本ホリスティック医学協会 運営委員
心身医学臨床研究会 会長
日本波動医学協会 会長
冷え研究会 世話人
植物・芳香医学フォーラム 評議員
日本免疫病治療研究会 幹事
I.H.M.国際波動友の会 インストラクター
Natural Products評価研究会 評議員 サプリメント指導医
維持透析患者のための補完・代替医療研究会(HD-CAM) 世話人
気の医学会 世話人

・その他
国際腎臓学会、アメリカ腎臓学会、日本アフェレーシス学会、など

東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック(診療案内)より。(太字は私がつけた)
名前だけでも怪しげなのがあるし、調べるだけの暇もないけど、「ホメオパシー」だけでもう十分。自宅においておくだけでも、電波が伝染りそうなので、早く処分しないと。

2009年5月18日月曜日

落下する夕方

江國香織さんの小説は旅先、出来れば海外のホテルで読むと良い。少しの非日常が、江國さんの描く男女の恋愛ストーリーを、もしかしたら自分が当事者になれたかもしれないと身近に感じさせ、いつもいる周りの人がいないという異国での心細さがよりストーリーを心に届かせる。

この「落下する夕方」も先週の北京出張の際に持参し、ホテルで読んだものだ。実際には、成田から北京の機内でかなり読めてしまったのだが、機内で読み終えてしまうのがもったいなく、途中で読むのをやめ、北京のホテルで時間を持ちあましたときのためにとっておいた。



恋人と暮らしていた女性が急に彼から別れを告げられ、その後、その彼の新しい彼女との自宅での同居が始まるというストーリー。これを恋愛小説と呼ぶのが適切かどうかわからない。彼の新しい彼女、華子がいったい何者なのかは最後までわからないし、意外に感じるが、良く考えるとそのような結末を想定しながら読んでいたのかもしれないエンディングも恋愛小説らしくない。

ただ、通常の男女の恋愛という枠だけでは語れない、人を好きになることというのをこの小説は思い出させてくれる。特に何をしてくれるというわけでもないが、息吹、語り口、仕草、そういったものをすべて含む存在そのものが心地よく、失ったときの喪失感が大きい人というのは現実世界でもいる。いや、いないかもしれないが、いるように感じさせてしまうのが江國さんのすごいところだ。

落下する夕方 (角川文庫)
江國 香織

4043480016

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ホリー・ガーデン (新潮文庫)
いくつもの週末 (集英社文庫)
流しのしたの骨 (新潮文庫)
神様のボート
ウエハースの椅子 (ハルキ文庫)
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ちなみに、この小説にはいくつかの音楽が登場する。Pink CloudCharが登場するたびにわくわくしてしまったり、主人公の梨果の歌う中島みゆきのキツネ狩りの歌は微笑ましく感じた。キツネ狩りの歌のキツネは華子の自然に生きる姿を想起させた。

今回、このブログを書くために、Amazonで検索したところ、これは映画になっていたらしい。原田知世が主役の梨果で、菅野美穂が華子。申し訳ないが、思いっきり違和感がある。原田知世は私の場合は時をかける少女などの角川映画時代のイメージが脳裏にこびりついてしまっているので、どんな役をやられても、素直に見ることが出来ない。菅野美穂の華子というのはちょっと小説とはイメージが違う感じだ。もっとも、この映画は小説とはストーリーが違うようなので、別のものとして見ると良いのかもしれない。

落下する夕方 [DVD]
落下する夕方 [DVD]

