だいぶ前に読んでいたが、ここに書くのが遅れてしまった、著者の佐々木俊尚氏からいただいた1冊。佐々木さん、いつもありがとうございます。
佐々木氏は情報洪水(インフォフラッド)により脳がパニックを起こしてしまい、結局生産性を落としてしまうことになったり、時間に追われ続け、より大事なことに時間を割けなくなってしまっていると言う。そして、これを解決するのが、情報共有圏(インフォコモンズ)であると提唱する。
情報共有圏(インフォコモンズ)は氏の造語だが、本書では次のように説明されている。
人が情報を収集する時、どのような枠組みの中で情報を収集するのかという、その文脈
正直、なんともわかりにくい。佐々木氏にお会いしたときにも、僭越ながら直接言わせていただいたのだが、本書の内容は大変興味深いものであるものの、ほかの氏の著作に比べると、馴染みの無い用語や難解な用語-佐々木氏の造語でなかったとしても、氏の解釈が入らないと、文章中でどのような意味で用いられているかわかないもの-が多いのが残念だ。数ページ戻って、用語を確かめたりして、また読み進めることも少なからずあった。
インフォコモンズは 1) マス、2) 中間共同体(マジックミドル)そして 3) 極私的(パーソナル)な3つの領域(エリア)に分類できるが、今拡大しているのは2番目のマジックミドルだ。
つまり、適度な大きさのドメインにおいて、ソーシャルな基盤を用いたパーソナリゼーション/リコメンデーションが行われることこそが望ましい(これは、佐々木氏の言葉ではなく、私が本書から超訳的に、走り幅跳び的に解釈した)のだが、適度な大きさのドメイン設定が難しい上に、プライバシーの問題、ビッグブラザーのような監視にならないかの不安、さらにはドメインが広がった場合のS/N比の問題と課題は多い。これを解決するのが、インフォコモンズを支える次の4つの要素からなるアーキテクチャだ。
1) 暗黙(インプリシト)ウェブである。
2) 信頼(トラスト)関係に基づいた情報アクセスである。
3) 情報共有圏(インフコモンズ)が可視化されている。
4) 情報アクセスの非対称性を取り込んでいる。
このすべてを持つサービスはまだ存在しない。本書ではいくつかのサービスの方向性(たとえば、多方向性SNSなど)を示すが、それぞれ課題も多い。なにより、それらのサービスが人に自然と溶け込むようになっていなければいけない。2010年ごろには普及すると氏は予測するが、私には正直そのような方向に進むかはわからない。何より、情報洪水に疲れてしまったユーザーがいくつかのサービスやインターネットそのものから離れることさえ考えられるのだから。
登場以来、順調な進歩とユーザーの支持を集めてきたウェブであるが、ここで過渡期を迎えているのは事実だ。インターネットのヘビィユーザーとしても考えていきたい。
インフォコモンズ (講談社BIZ)
佐々木 俊尚
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