2008年3月2日日曜日

ぼくには数字が風景に見える

ダスティンホフマンの主演でアカデミー賞作品賞を受賞したレインマンという映画がある。自閉症ながら天才的な才能を持つ兄(ダスティンホフマン)と弟(トムクルーズ)の話だ。この兄のモデルとなったキムピーク氏サヴァン症候群という「知的障害や自閉性障害のある者のうち、ごく特定の分野に限って、常人には及びもつかない能力を発揮する(Wikipediaより)」に分類される人として知られている。記憶力や計算力などが常人が努力して到達できるレベルをはるかに超えるのがサヴァン症候群の特徴で、世界でもごくわずからしい。

今回読んだ「ぼくには数字が風景に見える」の著者のダニエルタメットは、このサヴァン症候群かつアスペルガー症候群だ。アスペルガー症候群は「知的障害がない自閉症(Wikipediaより)」であり、「高機能自閉症」と同義とされることが多いコミュニケーションなどに特徴(明示的に言葉として伝える/伝えられることを好むなど)がある人たちだ。ダニエルはこのような特徴を持つため、学校でもなかなか友人が出来なかったり、いじめの対象になったりするのだが、それを自ら克服し、パートナーを得て、今では自分の体験を発信し、同じような特徴を持つ人たちの支援にあたっている。

ダニエルの才能は記憶力(πを22,500桁まで暗記)や言語力(10ヶ国語を話す。新しい言語をわずか1週間ほどで習得可能)、計算力(カレンダー計算や暗算など)などに現れている。本書でも書かれているが、彼は数字や文字を色や形と結びつけ、覚え、計算している。これは共感覚という能力らしい。本書の中で書かれているダニエルが数字を計算するときに頭に浮かぶ図形などはとても興味深い。この彼の頭の中での動きは英国や米国で放映された(日本でもいくつかは放映されていたらしい)ドキュメンタリーやインタビューからもわかる。YouTubeで検索してみるといくつか見つかる(英語だが)ので、興味ある人は見てみると良いだろう。

最近読んだ「脳が若返る30の方法」や「40歳から頭がよくなるちょっとした方法―医者が実践している」にも幅広い脳の使い方をすることが薦められていた。努力してダニエルのような能力がつくわけもないが、それでも脳の動きの不思議を知るにつけ、いろいろな刺激を得ることで脳がもっともっと活性化するのではないかと思う。

ダニエルはアスペルガー症候群であるにも関わらず、自ら外の世界とのコミュニケーション方法を自分なりの方法で模索し、確実に世界を広げている。こういう本を読んだり、話を聞くたびに、自分がいかに狭い世界でたいした努力もせずにぬくぬくと生きてきてしまっているかと思う。反省しきり。

ぼくには数字が風景に見える
D. タメット 古屋 美登里

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