2010年10月26日火曜日

僕はガンと共に生きるために医者になった ― 肺癌医師のホームページ



2001年に肺癌を発症し、その闘病の模様をホームページに記した医師がいた。本書はそのホームページを書籍化したものだ。

本書の中にその書籍化の話も出てくる。書籍化されたものを本人が目にすることが出来たかどうかは本書からはわからない(ただ、二宮清純氏によるあとがきからは間に合わなかったと思われるように読み取れる)。だが、ホームページを通じて闘病の様子を医師として冷静に書き記すこと、そしてこの書籍化が彼にとっての最後の生きがいであったことは間違いない。

2001年というとまだブログが一般的で無かったころだ。今では当時のホームページを見ることが出来ないが、おそらくHTMLを手で書くか、簡単なHTMLエディタを使って書いていたのだろう。掲示板も設置されていたようだ。徐々に自由の効かなくなる体で大変だったと思う。

少し前にある病気のことを知る必要があり、ウェブで検索してみたことがある。あまり情報がなく、こういう時はブログだと思って検索してみたら、多くが途中で更新が止まっていた。その時の恐怖というか行き場のない怖さや悲しさは言葉では言い表せない。死の恐怖というのは医師でもあると思うのだが、家族との貴重な時間を大事にしつつ、自分の闘病や日本の医療システムについて最後まで発信し続けたそのような強い心を私も持つことがいつかは出来るのだろうか。

手術不可能な肺癌、それは死を意味する、であったことがわかった後、筆者は遺影用の写真を撮影している。ふと、自分が急に死んだら、遺影には何を使われるのだろうと考えてしまった。