2007年8月28日火曜日

できればムカつかずに生きたい

「人は二種類に分けられる。寺山を知っているか、寺山を知らないか」と言ったのは誰だったか(ちょっと台詞は違ったかもしれない)。もちろん、寺山とは寺山修司のことだ。今の若い連中はもしかしたら名前も知らないのかもしれない。あしたのジョーの力石の葬儀で葬儀委員長をした人だ(って、この説明だと、余計分からないだろうとわかっていてやってみる確信犯 (^^;;;;)。

田口ランディの「できればムカつかずに生きたい (新潮文庫)」に寺山修司の話が出てくる。この部分だけでも読む価値はあるだろう。寺山の生きていた時代のギラギラした感じ、そしてそのギラギラしたものにあこがれていた若い連中。それらの息吹が聞こえてくるようだ。

できればムカつかずに生きたい (新潮文庫)
田口 ランディ
4101412316


この本は書店で平積みされていた中からタイトルに惹かれて手に取った。実は著者が田口ランディだと分かって、一瞬買うのをためらった。以前に田口ランディの著書を読もうと思っていたときに、盗作問題が発覚し読むのを止めてから、結局今まで読んだことが無かったからだ。一度こういう問題を起こしてしまうと、その汚名はなかなか晴れない。実際、田口ランディで検索すると、今でも彼女の盗作問題を追及しているサイトが上位にランクされる。疑う気になれば、彼女のすべての著作に盗作疑惑をかけることもできるだろう。

ただ、繰り返しになるが、本書の寺山について書いた「寺山修司さんの宿題」という部分だけでも読む価値はある。思わずじーんときてしまったのは、年齢を重ね、涙腺が弱くなったせいだけではないだろう。数年経ったときに初めて人の気持ちがわかることがある。その人がこの世からいなくなってしまっていたとしても、「思い」はいつかは伝わる。ちょっと悲しいけれど、素敵なエピソードだ。