2008年11月16日日曜日

ブログ論壇の誕生

ブログ論壇の誕生 (文春新書 (657))
■内容紹介■
旧弊な物言いは容赦なく「炎上」させ、アルファブロガーが先鋭的議論をリード。リアル社会を衝き動かす、新しいネット言論空間

社会で何が問題になっていて、どこが争点なのかを知りたいとき、何を見ますか? 新聞、テレビ? しかし、その紋切り型で、一方通行の論調に期待していない方も多いはず。けれどもネットに目を転じれば、「専門家ブロガー」をはじめとして、真摯で先鋭的、活発な議論が展開されています。

格差社会、秋葉原連続殺傷事件、青少年ネット規制法、チベット問題への対応……参加自由でタブーの存在しないネット論壇は、いまや世論をリードし始めました。ITジャーナリズムの第1人者が、その大きなうねりをレポートします。

文芸春秋ホームページより)
「ブログが既存のジャーナリズムを変える」という意見がある。

この言葉は2つ意味がある。1つはジャーナリストがニュースソースとしてブログを含むインターネット上の情報も利用することが増えているという意味。もう1つがブロガー自身がジャーナリストに成り代わり世論を形成するという意味だ。前者には安易にインターネット上の情報を使うことによる弊害も見える。事実関係を確認することの無い誤報やネット文化そのものに対する誤解。ネットリテラシの問題と言っても良いだろう。このような問題がまだまだ散見される中でも、ネットの特性を理解し、良い形で広くニュースを拾えるようになってきている状況もある。今までは記者クラブなど狭いニュースソースだけを元に記事が作成されていたのが、少しずつではあるが変わりつつある。後者はいわゆるパブリックジャーナリズムというような形のものから、そこまで肩肘張らずとも、一市民の書いたものが自然と世論を形成するというようなものまで幅広くある。

この2つの事象には相関関係が存在する。ブログ自身の持つコメントやトラックバックという機能により、ニュースソースとなること自身が良くも悪くもフィードバックループを作ることになる。

佐々木俊尚氏は「ブログ論壇の誕生」でネットに定着しつつあるブログの状況と可能性を説く。ここしばらくのさまざまなネット上の事件を取り上げ、それぞれの課題と今後への見通しが解説されている。インターネットにどっぷりと浸かっている人には知っている内容が多いかもしれないが、それでもこのように網羅的にカバーされると役に立つ。それは以下の目次を見るだけでもわかるだろう。
はじめに ブログ論壇とは何か

1 ブログ論壇はマスコミを揺さぶる
 第1章 毎日新聞低俗記事事件
 第2章 あらたにす
 第3章 ウィキペディア
Ⅱ ブログ論壇は政治を動かす
 第4章 チベット問題で激突するウヨとサヨ
 第5章 「小沢の走狗」となったニコニコ動画
 第6章 志位和夫の国会質問
 第7章 安倍の窮地に暗躍した広告ロボット

Ⅲ ブログ論壇は格差社会に苦悩する
 第8章 辛抱を説く団塊への猛反発
 第9章 トリアージ
 第10章 承認という問題
 第11章 ケータイが生み出す新たなネット論壇世界

Ⅳ ブログ論壇はどこに向かうのか
 弟12章 「JJ」モデルブログ
 第13章 光市「1.5人」発言
 第14章 青少年ネット規制法
 第15章 「ブログ限界論」を超えて

おわりに
あとがき
特別付録 佐々木俊尚が選んだ著名人ブロガーリスト
私は佐々木氏と同じくネットの未来を信じ、さらにはネットによるジャーナリズムが現状の日本のジャーナリズムの課題を解決しうると考える。全国紙や通信社の記事を見ても、内容に違いが無いものが多く(すべてとは言わない)を占める記事や結局何を言いたいかわからない社説。ブログ自身が変えることもあるだろうし、ブログから学ぶことで既存のジャーナリストが変わっていくこともある。何よりも、今のメディアがブログという別のジャーナリズム基盤の登場で変わっていくことを期待したい。今のメディアはあまりにもネットを理解していない。敵視しているとしか思えない人もいるほどだ。

佐々木氏は事実を述べるというよりも、期待を込め、彼の活動を通じて、このネットでの動きを加速していこうとしているように思える。そのため、本書の内容についても、ネット上では必ずしも支持をされているとは言えない。それはAmazonのカスタマーレビューを見てもわかる。おそらく、このブログを読んでいる人でも違和感(=あまりにもネットの影響力や今後の可能性を過大評価しているのではないか)を持たれる人もいると思う。それは理解できる。ただ、ネットの比重が高まっている人にとっては逆に当たり前になりつつものであり、そのような層が増えているというのも事実だ。だからこそ、本書は、出来れば、ネットをまだメールや検索程度にしか浸かっていない人にこそ読んで欲しい。本書の内容に同意できないにしても、このような考えを知ることだけでも何かのヒントになるだろう。

最後に、本書を贈呈くださった佐々木さんにお礼申し上げたい。いつもありがとうございます&もっと前に読んでいながら、レビューが遅くなって申し訳ありません。 > 佐々木さん

あと、「佐々木俊尚が選んだ著名人ブロガーリスト」に私のもう1つのブログ「Nothing ventured, nothing gained.」を入れていただけていて、ちょっと驚いた。著名人じゃないし (^^;;; 本書の内容からすると、こっちのブログ(玲瓏)のほうが適している気がしないでもないが。

ブログ論壇の誕生 (文春新書 (657))
佐々木 俊尚

4166606573

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