2007年2月14日水曜日

日本コンピュータの黎明―富士通・池田敏雄の生と死

コンピュータ歴史博物館(Computer History Museum)というその名の通りコンピュータの歴史を展示した博物館がカリフォルニア州マウンテンビューにある。そこでは現在、博物館のフェローアワード(Museum Fellow Awards)の候補者を選定している。もうすでに多くのコンピュータ史上有名な人がアワードを受賞しているが、まだ日本から受賞者はいない。可能ならば、日本からも受賞者が出て欲しい。日本からのコンピュータ科学・産業への貢献は決して小さくはないのだから。

そんなことを考えた時、真っ先に思い浮かんだのが、富士通の池田敏雄氏だ。池田氏は富士通の初期のコンピュータの設計・開発を指揮し、その後、日立と提携しIBM互換機路線へと転換する際にも、キーマンの1人であった、日本のコンピュータ史を語る上で欠かすことのできない人物である。残念ながら、私は見れなかったが、NHKのプロジェクトXでも取り上げられたことがあるようなので、ご覧になったことのある方もいるかもしれない。(ちなみに、ここで言っているIBM互換機とはIBM互換PCのことではない。IBMメインフレームの互換機のことだ。念のため。)

その池田氏の生涯を著したのが、本書だ。

日本コンピュータの黎明―富士通・池田敏雄の生と死
田原 総一朗
4167356139

本書では、池田氏の生涯を追っているが、それとともに、富士通の、そして日本の、さらには世界のコンピュータ開発の歴史を解説している。まさに、IBM互換機といわれてIBM互換PCしか思い浮かばない若い人にこそ読んで欲しい本だ。日本にもかつて世界を相手に互角に渡り合おうという時代があったことを知って欲しいと思う。今も、もちろん世界を相手に激しい技術競争が繰り広げられているが、今とは違った時代背景での開発競争を知ることで、得ることも多いだろう。

本書は1992年にハードカバーで出版されており、その後、文庫になった。私はハードカバーのものを購入してあったが、今回、コンピュータ歴史博物館のフェローの話があったので、改めて読み直してみた。で、読み直してから、気付いたのであるが、コンピュータ歴史博物館のフェローは存命中の人しか推薦できないようだ orz。

ちなみに、池田氏が最後にIBM互換機で公私ともに支援をしたアムダール氏は1998年のフェローを受賞している。

参考情報: