「外資系で成功する人はここが違う!」と書かれた帯にあった表。
外資系3社目になる私がいつまでもぱっとしない理由がわかった。どう考えても、私は「評価されない人」に分類される。外資系企業で成功する人、失敗する人 (PHP新書)の帯だ。
というのはさておき、この本はこの表に象徴されるように、多少ステレオタイプな外資系でのサバイバル術を書いたものだ。「ステレオタイプ」と書いたのは、この本で紹介されている外資系が 1) 営業/マーケティング系であり、2) 日本のトップが日本の組織をすべて束ねており、本国の本社にレポートするという形態の企業を念頭においているようだからだ。
たとえば、本書の中では、コミュニケーション能力やプレゼン能力の高さが求められることが強調される。それも微妙な力関係を意識した上で振舞うことが要求され、そのようなことが出来ない人間はいくら実務能力が高くても外資系では評価されないとしている。これは技術者には当てはまらないことも多い。企業によって違うだろうが、技術志向の強い会社の場合、たとえばソフトウェア企業の場合、ほかの能力が劣っていても著しく高い能力を持つエンジニアはそれだけで評価される。たとえ、英語でのコミュニケーションが劣っていても、書くコードだけでそれを凌駕することはあるのだ。
また、私がいた外資系もその類だったのだが、日本法人に営業とマーケティングのトップはいるものの、それ以外の部署は直接本社にレポートする形をとり、日本法人のトップにはドットラインレポーティングという形態しかとらないこともある。本書では、日本法人のトップの影響力が強大であることが書かれているが、このように部署ごとに直接本社にレポーティングする形態の場合は、日本法人のトップの影響力は基本的には自身が直接管理している部署だけである。そのため、本書で書かれているような、日本法人トップを頂点としたドライな人間関係だけではない。
このように、私が勤めてきていた会社と違うところが多いため、いくら外資系の厳しさを知っているつもりの私でも、この本の内容はちょっと言いすぎ、もしくはデフォルメしすぎという感じだが、それでも多少強調されるくらいのほうが外資系と日本企業の違いを際立たせるには良いだろう。日本の標準だけしか知らないと、本書にも書かれているが、自分の会社が急にある日外資系になっていたときに戸惑うだろうし、外資系企業と取引が発生したときに、その会社のやり方に困惑するかもしれない。
このように、本書の前半はちょっとステレオタイプもしくはデフォルメしすぎの外資系の紹介が続くが、後半は一転して、国際文化論のように国や地域ごとの特徴の解説になる。この後半が秀逸だ。どうしても日本からは外国人というと米国人ばかりが意識されるかもしれないが、実際には米国企業でもさまざまな地域出身の人間がいる。また、米国企業以外の外資系企業の活躍も目覚しい。それらの国の特徴を知っておくは、ビジネスコミュニケーションとして損なことはない。また、国際文化や企業文化として、身の回りを見回すときにも参考になるだろう。
このブログでも何回か書いていると思うが、私は外資系しか勤めたことがないので、日本企業の仕事の進め方などには戸惑うことが多い。日本企業しか努めたこと無い人はきっと逆の思いが強いことだろう。そんな人には、ちょっと刺激が強いかもしれないが、この本はお勧めだ。ただし、外資系企業にもさらにいろいろあることは頭の片隅に入れて、この本とは違う会社もたくさんあることを忘れないでいるほうが良い。
外資系企業で成功する人、失敗する人 (PHP新書)
津田 倫男
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