2007年8月22日水曜日

モルヒネ

書店に平積みになっていた1冊。女流作家って嫌いじゃないし、裏表紙に書かれていたストーリーに惹かれたので読んだ。読みやすく、1日くらいで読了。

モルヒネ (祥伝社文庫)
安達 千夏
439633298X


Amazonでのカスタマーレビューの評価がめちゃくちゃ低い。薄っぺらだとか、自分勝手な登場人物だとか、酷評されている。

だが、実は、私は結構、感情移入して読めてしまった。主人公の昔の恋人のヒデ。彼の自分勝手ぶりが他人とは思えなかった。素直に自分の感情を表現できずに、回りくどい方法で元恋人(主人公)の気を引こうとするところや最後の最後まで他人の人生をかき回し、自分がいなくなったあとも自分を相手の記憶に刻み込んでおこうとするエゴイスティックな部分。恥ずかしいけど、この餓鬼っぽいところが他人とは思えない。

主人公の現婚約者の描写の物足りなさや日本を発って以降の後半のストーリー展開の薄さは非常に残念であり、特に後半のまとめ方は、「こんな感じ?」とびっくりするほど拍子抜けだったが、それでも悪い作品ではないと思う。安達千夏って初めて読んだのだが、ほかの小説も読んでみたいと思わせるものであった。

思うに、この小説は恋愛小説ではなく、「同志」と呼べるような特殊な-自分のすべてを話し、相手の欠点をも愛せることのできる-関係があった場合のその人間との身の処し方、そして常に「モルヒネ」を必要とするような人間にとっての「死」について書かれたものであると思うのが良いのではないか。

最近、死生観について考えることが多いのか、今の私には考えさせることの多い小説だった。

人はみな、実は「モルヒネ」を必要としている。