2008年2月9日土曜日

勝手サイト 先駆者が明かすケータイビジネスの新機軸

私は同世代の連中よりもケータイ(本書にならって「携帯電話」とは書かずに「ケータイ」と書かせてもらう)を使いこなしていると思うが、それでも文字をタイプするのは若い世代より数倍遅いだろうし、ケータイの新しいサービスへのキャッチアップは出来ていない。

場違いだとは思いつつも、モバゲーや魔法のiらんどなどにも登録しているが、やはり場違い感は否めない。モバゲーなんて正直に年齢を入力したら、フォーラムなどでは「熟女フォーラム」とかしかないし、アバターは何故か部屋から出られない(エラーになる)。おやぢいぢめじゃないとは思うが、まったく使いこなせていない。そもそもPCでもゲームをやらない人間なので、モバゲーとかとは肌が合わないのかもしれない。魔法のiらんどのケータイ小説は(私にとっては)不必要な空行ばかりの文章に辟易とし、さらに内容も高校生向けなのでまったく面白くない。始めからターゲットユーザーではないのだから当たり前と言えば当たり前。ちなみに、魔法のiらんどでは2つくらいしか作品を読んでいないので、もしかしたらもっと上の世代向けの作品もあったのかもしれない。念のため書いておくが、ここではこの2つのサービスをけなしているのではなく、私がもはや旧世代で、これら若年層に人気のサービスにはついていけなくなってしまってことを言っているだけである。

そんな私のように背伸び(逆か? 腰をかがめる?)して若年層向けのケータイサービスを試して挫折したような人にお勧めなのが「勝手サイト 先駆者が明かすケータイビジネスの新機軸」だ。ご存知のように、ケータイ向けサービスは従来、iモードやEZwebなどの公式メニューに登録される公式サイトが主流であった。しかし、検索システムが導入されたことと公式サイトの数が人間がメニューでたどれる数を超えたころから、「勝手サイト」と呼ばれる非公式サイトでサービスを提供する企業が増えてきている。本書はその新しい潮流について、背景といくつかのトレンドを紹介している。

中で紹介されるマーケットデータは「ケータイ白書2007」や各社のIR情報などを元にしているので、自分で調べる気になれば調べられるのだが、それを集約し、噛み砕いてくれているだけでも、私のようにものぐさの人間には大変助かる。

また、本書で紹介されている企業やサービスの中にはモバゲーやニコニコ動画をはじめ、すでに良く知っているものもあったが、名前さえ聞いたことも無いような会社も半分程度あった。自分の不勉強を恥じるが、PCのインターネットならば、名前を聞いたことも無いような会社はほとんど無いと自信持って言える私が、ケータイとなるとさすがにわからないのはやはり私にとってはケータイがあくまでもインターネットアクセスのための補助手段であり、またケータイの世界で世代間の情報格差が生じているためだろう。いずれにしろ、そのようなケータイの世界から取り残されつつある私にとってはこのように網羅的にサービスが紹介されているのはありがたい。

ケータイのサービスを若年層向けとここでは言ってきてしまっているが、実は中には「おてつだいネットワークス」のように全世代向けのものもあった。これなどは自分でも試してみたいと思わせるものだ。モバゲーなども少しずつ上の世代のユーザーが増えているというし、そのうち私もケータイをばりばり使いこなせるようになるのかもしれない。

ちなみに、公式サイトの問題点として勝手サイトでサービスを展開する各社が指摘していることはそのまま国の政策などにも当てはまる。厳しい規制がユーザーに安心感を与えていることは否定しないものの、新しいサービスの導入や改善などのたびにいちいちお伺いをたてる必要があり、インターネット時代のスピードについていけないのだ。たとえば、当初、公式サイトにはSNSを置く場所さえなかったという。本書で紹介されているサービスの中には安心感を与えるために公式サイトに入ることを選択しているところがあるようだが、公式サイトから勝手サイトへのリンクを許可しない(過去の話か?)ようなクローズドなシステムはいずれなくなる方向にあると考えて良いだろう。過度の規制はイノベーションを阻害する。

最後に、ケータイのサービスの多くが端末IDを利用することで個人を特定できる。これにより、犯罪などの抑止効果があるとしているが、一方でPCのインターネットの世界では(ケータイほど簡単には個人を特定できない)IPアドレスも個人情報であり、その使い方は個人情報保護政策に則ったものにすべきだとEUが主張するなど逆の動きが出てきている。ケータイの世界ではユーザーがはじめから、あまり個人情報である端末IDをサービス/コンテンツプロバイダ各社に渡すことにあまり懸念がないのが興味深い。これは公式サイトがキャリアと密接に結びついていたこととも関係あるだろう。

本書は700円(税別)と新書としては平均的な価格。先に述べたように、各種データを集約しているなど、サービスカタログとしても有用(各サービスにすぐにアクセスできるように、QRコードがついているのも良い)なので、ケータイ関係に進出を考えている方は1冊手元に置いておいても良いだろう。

勝手サイト 先駆者が明かすケータイビジネスの新機軸 (ソフトバンク新書 52) (ソフトバンク新書 52)
石野 純也

4797345144

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