2007年1月20日土曜日

下流社会 新たな階層集団の出現

下流社会 新たな階層集団の出現
三浦 展
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言うまでもない、一昨年のベストセラーの1つ。ちょっと遅めだけど、読んでみた。
  1. 年収が年齢の10倍未満だ
  2. その日その日を気楽に生きたいと思う
  3. 自分らしく生きるのが良いと思う
  4. 好きなことだけして生きたい
  5. 面倒くさがり、だらしない、出不精
  6. 一人でいるのが好きだ
  7. 地味で目立たない性格だ
  8. ファッションは自分流である
  9. 食べることが面倒くさいと思うことがある
  10. お菓子やファーストフードをよく食べる
  11. 一日中家でテレビゲームやインターネットをして過ごすことがよくある
  12. 未婚である(男性で33歳以上、女性で30歳以上の方)
本書の冒頭に出てくる『下流』度チェックだ。半分以上に当てはまるようだと、あなたはかなり下流的だそうだ。私はもちろん(?)該当者だ。恥ずかしいので、どれにチェックしたのかは明かさないが。

本書では、下流社会とは次のように定義されている。
所得格差が広がり、そのために学力格差が広がり、結果、階層格差が固定化し、流動性を失っている。あるいは「希望格差」も拡大している。<中略> それは、日本が今までのような「中流社会」から「下流社会」に向かうということである。
下流的な人は「もっと上の方に広がる分に関しては文句は言いません。最低限の暮らしが保証される限りは、上に行きたい人が行く分には全然構わない。私も一緒に行こうとは思いません。今の暮らしでもいいです、という心理」を持つ人である。私も下流的と分類されてしまったわけではあるが、実は私よりも少し下の世代に下流的な生き方をする人が多いようだ。本書では次のようにその背景を説く。
現在の30歳前後の世代は、少年期に非常に豊かな消費生活を享受してしまった世代えあるため、今後は年をとればとるほど消費生活の水準が落ちていくという不安が大きい。これは現在の40歳以上にはない感覚である。
確かに、私は成長とともに消費水準も改善された。白黒だったテレビはカラーになり、エアコンも最初に居間だけに設置されていたものがそのうちほかの部屋にも設置されるようになった。意識したことはなかったが、確かに今年より来年が豊かになることを常に期待できていたような気がする。私より下の世代はここまで顕著な経済成長を目の当たりにしていないのかもしれない。

本書ではこのような中流から下流への流れと、新たな下流的な人たちの思考や嗜好、志向が解説されている。従来の一億総中流時代とは明らかに異なる時代の登場に、企業もそれ相当のマーケティングが必要となる。本書でも日清食品の例などが紹介されている。

ただし、本書では多くの章がデータの解説を中心としている。私はそこがどうもなじめなかった。単なるデータブックとして読むのなら良いが、読み物として捕らえるならば、データの解説部分にももう少し読み応えのある展開が欲しい。

その中で、中盤の下流的な男女の分類や最後の考察は興味を持って読めた。特に、最後の「西武池袋線の学生が池袋に行かない」と「「縮小した世界」に知らぬ間に築かれる「バカの壁」」の2節は自分の体験からもなるほどと思わせるものだった。ここでは、首都圏のマイナーな大学だと、同じような地域からしか学生が集まらないこと、また首都圏近辺に育ったものほど、東京の街を知らないし、知ろうとしないという状況が述べられている。私も東京のベッドタウンと呼ばれるところで育ち、中学から大学までの10年間を新宿区内の学校に通った。それにもかかわらず、今でも渋谷の街を良く知らなかったりする。

やっぱり私って下流的かもしれない。