2008年1月14日月曜日

六本木クロッシング2007:未来への脈動

六本木クロッシング2007を観てきた。六本木ヒルズの森美術館で今日まで行われていた展示会だ。4人のキュレーターにより選ばれた36作家による作品が展示されていた。

どの作品もすばらしかったのだが、エンライトメントによるマインド・プリーツが秀逸だった。私は偶然にも昨日、林さんのブログで紹介されていたのを読んだため、この作品の正しい見方を知ることができた。正直、最終日でやや混んでいる中、他人の目も気にせず、スクリーンの60cm手前に立つのは勇気がいる行動であったが、確かに自分の心がどこかにトリップするような錯覚に襲われる。村上龍氏の「愛と幻想のファシズム」の最初のほうに視覚に訴えるイメージビデオを制作する話が出てきたように記憶している。確か、目をつぶった後に残る網膜のイメージをビジュアル化するような話だったと思う。それを思い出させるような作品だ。作品の中にサブリミナル効果を埋め込んだりしたら、洗脳されるのではないかとさえ思わせる(サブリミナルというのは科学的に実証されていない効果だというのは知っているが)。時代が時代なら、時の権力者はこのような作品を利用したくなるだろう。それこそまさに、「愛と幻想のファシズム」の世界だが。

ほかには榎忠氏のRPM-1200も素晴らしかった。榎氏が収集したいわゆる金属ごみを旋盤加工器械で磨き上げ、それらを利用し、近未来都市のミニチュアのように作り上げている。ライトニングも素晴らしく、銀色に磨き上げられた金属と一方向から差し込む光による見事に調和した世界に酔わされる。作り出される影もまた独自の世界を作り上げている。用意された隣の高台から見下ろすことができるのも良い。

このほかにも、できやよい氏のサブカルチャー的なポップな世界、田中偉一郎氏の笑いの世界、立石大河亞氏のコミックの手法を油彩に持ち込んだ作品などにも感銘を受けた。田中偉一郎氏のビデオ作品は、そのタイトルからも内容が想像できると思うが、「ハト命名」(ハトをビデオで録画し、その一羽一羽に命名していく)、「クラッシクカラオケ」(クラッシックの名曲のカラオケビデオ)などYouTubeにアップロードして欲しいとさえ思うような作品が多かった。同じく氏の「刺身魚拓」(その名のとおり、刺身の魚拓)も楽しめた。

また、吉村芳生氏のドローイング新聞(ある日の新聞を鉛筆で克明に描写-再現というほうが適切か-したもの)も目を引かれた。特にこの途方も無く労力がかけられた作品に「特に意味が無い」というところがなんとも芸術らしいではないか。

字面ばかりで説明してもなかなかわかってもらえないかもしれないが、行った人はその感動を再び思い出してもらえればと思うし、行けなかった人は一生後悔して欲しい(なんちて)。
送信者 六本木クロッシング2007