2009年5月17日日曜日

僕に踏まれた町と僕が踏まれた町

「今夜、すべてのバーで」の中島らも氏の印象が強烈だったので、関連書籍として薦められていた「僕に踏まれた町と僕が踏まれた町」も読んでみた。

僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 (集英社文庫)
中島 らも

4087486397

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永遠も半ばを過ぎて (文春文庫)
今夜、すべてのバーで (講談社文庫)
心が雨漏りする日には (青春文庫)
牢屋でやせるダイエット (青春文庫)
アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)
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灘高という超エリート校で落ちこぼれ、自由気ままに過ごした高校時代から浪人し、大学(大阪芸術大学)に入るまでを中心にしたエッセイ。その青春時代をルーツとしたほかのエピソードも数多くとりあげられている。基本、「痛快な」という言葉が似合う、小気味良いテンポで語られるエッセイなのだが、氏もあとがきで書いているように、後半の浪人時代から大学時代の話は暗く重い。モラトリアムの闇と書かれているように、モラトリアム期間の終了とは得てしてこのようなものなのか。
 その後、四年間は大学に行ったわけだが、ここに記すべきものというのがほとんどない。それは実に驚くほどで、「“鼻くそや”の先輩」とほぼ似たような無感動と、裏の池で釣りをしていた学生たちと同じ時間の感覚に染まって、僕は四年間を過ごした。ここでは時間がゆっくりと流れるのである。

<中略>

「俺はこんなところで、いったい何をしているんやろう。二十歳にもなって選挙権もある人間がトンビにむかってテレパシー送って。俺はなんでこなとこにいてこんなことをしているんやろう」
 ほんとうならこの後に、「この先、どうなるんやろう」という疑問がもう一つ付くはずなのだが、それはあまりにも恐くて、心の中でさえ禁句になっているのだった。
この後半の暗く重い感じは私のバイブルと言っても良い村上龍氏の「69(シックスティナイン)」の後半の展開とも重なる。「こんなことしているのも今だけだ」という祭りの終わりの寂しさのようなものかもしれない。ただ、中島氏は、このまま日和ってしまわないで、また能天気に明るい時代に突入する。あとがきに次のように書かれている。
ほんとうのところはこの後に「超絶的に明るい、おじさん時代」というものが忽然と横たわっているのだが、そのあたりのことはまたの機を持って述べたい。
いや本当に素晴らしい人だ。人生の師と仰ぎたい。ロックバカなところや酒が好きなところ、なんでもチャレンジしてみるところ。バカもここまで極めると尊敬に値されるようになるという典型だ。私もその域まで早く達せられるように精進したい。

私は好きになると、その人と自分との共通点を探してしまうのだが、氏は灘中に8位の成績で入学したが、その後、成績が急降下したらしい。それでも高校1年くらいまでは上から3分の1くらいのところくらいには入っていたというのだからすごい。自慢じゃないが、というときはだいたい自慢なんだが、私も中学に入った後すぐの試験では学年で8位だった。それから急降下したところも一緒だ(これだと、昔は頭良かったと言っているのか、同じくらいバカだったというバカ自慢なのか良くわからなくなってしまっているが)。今は知らないが、昔は一回でも成績が良かった人間が使える常套句があった。「敷かれたレールの上を走っているのに疑問を覚えて」。氏もこのようなフレーズに酔っていたことがあったのだろうか。

以前にあるテレビ番組でBAHOのメンバーと中島らも氏がセッションをしたことがあり、ビートルズのオブラディオブラダをマイナーで歌うエピソードが語られているが、その話もこの本に書かれている。
 自分で自分の書いた曲にウンザリしていたある日、僕はラジオでピーター・ネロのピアノ演奏を聞いた。何かスタンダードの名曲だったが、その途中に長調のそのメロディーを単調に移調して味つけを変える手法がはいっていた。それを聞いて僕ははたとひざを打った。古今東西、天下の名曲と謡われたもの何千曲ではきかない。それを、長調なら短調に、短調なら長調に移しかえれば、まったく別の曲が何の苦労もなく作れる。しかも名曲がである。
 僕はこのことをYに話し、とりあえずビートルズの「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」を短調に作りかえてみることにした。歌い出したYを見て僕はしばし唖然とした。メロディーは「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」そのままであった。が、Yはそれを「悲しそうな顔」で歌っていたのである。悲しげに歌えば短調になると思ったのだろう。それからしばらくして我々は解散した。
BAHOと中島氏のセッションの様子はビデオ共有サイトに載っているかもしれないので、検索して見つけたら、是非見てみて欲しい。

あと、「今夜、すべてのバーで」の元ネタも「飲酒自殺の手引き」というタイトルで紹介されており、小説がやはり事実に基づくものだったことがここでもわかる。かなりの修羅場もあったろうに、それを笑い飛ばすように書く彼の優しさを感じる。

