2007年12月27日木曜日

起業家2.0―次世代ベンチャー9組の物語

たまに自分の生まれるのが早すぎたと思うことや遅すぎたと思うことがある。なんとも中途半端なときに生まれてしまったのではないかと。私はいわゆるバブル世代。若いときには新人類と呼ばれていた。日本経済の発展を背景に青春を謳歌したのは事実だが、何も生み出していない世代という感も否めない。

ちょっと上の世代を見ると、学生運動に身を投じた人間が多い。学生運動に身を投じた人たちも大学卒業とともに日和ってしまい(意味がわかるだろうか? Wikipediaによると死語らしいが)、その意味では高度経済成長という流れに結局乗っているだけではないかとも思うが、それでも一時的ではあったにせよ、自分たちの力で世の中を変えよう/変えられると思っていた世代という一種の憧憬に似た感情を持つ。誤解されるのを覚悟で言うと、安田講堂紛争あさま山荘事件などを振り返るテレビ番組などを見ると、世代としてはずっと後の世代にも関わらず、何か懐かしく感じるものがある。

一方、今、私が働く業界は、いわゆるネット世代もしくはナナロク世代と呼ばれるような連中が活躍しており、私などはいわゆる旧石器時代のような存在だ。私は良い意味でも悪い意味でも年齢というものをほとんど意識することが無い(ゆえに、ガキっぽいといわれることも多いのだが)。だが、それでもときに思う。もう少し後に生まれてきていたらと。学生時代からインターネットが普及していたら、自分は何をしていたろうか。もともと組織に帰属することを必ずしも良しとせず、就職した会社も自由闊達な企業風土を持つ会社だったので、今までの社会人人生に大きな不満があるわけではない。だが、今の若い世代のように、卒業と同時に起業を考えるようなことはなかった。最近は大学生と話す機会も増えたのだが、大学生の中にはすでに起業している連中も多い。

本書は新しい世代によるベンチャーを紹介した1冊だ。すでにいろいろなメディアで取り上げられている企業も多いが、このように同じ視点でいろいろな企業についてまとめられた書籍は貴重だろう。

紹介されている企業の中には、ビジネスプランは秀逸のものであっても、それを実現する技術者がおらず、外注に出すなどしたために、失敗した例がいくつか書かれている。この部分を読むと、まだまだ本当の意味でベンチャーが成長する土壌が日本に育っていないことがわかる。シリコンバレーを手放しにほめることはしたくないが、彼の地ではスペシャリストがごろごろしていて、有望なベンチャーには必要な人材が集まってくると聞く。日本では、まだまだ寄らば大樹の陰ではないが、優秀な人材がベンチャーに流れない。本書の中のビジネスプランの中には「マッチング」をアイデアの素としたものも多い。ベンチャーが生まれ育つためのスペシャリストのマッチングもうまくいく仕組みづくりはできないものか。

起業家2.0―次世代ベンチャー9組の物語
佐々木 俊尚

起業家2.0―次世代ベンチャー9組の物語
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佐々木さんおよび小学館様、贈呈ありがとうございます。