2008年5月22日木曜日

カルトか宗教か

宗教やカルトに関する本が好きで良く読んでいる。カルトの危険性やどのようにしてカルトを見分けるかを訴える本も有用だが、この本は少し毛色が違う。

フランスの例をとり、カルトの分類や判別法などを書いている点は類書と同じなのだが、本書ではカルトに入る人の気持ちを理解し、そのために適切なタイミングで適切な対応をとるべきだと説く。

カルトからの救出についても、救いを求めていない人を救おうとするのは本人とっては精神的な危害を加えられているにすぎないと言う。そのような場合には本人はますます頑なになるし、そもそもカルトに入るきっかけになったものを理解しないといけない。時には、今の状況を受け入れ、将来にまた理解しあえるように、というぐらいに長い目で見る必要がある。

また、既存宗教の役割の重要性も本書では訴えている。既存宗教もその昔はカルトであったり、分派がカルト化したりということもあったため、カルトに対しては父親や母親のような寛容な対応をとれる。フランスなどでは既存宗教のフレームワーク内やそこを少し超えたところでカルトが発生することもあるので、既存宗教の長老などにより方向性が正されることもあるようだし、カルトからの救出でも援助しているようだ。

日本では既存宗教の役割が低下している。儀式宗教であったとしても、生活に密着した宗教というものが必要なのか。正直、まだわからない。ただ、本書にはそこまで書かれていなかったが、組織に属することの重要性の高い日本という社会(私はそれを揶揄して「村社会」と常に呼ぶ)では「村」に入れなかった人の救済機関としてのカルトの役割もあるのではないかと思う。そのような中でのカルトとの関り方というのは日本人として考えなければいけない。

本書や類書にも書かれているが、カルトはもはや宗教の枠組みを超えて、自己啓発や健康などいろいろな団体として社会に存在しているのだから。

カルトか宗教か (文春新書 (073))
竹下 節子

4166600737

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