2009年5月15日金曜日

少年A -少年A 矯正2500日全記録 & 「少年A」この子を生んで・・・父と母悔恨の手記

1997年に起こった神戸連続児童殺傷事件の容疑者が中学生だったというのを聞いたのは、幕張で行われていたコンピュータ関係の展示会の帰りの車の中だったと思う。車の中で聞くラジオから流される警察からの情報は限られていたが、あのような犯行の容疑者が中学生だというその事実には衝撃を受けた。

その少年Aに関しては、少年の父母の告白や被害者の家族の手記、そしてジャーナリストなどによる多くの書籍があるが、少年の父母とジャーナリスト草薙厚子氏による書籍を読んだ。

少年A 矯正2500日全記録 (文春文庫)

「少年A」この子を生んで……―父と母悔恨の手記 (文春文庫)

事件が事件だけにコメントがし辛いのだが、母親の厳しい躾により少年Aの心に与えられた影響が少年Aのパーソナリティ形成に大きく関係しているという定説と、手記の中で少年Aの母親が言う、そのようには思えなかったという正直なコメントとの差が印象的だ。ある行動について、受ける側がまったく違った感情を持っているということは良くあることだが、ここまでギャップがあり、さらには語られているように、これが犯行まで及ばせるルーツだとするならば、普段自分が何気なく発している一言一言や無意識でとっている行動などにもっと慎重になる。それほどまでに、父母の手記と矯正記録の中の少年の姿は異なる。父母が事実を述べていないという可能性もあるが、そうでないとするならば、いかに近しい人であったとしても、その人の心の中を見ることはできないということか。

少年Aに関しては少年法で裁くのではなく、もっと極刑をというような世論もあった。今も彼が日本のどこで何をしているのかを心配する声も多い。本来ならば、このような議論は事件が起きる前にしっかりとなされているべきである。矯正記録には、少年Aを矯正させるという決定がなされたことにより、関係者は過去に前例のない矯正を試行錯誤ながら行ったことが克明に記されている。関係者の中には、そもそもこのような凶悪な犯罪を行ったものを社会復帰させるというプロセスに関わっていること自身の是非を自らに問いかける人もいた。誹謗中傷が関係者や施設に対して行われたこともあるようだ。社会復帰させるということは非常に重いことであるが、このような決定を社会全体が支持できるようになるべきではないかと思う。もちろん、100%の支持というのは難しいと思うが、少年犯罪の場合には常に場当たり的に判断されることが多いように思う。加害者が未成年であり矯正/更生可能であるという前提にたった上で、どこまでどのような事件であれば、社会全体として矯正を支持し、それを行う関係者や施設を支援できるか、そのようなラフコンセンサスが出来ていないと今後も少年犯罪が起きるたびにずっともやもやとした議論が続くのではないかと思う。もちろん、最終的にはケースバイケースでの判断になるとは思うが。

この事件からもう10年以上が経過しているわけであるが、少年犯罪についての報道は「心の闇」などという一言で片付けられるステレオタイプの分析しかなされないことが多いように思われる。少年犯罪が発生する社会と犯行を犯してしまった少年に対峙する社会。結局は元は同じではないか。

2009年5月11日月曜日

外資系企業で成功する人、失敗する人

「外資系で成功する人はここが違う!」と書かれた帯にあった表。



外資系3社目になる私がいつまでもぱっとしない理由がわかった。どう考えても、私は「評価されない人」に分類される。外資系企業で成功する人、失敗する人 (PHP新書)の帯だ。

というのはさておき、この本はこの表に象徴されるように、多少ステレオタイプな外資系でのサバイバル術を書いたものだ。「ステレオタイプ」と書いたのは、この本で紹介されている外資系が 1) 営業/マーケティング系であり、2) 日本のトップが日本の組織をすべて束ねており、本国の本社にレポートするという形態の企業を念頭においているようだからだ。

たとえば、本書の中では、コミュニケーション能力やプレゼン能力の高さが求められることが強調される。それも微妙な力関係を意識した上で振舞うことが要求され、そのようなことが出来ない人間はいくら実務能力が高くても外資系では評価されないとしている。これは技術者には当てはまらないことも多い。企業によって違うだろうが、技術志向の強い会社の場合、たとえばソフトウェア企業の場合、ほかの能力が劣っていても著しく高い能力を持つエンジニアはそれだけで評価される。たとえ、英語でのコミュニケーションが劣っていても、書くコードだけでそれを凌駕することはあるのだ。

