佐々木俊尚氏の最新作。佐々木氏から贈呈していただいた後、すぐに読了していたのだが、ここに載せるのが遅れた。
佐々木氏の著作はこのブログでも何回か紹介している。私が好きなジャーナリストの1人だ。
IT系のジャーナリストというと、技術的な話題だけに終始したり、ネットなどでの2次情報だけでお手軽に記事/書籍にするような人が散見され、正直、あまり「この人はすごい」と思わせる人は多くなかった。一般のジャーナリストと比べても、さらにはアルファブロガーと呼ばれる人に比べても、実際に発信される内容の魅力は乏しく感じることが多い。メディアに知人が多いが、何人かは日本のIT業界に本当のジャーナリズムなど成り立たないと断言していた。企業側から締め出されてしまっては、取材にも影響が出て死活問題となるし、雑誌やオンラインメディアの場合には広告にも影響があるからだ。
佐々木氏に以前お会いしたときに、この懸念をぶつけててみたことがあるのだが、彼は一笑に付した。情報源は必ずしもベンダーだけではないと言う。実際に彼は実績を残している。
前置きが長くなったが、この「フラット革命」、佐々木氏の最高傑作だ。毎日新聞のネット降臨という記事はネット界で大きな議論を巻き起こしたが、佐々木氏はCNETのブログにて取材の可視化の要否、メディアの言う「われわれ」とは誰かという問題を提起している。この佐々木氏のブログのエントリにも非常に感銘を受けたが、本書でもその件が再度論じられている。それ以外にも、既存メディアや既存権力とネットの対峙する状況をさまざまな例を引き合いに出し、論じている。
私はネットによる、すべてがフラットに直接民主主義的に情報発信ができ、世論形成される世界を支持するが、そのような私にも、今の状況はまだ過渡期であり、解決すべき問題が山積されていることがわかる。果たして、ネットによる新たなメディアは本当にバラ色の社会に導くかどうか。ネット側の人間として、傍観者としてではなく、当事者としてこの問題に取り組まなければならないと意識させられた。
1つ残念なのが、タイトルと内容のミスマッチか。「フラット革命」というタイトルからは、ネットによるフラットな意見形成が次世代の社会基盤かのようにミスリードさせてしまう。あと、欲を言えば、日本とほか諸国の状況との違いなども網羅されていると、さらによかったかと(ボリュームを考えると、1冊でそこまで網羅するのは無理とは思うが)。
フラット革命
佐々木 俊尚
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佐々木さん、贈呈感謝です。また、いつかお食事でも。