2007年1月8日月曜日

YouTube革命 テレビ業界を震撼させる「動画共有」ビジネスのゆくえ

YouTubeは単純な発想を基にしたチープなWeb上のサービスかと思いきや、結構細かいところに気が使われている。しかも、その気が使われている部分がすべて一般ユーザーの利益に叶う方向に向いているところがすごい。CGM/CGCMの雄の面目躍如か。

そんなYouTubeの現状と日本のメディア界の抱える問題とをタイムリーに紹介したのが、神田敏晶氏のYouTube革命 テレビ業界を震撼させる「動画共有」ビジネスのゆくえだ。

YouTube革命 テレビ業界を震撼させる「動画共有」ビジネスのゆくえ
神田 敏晶
4797339039


神田氏のWeb2.0でビジネスが変わるも昨年読んだのだが、数あるWeb2.0本の中でも一般ユーザーの視線でWeb2.0の脈動を捕らえた異色の一冊だった。神田氏の異色ぶりはKNN StoreやMXTVのBlogTVを見てもらえればわかる(本書の中でも紹介されているが、このBlogTVの番組は放映後、YouTubeに投されているのだが、YouTubeへの投稿を考えて、番組が10分単位で構成されるようになっている)。

(* これを書いた直後、神田氏はITmediaのオルタナティブブログでソフトバンクモバイルのホワイトプランで不適切な投稿をしてしまい、ブログが炎上している。)

YouTubeは日本では一般ユーザーからの支持は高いものの、メディアや著作権者との調整はまだ進んでいないようだ。本書にも書かれているように、米国では多くのメディアがすでにYouTubeと提携している。それら各社の実績を見て、一般ユーザーの望む方向とメディアの未来像を見据えた形での議論が日本でもされることを期待したい。たとえば、米国の例で言うと、TV局で放映された番組をYouTubeにアップロードしても、一般視聴者の多くは、見逃した部分をYouTubeで見るという補完的な利用の仕方をしており、必ずしもYouTubeがTVのリアルタイム視聴者をすべて食いつぶしているということはなさそうだ。これは音楽配信が必ずしも、音楽ビジネスをつぶしていないのと同じだ。また、神田氏は現在の視聴率や著作権料の分配についても疑問を呈しており、現在のままではTV界に未来は無いと言い切る。YouTubeを始めとする新しい動画ビジネスの流れをどのように取り組むかがTV界の健全な発展のためにも必要と思われる。

本書はYouTubeをめぐりおきている米国や日本でのニュースを網羅的にカバーしているだけでなく、パブリックジャーナリズムの日本第一人者である神田氏の視点から見たTVおよび動画配信/共有の未来が書かれている。インターネットを隅から隅までウオッチしている人ならば、すでに知っていることかもしれないが、そうでない人には、いったい騒がれているYouTubeってなんなんだ、何がすごいんだ、っていうことを知ることができる良書だ。読みやすく、実際、私は2時間ほどで読了した。