また、私がいた外資系もその類だったのだが、日本法人に営業とマーケティングのトップはいるものの、それ以外の部署は直接本社にレポートする形をとり、日本法人のトップにはドットラインレポーティングという形態しかとらないこともある。本書では、日本法人のトップの影響力が強大であることが書かれているが、このように部署ごとに直接本社にレポーティングする形態の場合は、日本法人のトップの影響力は基本的には自身が直接管理している部署だけである。そのため、本書で書かれているような、日本法人トップを頂点としたドライな人間関係だけではない。

このように、私が勤めてきていた会社と違うところが多いため、いくら外資系の厳しさを知っているつもりの私でも、この本の内容はちょっと言いすぎ、もしくはデフォルメしすぎという感じだが、それでも多少強調されるくらいのほうが外資系と日本企業の違いを際立たせるには良いだろう。日本の標準だけしか知らないと、本書にも書かれているが、自分の会社が急にある日外資系になっていたときに戸惑うだろうし、外資系企業と取引が発生したときに、その会社のやり方に困惑するかもしれない。

このように、本書の前半はちょっとステレオタイプもしくはデフォルメしすぎの外資系の紹介が続くが、後半は一転して、国際文化論のように国や地域ごとの特徴の解説になる。この後半が秀逸だ。どうしても日本からは外国人というと米国人ばかりが意識されるかもしれないが、実際には米国企業でもさまざまな地域出身の人間がいる。また、米国企業以外の外資系企業の活躍も目覚しい。それらの国の特徴を知っておくは、ビジネスコミュニケーションとして損なことはない。また、国際文化や企業文化として、身の回りを見回すときにも参考になるだろう。

このブログでも何回か書いていると思うが、私は外資系しか勤めたことがないので、日本企業の仕事の進め方などには戸惑うことが多い。日本企業しか努めたこと無い人はきっと逆の思いが強いことだろう。そんな人には、ちょっと刺激が強いかもしれないが、この本はお勧めだ。ただし、外資系企業にもさらにいろいろあることは頭の片隅に入れて、この本とは違う会社もたくさんあることを忘れないでいるほうが良い。

外資系企業で成功する人、失敗する人 (PHP新書)
津田 倫男

4569707327

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2009年5月10日日曜日

今夜、すべてのバーで

アルコールが好きだ。友人と呑むこともあるが、最近は自宅で1人で呑むことが多い。

自宅で1人で呑んで、次の日に残ったり、途中から記憶が無くなることもある。というようなことを言うと、ひかれてしまうのだが、次の日に、送った記憶もないメールに対する返信を見たり、Twitterに自分が書いたとは思えないつぶやきがあったりしたのを見て、自分でも驚く。

書店で平積みになっていた中島らも氏の今夜、すべてのバーで (講談社文庫)の最初数ページをめくったとき、神様が呟いた。これはお前が読む本だと。

この本は、中島らも氏自身の経験も多く詰め込まれた、アルコール依存症になった35歳の男性の入院生活を描いたものだ。アルコールと人間との関わりについての明と暗を面白おかしく書いてあり、一気に読むことができた。多くの資料を参照して書かれているので、その事実が酒飲みとしては怖くなるようなエピソードとして多く挿入されているが、あまり自分の間近な問題とは思えない。アルコールを17年間呑み続けるとこうなるのかと、おっかなびっくりな感じで覘くような感じだ。だが、それは主人公がアル中の本を肴にして酒を飲むのと同じ感覚であることに気づいた。
 おれがアル中の資料をむさぼるように読んだのは結局のところ、「まだ飲める」ことを確認するためだった。
 肝硬変が悪化して静脈瘤や胃かいようが破れ、大量吐血しつつもまだ飲んでいるような人間を、本の中に探し求める。
<中略>
 これらの人々を眺める安心感と、こういう「ひとでなしのアル中」どもが、河ひとつ隔てた向こう側にいて、おれはまだこっち側にいるその楽観とを得るために、おれは次から次へとアルコール中毒に関する資料を集めた。ついには「アル中の本」を肴にしてウィスキーをあおる、というのがおれの日課にさえなった。
今夜、すべてのバーで (講談社文庫)
中島 らも

