2008年10月28日火曜日

ウィキペディアで何が起こっているのか 変わり始めるソーシャルメディア信仰

ウィキペディア(Wikipedia)はもちろん自分では良く使っている。何か調べ物をするときにも、使うサイトの1つだし、自分のブログの中で参照したりもする。

ただ、自分が詳しい領域の記事については不正確な内容が掲載されていることなども目にすることも多く、世で言われているウィキペディアの限界のようなものも感じていた。

ウィキペディアで何が起こっているのか 変わり始めるソーシャルメディア信仰」ではそんなウィキペディアの仕組みから運営方針、日米の違い、それらによって生じる数々の問題などが解説されている。いくつかのブログなどで、日本のウィキペディアの運営は米国のそれと違うというようなことも書かれていたのだが、本書でその意味が良くわかった。また、厳密に解釈すると、ウィキペディアの記述を引用したり、さらには当然編集に協力した場合、法的な責任も保持することなるそうだ。これは極端な例であるが、「みんなが一緒に作っている辞書」なので、責任所在も「みんな」になる。

本書の中では、同じように集合知の基盤として日本でも認知されている2ちゃんねるとの比較が行われる。筆者らは、2ちゃんねるのほうが実は運営はしっかりしているし、日本の法律に則った対応は行ってくれると言う。2ちゃんねるは2ちゃんねるでその管理人を含め、課題はあると思うが、日本の法律において責任を求めることのできる存在が日本にあるかどうかという観点からだけ見ても、ある意味正当な主張だ(ウィキペディアの場合は米国ウィキペディア財団が主体者となる)。

私の場合は、これを読んだからと言って、ウィキペディアの利用を止めようと思うことはない。むしろ、アカウントをきちんと取得して、編集に参加させてもらったりした。ただ、書かれているような課題やリスクがあることを認識しておくことは大事かと思う。

あと、中で取り上げられている日本語版ウィキペディアの編集にかかわる事件のいくつかは参考になる。

極めて第三者的に無責任に言わせてもらえれば、「リーダーのいない」組織がどこまで機能し続けられるかは興味あるところだ。

ウィキペディアで何が起こっているのか 変わり始めるソーシャルメディア信仰
山本 まさき

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