クワイエットルームにようこそを渋谷でレイトショーで見た。以前すでに小説は読んでいた。そのときの感想を読み返してみると、ありえないくらい酷評しているんだが、この映画版はすごい。松尾スズキは天才じゃないかとさえ思う。というか、小説でこのすごさがわからなかった私が鈍いのかも。
蒼井優という女優。名前は知っていたのだが、もしかして顔と名前が一致するようになったのは、この映画が初めてかもしれない。女優としてこんなにすごい人だったのね。ファンだという同僚に蒼井優がすごかったと話して、映画のワンカットでの出演場面を見せたところ、「これは僕の知っている蒼井優じゃない」とボソっと言っていた。確かに公式サイトや画像検索で出てくる彼女とはだいぶイメージが違う。髪形が違うせいもあるだろうが、拒食症の役作りの為に7kg減量したせいもあるだろう。
その蒼井優演じる「ミキ」が言う「システム」。中村優子演じる「栗田」が言う「娑婆」-これも一種の世界や社会だろう。どちらが外でどちらが内かわからない。戻るのはどちらからどちらへだろう。いろいろと解釈できる映画だ。笑いをとりながら、この重いテーマを語れるところにも松尾スズキの力量を感じる。
一番好きだったのは、「ミキ」の言った次の台詞。
“あたしが狂ってるんじゃない、システムが悪いだけ”
狂っているのは果たして誰か。以前からこのようなことを考えることが多かったが、つまりはみんな狂っているんだろう。
役者はみな良い演技をしている。宮藤官九郎も良いし、大竹しのぶも良い。主演の内田有紀も良いのだが、もうちょっと汚れてても良いかも。でも、あのぶっきらぼうな台詞廻しと壊れっぷりはなかなか。
以下、ほかに印象に残ったところ。ネタバレあり。
- 病棟では極めてまともに見える栗田が最後に病棟に戻ってくる。明日香はタクシーの中で彼女からもらったメールアドレスを捨てる。そのアドレスが life_is_happy@loop.com。life_is_happyとloop。Loopするのは誰か。栗田だけなのか。
- さらに、同じく栗田。「泣くわよそりゃ。こんなに人間が集まっているのに、こんなに孤独な場所、ほかにないもの」。それは中か外か。
- ブルジョア拒食症の子が作っているパズルがエッシャーの無限階段。昇っているのか降りているのか。
悪魔の小部屋-クワイエットルームにようこそ
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