4061856278

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僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 (集英社文庫)
永遠も半ばを過ぎて (文春文庫)
ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)
ガダラの豚〈2〉 (集英社文庫)
心が雨漏りする日には (青春文庫)
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まぁ、こういう本を読むまでもなく、二日酔いになるたびに心に命じているのだが、呑まれるのではなく、楽しく呑めるところで止めるようにしないといけない。生前の中島らも氏の姿も思い出し、本当にそう思う。

ところで、本書のはじめのほうに出てくる主人公が新聞社の記者から教えられ行うという簡単なアルコール依存症のテストがある。
久里浜式アルコール依存症スクリーニング・テスト(KAST)

最近六ヶ月の間に次のようなことがありましたか。

一、酒が原因で、大切な人(家族や友人)との人間関係にひびが入ったことがある。
ある (3.7) ない (-1.1)
二、せめて今日だけは酒を飲むまいと思っても、つい飲んでしまうことが多い。
あてはまる (3.2) あてはまらない (-1.1)
三、周囲の人(家族・友人・上役など)から大酒飲みと非難されたことがある。
ある (2.3) ない (-0.8)
四、適量でやめようと思っても、つい酔いつぶれるまで飲んでしまう。
あてはまる (2.2) あてはまらない (-0.7)
五、酒を飲んだ翌朝に、前夜のことをところどころ思い出せないことがしばしばある。
あてはまる (2.1) あてはまらない (-0.7)
六、休日には、ほとんどいつも朝から飲む。
あてはまる (1.7) あてはまらない (-0.4)
七、二日酔いで仕事を休んだり、大事な約束を守らなかったりしたことがときどきある。
あてはまる (1.5) あてはまらない (-0.5)
八、糖尿病、肝臓病、または心臓病と診断されたり、その治療を受けたことがある。
ある (1.2) ない (-0.2)
九、酒がきれたときに、汗が出たり、手がふるえたり、いらいらや不眠など苦しいことがある。
ある (0.8) ない (-0.2)
十、商売や仕事上の必要で飲む。
よくある (0.7) ときどきある (0) めったにない (-0.2)
十一、酒を飲まないと寝つけないことが多い。
あてはまる (0.7) あてはまらない (-0.1)
十二、ほとんど毎日、三合以上の晩酌(ウィスキーなら1/4本以上、ビールなら大瓶三本以上)をしている。
あてはまる (0.6) あてはまらない (-0.1)
十三、酒の上の失敗で警察のやっかいになったことがある。
ある (0.5) ない (0)
十四、酔うといつも怒りっぽくなる。
あてはまる (0.1) あてはまらない (0)

判定方法
2点以上: きわめて問題が多い(重篤問題飲酒群)
2~0点: 問題あり(問題飲酒群)
0~-5点: まあまあ正常(問題飲酒予備群)
-5点以下:まったく正常(正常飲酒群)
計算が面倒臭い人は、ウェブ上で計算を行ってくれるページがいくつかある(たとえば、ここ)ので、それらを使うと良いだろう。本の中の主人公は12.5点で驚いていた(2点以上が重篤レベルだから)だったが、なんと私は16.6点だった。はっはっは。っていうか、これは単に、はい/いいえだけでなく、その頻度とかを聞かないと精度が低いんじゃないかな。半年っていう期間も長いし。とか、言い訳してみる。

2009年5月6日水曜日

こうばしい日々

大好きな江國香織さんの作品。出張時に機内で読むために成田空港で購入。江國さんのお得意の恋愛小説なのだけれど、この作品(2つの短編により構成されている)の主人公は少年と少女。アメリカに住む少年ダイが主人公の「こうばしい日々」と年齢の離れた姉の元恋人に恋をするみのりが主人公の「綿菓子」。

小品というには少しボリュームがあるのかもしれないが、短い中に、主人公の恋の話は当然としても、姉の恋愛、さらには両親や祖父母の恋愛までもがストーリーとして挿入される。日米文化や老いの問題に触れるところまでありながらも、消化不良な感じはない。

誰にも経験あるであろう小中学校時代の恋愛を思い出させる作品。個人的には、「こうばしい日々」のジル(主人公の彼女)と「綿菓子」のみほ(主人公の女友達)の「上から目線」な感じが、あの年頃の女の子にはありがちで好きだ。

