2009年5月10日日曜日

今夜、すべてのバーで

アルコールが好きだ。友人と呑むこともあるが、最近は自宅で1人で呑むことが多い。

自宅で1人で呑んで、次の日に残ったり、途中から記憶が無くなることもある。というようなことを言うと、ひかれてしまうのだが、次の日に、送った記憶もないメールに対する返信を見たり、Twitterに自分が書いたとは思えないつぶやきがあったりしたのを見て、自分でも驚く。

書店で平積みになっていた中島らも氏の今夜、すべてのバーで (講談社文庫)の最初数ページをめくったとき、神様が呟いた。これはお前が読む本だと。

この本は、中島らも氏自身の経験も多く詰め込まれた、アルコール依存症になった35歳の男性の入院生活を描いたものだ。アルコールと人間との関わりについての明と暗を面白おかしく書いてあり、一気に読むことができた。多くの資料を参照して書かれているので、その事実が酒飲みとしては怖くなるようなエピソードとして多く挿入されているが、あまり自分の間近な問題とは思えない。アルコールを17年間呑み続けるとこうなるのかと、おっかなびっくりな感じで覘くような感じだ。だが、それは主人公がアル中の本を肴にして酒を飲むのと同じ感覚であることに気づいた。
 おれがアル中の資料をむさぼるように読んだのは結局のところ、「まだ飲める」ことを確認するためだった。
 肝硬変が悪化して静脈瘤や胃かいようが破れ、大量吐血しつつもまだ飲んでいるような人間を、本の中に探し求める。
<中略>
 これらの人々を眺める安心感と、こういう「ひとでなしのアル中」どもが、河ひとつ隔てた向こう側にいて、おれはまだこっち側にいるその楽観とを得るために、おれは次から次へとアルコール中毒に関する資料を集めた。ついには「アル中の本」を肴にしてウィスキーをあおる、というのがおれの日課にさえなった。
今夜、すべてのバーで (講談社文庫)
中島 らも

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まぁ、こういう本を読むまでもなく、二日酔いになるたびに心に命じているのだが、呑まれるのではなく、楽しく呑めるところで止めるようにしないといけない。生前の中島らも氏の姿も思い出し、本当にそう思う。

ところで、本書のはじめのほうに出てくる主人公が新聞社の記者から教えられ行うという簡単なアルコール依存症のテストがある。
久里浜式アルコール依存症スクリーニング・テスト(KAST)

最近六ヶ月の間に次のようなことがありましたか。

一、酒が原因で、大切な人(家族や友人)との人間関係にひびが入ったことがある。
ある (3.7) ない (-1.1)
二、せめて今日だけは酒を飲むまいと思っても、つい飲んでしまうことが多い。
あてはまる (3.2) あてはまらない (-1.1)
三、周囲の人(家族・友人・上役など)から大酒飲みと非難されたことがある。
ある (2.3) ない (-0.8)
四、適量でやめようと思っても、つい酔いつぶれるまで飲んでしまう。
あてはまる (2.2) あてはまらない (-0.7)
五、酒を飲んだ翌朝に、前夜のことをところどころ思い出せないことがしばしばある。
あてはまる (2.1) あてはまらない (-0.7)
六、休日には、ほとんどいつも朝から飲む。
あてはまる (1.7) あてはまらない (-0.4)
七、二日酔いで仕事を休んだり、大事な約束を守らなかったりしたことがときどきある。
あてはまる (1.5) あてはまらない (-0.5)
八、糖尿病、肝臓病、または心臓病と診断されたり、その治療を受けたことがある。
ある (1.2) ない (-0.2)
九、酒がきれたときに、汗が出たり、手がふるえたり、いらいらや不眠など苦しいことがある。
ある (0.8) ない (-0.2)
十、商売や仕事上の必要で飲む。
よくある (0.7) ときどきある (0) めったにない (-0.2)
十一、酒を飲まないと寝つけないことが多い。
あてはまる (0.7) あてはまらない (-0.1)
十二、ほとんど毎日、三合以上の晩酌(ウィスキーなら1/4本以上、ビールなら大瓶三本以上)をしている。
あてはまる (0.6) あてはまらない (-0.1)
十三、酒の上の失敗で警察のやっかいになったことがある。
ある (0.5) ない (0)
十四、酔うといつも怒りっぽくなる。
あてはまる (0.1) あてはまらない (0)

判定方法
2点以上: きわめて問題が多い(重篤問題飲酒群)
2~0点: 問題あり(問題飲酒群)
0~-5点: まあまあ正常(問題飲酒予備群)
-5点以下:まったく正常(正常飲酒群)
計算が面倒臭い人は、ウェブ上で計算を行ってくれるページがいくつかある(たとえば、ここ)ので、それらを使うと良いだろう。本の中の主人公は12.5点で驚いていた(2点以上が重篤レベルだから)だったが、なんと私は16.6点だった。はっはっは。っていうか、これは単に、はい/いいえだけでなく、その頻度とかを聞かないと精度が低いんじゃないかな。半年っていう期間も長いし。とか、言い訳してみる。