本書では、バブルとは一種の宗教ではないのかと問いかける。
社会学者の橋爪大三郎は、宗教を定義して、就業とは「必ずしも自明でない前提にもとづいて行動する、一群の人びとの活動の全体」であるとしている(『言語派社会学の原理』洋泉社)。「必ずしも自明でない前提」とは、神は実在するとか、仏は悟りを開いたといった、客観的な形で外側から証明できないことを意味している。まさに土地神話や株価神話は、本来自明ではないという点で、橋爪の言う宗教に該当する。バブルは1985年のプラザ合意がきっかけとなり生まれたといわれているが、筆者はそれに疑問を呈する。実際に、それ以前からバブルの萌芽と思われるものが見えていたことを実証する。バブルの検証というものは、おそらく多くの団体や評論家、学者によって行われているのだろうが、実際のバブルもしくはプレバブルと呼ばれる状況にあったのがいつからか、そして、その原因は何かを探ることは重要だ。
さらに筆者は団塊の世代、その下の世代、さらにはバブル世代(新人類とも呼ばれた)、そして現代のバブルを知らない世代、それぞれの特徴を分析し、バブル崩壊と団塊の世代の大量退職により、急激に世代交代が進むのではないかと示唆する。確かに、団塊の世代の次のリーダーは途中の世代が中抜きされたかのように、一気に40代や30代から抜擢されるケースが多い。30代前半はバブルを知らない世代だ。この世代が今後バブルのような状況が再度発生したときに、どのように振舞うかによって、日本の経済や文化が左右されるだろう。
バブルを知っている30代後半から40代前半の人にお勧め。プチバブルやバブルの再来に備えて、何を考えておくべきか知るには良書だ。バブルとは何だったか、省みるだけでも役立つ。もっとも、それだけのためならば、もっとほかにも適切な書籍があるような気がするが。