こうばしい日々 (新潮文庫)
江國 香織

新潮社 1995-05
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star恋のはじまり
star素直に、こう思った。

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2009年5月5日火曜日

3時間台で完走するマラソン まずはウォーキングから

古くからの私を知る人は私が運動を始めたなどと聞くと皆驚く。でも、本当だ。

この春からジムに通うようになったし、以前から出張中も時間を見つけては、ホテルや会社のフィットネスセンターを利用している(会社のフィットネスセンターを利用するようになったのは最近だが)。

運動として、無酸素運動と有酸素運動の両方をバランス良く組み合わせているつもりだが、どうしても夜にジムに通うことが出来ないことも多い。残業や友人と食事などが続いたときは週に1回も行けないときがある。そんなときでも、有酸素運動の方は、ちょっと早く起きれれば、出社前に軽く走ることは出来る。この「ちょっと早く起きる」のが大変なのだが、そこは気力で出来たとして、あとは正しく走ることも心がけなければいけない。そんなときに役立つ本がこれ。

3時間台で完走するマラソン まずはウォーキングから (光文社新書)
金 哲彦

4334033822

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「体幹」ランニング (MouRa)
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金哲彦のランニングダイアリー
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著者の金氏はほかの著作もかなり評価が高いのだが、この本は新書の形式をとっているため、通勤中などどこでも読めるのが良い。極端な話、ジムでエアロバイクをこぎながらでも読める。また、走ることに関して、すべてのレベルを対象にし、すべての要素をカバーしているのが良い。この包括性については、目次を見ることでわかるだろう。
目次

まえがき
フルマラソンとはなにか
三時間台で走るということ

第一章 プロダクツ
まずはシューズとウェア選びから

第二章 フォーム
無駄のない、効率のよいフォーム
体幹を使う
悪いフォーム
ウォーキングでフォームを固める

第三章 レース・マネジメント
レース当日のすごし方
有酸素運動と無酸素運動
ペース配分の重要性
肝心なのは最初の一〇パーセントの入り方
乳酸をためない
わずかなダッシュが脚にくる
喉が渇く前に給水
空腹を感じたら

第四章 レース中の痛み―レース・マネジメント2
わき腹が痛くなったら
腰が痛くなったら
ヒザが痛くなったら
足首周辺が痛くなったら
マメがつぶれたら

第五章 トレーニング
生活習慣のなかで基礎体力をつくる
まずはウォーキングから
ジョギング
LSD
ウインドスプリント
ペース走
クロスカントリー
距離走
ファルトレック
インターバルトレーニング
トレーニング計画のつくり方

第六章 ボディケア
トレーニングのしすぎは禁物
いわゆる「調整」とは?
「完全休養」と「積極的休養」
慢性的な痛み
ケアの仕方1――アイシング
ケアの仕方2――ストレッチ
ケアの仕方3――マッサージ

第七章 ダイエット
体重は軽いほうが速く走れる
ダイエットのためには、最低三〇分程度の練習が必要
脂肪を燃やすコツ
こんなトレーニングでは逆効果

第八章 栄養
身体は食べたもので形成される
食事で治癒する身体
カーボローディングの考え方

あとがき
この本はタイトルにもなっているように、3時間台でマラソンを走る、つまり、サブフォー(フルマラソンで4時間を切る時間で完走することをこう言う)を目標にしている。筆者いわく、サブフォーは必ずしも難しいことではない。つまり、この本はすでに書いたように、初心者からベテランまでを対象としている。本書を読むと、確かに、サブフォーさえ無理でないように思えてしまう。

書かれていることの基本的な部分は、ウェブや雑誌などでも見つけることのできる内容であるが、ここまで網羅的にカバーされているのが新書で手に入るのは助かる。

さて、情報はもう十分。あとは実践あるのみなのだが、ここからが難しい。人間は身体は1つ。運動もしたいし、友人と食事も楽しみたい。仕事も面白いし、読書もしたい。英会話の勉強もしたいし、旅行もしたい。コンサートにも行きたいし、楽器の練習もしたいし、映画や絵画も観たい。んー。どうしたものだか。

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