2008年5月6日火曜日

家出のすすめ

家出という言葉を以前より聞かなくなった。警察庁の資料を見てみると、ここ40年ちょっとの推移は次のようになっている。

昭和38年: 84,198人(人口: 96,156K人)
昭和47年: 90,460人(人口: 107,595K人)
平成18年: 89,688人(人口: 127,782,971人)

昭和47年からは絶対数でも減少しているし、昭和38年からも人口との比率で見ると減少している。もちろん、家出人の統計上の数というのは警察に届出が出されているかどうかの数なので、実際の家出人はこれよりも多い可能性はあるが、それでも劇的に増えているということはない。

家出のすすめ」は寺山修司氏による昭和47年の作品だ。実際には、昭和38年に「現代の青春論―家族たち・けだものたち」という題名で出版されていた。昭和47年の文庫化にあたって、寺山氏の元の題名がやっと採用されたらしい。昭和38年当時は家出が社会問題となっており、それをセンセーショナルに煽るようなタイトルであることに出版社が自粛したと文庫本のあとがきに書かれている。

私の学生時代にも家出をした友人はいたが、もはやあまりカッコイイ行動ではなくなっていた。せいぜい数日の無断外泊。都心の学校に通っていたこともあるかもしれないが、遠くに行く必要はなく、友人宅に泊まったりする程度だった。地方出身者と話したことはないが、もしかしたら、私が学生だった当時、地方の中高生は東京や大阪などに家出することは多かったのだろうか。

寺山氏は本書で家出をすすめる。それは家族を一度解体し、そこから新たな家族のあり方を見つめ、人間として独り立ちすることを意味する。地方出身者が都会に出るという当時の典型的な家出のパターン。都会の魅力が薄れ、家族はすでに解体された今、寺山氏の言葉はむなしいかもしれない。だが、現状維持に常に疑問を持ち、すべてにタブーを持たない彼の生き方は今でもまぶしい。

ところで、同じ寺山氏の「書を捨てよ、町へ出よう」やブコウスキーの「死をポケットに入れて」を読んで、競馬に行ってみたくなった。今年中に競馬デビューするかも。

家出のすすめ (角川文庫)
寺山 修司

4041315239

関連商品
書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)
幸福論 (角川文庫)
誰か故郷を想はざる (角川文庫)
青女論―さかさま恋愛講座 (角川文庫)
さかさま世界史 英雄伝 (角川文庫)
by G-Tools

<参考資料>
平成18年中における家出の概要資料