絵本(イラスト物語というのか?)なので、あっと言うまに読み終わる。どちらの話もひどく単純だ。これから何を思うのかは読者に任されている。自由への追求を感じる人もいるだろうし、不完全であることのすばらしさを感じる人もいるだろう。
柳氏の「声」で紹介される東由多加氏のコメントはそのどちらでもなかった。葬儀の弔辞で最相葉月氏が次のように故人のエピソードを語る。
あのとき、なにがきっかけだったか、ある絵本の話になりました。シルヴァスタインという人の『ぼくを探しに』という絵本です。東さんはご存知なかったので、私はそのストーリーを説明しました。「蒼い」とさえ言えるようなこの理想主義。いつまでもピュアな心を持っていたからこそ他人とぶつかり、それでも他人から愛される存在だったように思う。
<略>
完全ではないいまの自分を愛すべきだという寓話でした。数年前にはじめて読んだとき、とても感動したのでした。でも話し終えると東さんはこういわれたのです。
「最相さん、ぼくはそうは思いません。主人公が最後にかけらを棄ててしまうという終わりかたには疑問を持ちます。だって最後の最後くらいは、自分にぴったり合うかけらが見つかることを信じて生きていたいじゃないですか。いつの日か完全な自分になれる、どこかに絶対的な幸福が待っている。そう思うから、つらく苦しい毎日でも生きていこうと思えるのではないですか」
個人的にはこの2冊とも、Amazonでの高い評価ほど心を揺さぶられるものは無かった。時期が来たら、感じ方も変わるのかもしれないが。