2008年4月29日火曜日

やばい!戦略的AO入試マニュアル

やばい!戦略的AO入試マニュアル
やばい!戦略的AO入試マニュアル

AO入試なるもの、実はつい数年前まで知らなかった。数年前の私と同じような境遇の方は、AO入試(Wikipedia)をどうぞ。

で、なんで私なんぞが今このAO入試のマニュアル本を読んでいるかというと、土曜日に行われた異業種交流会で、この本の著者である矢島さんとお会いしたから。

矢島さんとはどういう人かというのは、彼女のブログを読んでもらうのが一番だと思うが、若いながら多方面に活躍されている人。たぶん、このブログに書かれている以外にも多くの顔を持っているんだろう。
さて、この本、新幹線で京都から東京に向かう時間を使って、1時間弱で読んだのだが、読みながら感心することしかり。AO入試対策ということで、高校生向けの内容になっているのだが、AO入試向けのいくつもの指摘が社会人である多くの人にもそのまま通用するからだ。Amazonのレビューで「人生のバイブル」というようなことを書いていた人がいたが、それも大げさではないだろう。もちろん、このままでは社会人が積極的に買うような構成ではないが、AO入試という切り口でとどめておくにはもったいないように思う良書だ。

矢島さんが書かれていることの多くが私が常日頃社会人や大学生に話していることと重なっている。矢島さんへのメールでも書いたが、私なんかに講演の依頼や相談などせずに、矢島さんに依頼したほうが同世代からもっとビビッドな刺激を受けることができるのではないか。

たとえば、土曜日に某大学で大学生向けにキャリアディベロップメントの話をさせていただく機会があったが、そこでは「知識」と「知恵」という言葉で情報の加工や情報が無かった場合の推測のための能力の重要性を話したが、矢島さんも同じことを本書で述べている。ちょっと長くなるが引用する。
 今までの大学入試対策は、とにかく出る問題だけを勉強する、いわゆる「試験のための勉強」をしなければなりませんでした。全てに正解が用意されており、知識を頭に詰め込み、ひたすら覚えるのが勉強。俗にいう詰め込み方の教育が行われてきました。従来の一般入試試験は、学力を試す試験ですからあたりまえといえばあたり前なのですが、選抜力をつけるために、年々、難問・奇問が増えてきていました。
 しかし、最近の大学受験は徐々にその形を変えつつあります。表現力や想像力、判断力といった、実社会で大切な能力を重視する傾向が出てきたのです。つまり、「知識を詰め込む量」よりも「知識の活用能力」が試される時代になってきたのです。自分で問題を発見し、解決できる人が求められているのです。ですから、大学側も「問題発見・問題解決」能力に優れた学生を育成しようという動きが出てきました。<略>
私のつたない説明よりもなんと明快な解説だろう。これは大学を目指す高校生だけでなく、大学生、新社会人、さらには私を含む社会人経験の長い人間も常に心に留めておかなければいけないことだ。

また、履歴書や職務経歴書の書き方を他人から相談受けることもあるのだが、私が行うアドバイスの基本は履歴書をプレゼンテーション資料だと思って作りなさいということだ。出願書類のアドバイスとして本書で書かれている内容はそのまま社会人の履歴書+職務経歴書に使える。特に、自己推薦書に関して、自らの最初のドラフトを最終提出版にまでに完成させていく過程の解説は社会人の企画書の作成にも参考になるほどだ。伝え聞くところによると、いい大人の英文履歴書がプレーンテキストで箇条書きに自分の経歴だけを書いて、しかもスペルチェックしていないということさえあるようだが、矢島さんおよびAO入試での合格を目指す若い人たちの爪の垢を煎じて飲ませてやりたくなる。

細かいテクニックとしても、F字型で導線を確保すること、また逆三角形型で文章を書くこと(これはつい最近私もあるセミナーで同じことをアドバイスした)など、繰り返しになるが、社会人でも参考になることが満載だ。面接で「オウム返し」という形で相手にきちんと質問を理解していることを伝えることの重要性を書いているが、これはコーチングなどで使う「ミラーリング」の手法に通じる。ミラーリングとはせりふを単に繰り返すだけではなく、態度なども相手と同じようにすることにより、相手を心地よくさせるコーチングの手法だ。たとえば、面接で相手が非常にくだけていた場合、それよりも少しだけフォーマルにしているくらいが相手は心地よく感じるし、逆に、非常にフォーマルな面接の場合は、さらにそれよりも少しフォーマルなくらいがちょうど良い。このミラーリングという考えも、相手に自分の伝えたい内容を理解してもらうためには、相手が心地よいようになるべきという考え方を基にするものだ。

集団面接やグループディスカッションでのアドバイスも就職活動の大学生にそのまま通じるし、また社会人となったあとの打ち合わせでの心構えとしても使える。

書き出すときりがないが、あまりの内容の深さに驚いた。文章や構成のうまさ、レイアウトの秀逸さ、すべてに舌を巻いた。

本書の帯を見ると、この「やばい! 参考書シリーズ」というのはほかもカリスマ慶應生やカリスマ早大生が書いているようだ。大学生向けの講演会などでも感じているのだが、最近の大学生恐るべし。