2009年3月16日月曜日

転職する人、できない人

「こういうもんだから」という大上段で構えられるのを見ると我慢できない。日本人だけ見たって、1億以上いるわけだし、世界は広く、世の中は激動だ。

そんな中で、上位何%の人間がほげほげで、何歳までにそれは決まるとか言われちゃっても、機嫌悪くなるしかない。しかも、私はその何歳までを超えちゃっているし、そもそも人間の器は成長期で決まるみたいなこと言われちゃっても、過去には遡れない。

という感じで、私みたいに好き勝手に戦略も無く(本当はちゃんとある。わかんないだろうけど、これでもあるのさ)、生きている人間には、なんとも機嫌を保ちながら読むのが辛い本だった。

転職する人、できない人''
古田 英明

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ヘッドハンターというかエグゼクティブサーチ業界では有名な縄文アソシエイツの古田氏の本の悪口を書いているのだから、この後の転職でこの会社のお世話にはなれないだろうと覚悟しなきゃいけない。ブログ1つで人生棒に振っていいのかとも思ったが、そもそも縄文アソシエイツのような会社から声がかかるわけはないので、うぬぼれるにもほどがある。

それはともかく、この本だが、実は良いことがたくさん書いてある。従来の日本企業の構造がいわゆるピラミッド型だったものから、文鎮型に変わって来たこと。その中で、上意下達型のリーダーはもはや不要であり、これからのリーダーは「心技体」のうち、「心」の割合が重要になるというような話はすごく心に響くメッセージであり、特に日本のリーダーが仕事ばかりで、人間としての魅力が無いことが多いことを感じている自分の考えと近い。

また、中で「自責」と「他責」についても述べている。
「自責の人」とはすなわち、何か失敗をした時に自らを振り返って反省することができる人です。これに対して「他責の人」は、それを他人のせいにして自分の責任をできるだけ回避しようとする。
非常に耳が痛い。外資系という会社は日本以外の本社機構を持つ。そのため、どうしても日本のユーザーや顧客の要求とずれが生じてしまうことがあり、その狭間に立たされるのが現地法人の社員なのだが、このときにどのように振舞うかでその人の器が知れてしまう。外資系が長いと、この部分にあきらめが生じてしまう。というか、達観してしまうところがあるのだが、それはすなわち「他責の人」であることにほかならない。常に自分が目指す「看板なしの生き方」を標榜するならばこそ、この「他責」グセを直さないといけない。

そのほかにもこの本には、心に訴えるリーダー論(「感動」の持つ力について)なども書かれており、非常に参考になる。

だが、冒頭に書いたように、以下の2点で私は読むことに苦痛を覚えた。
  • 人間を%でレベル分けをし、そのトップ5%を目指す人にのみに対してメッセージを送っている。中で、それ以外の生き方を認めることを書いているので、著者が残りの95%もしくはいわゆる出来ない人としてくくらられた20%の人の生き方を認めていないわけではないのだが、この本は一貫して上位5%を目指すために書かれているため、途中から違和感を超え、選民主義に通じる嫌悪感さえ抱いた(選民主義に通じるように感じたのは私だけであり、著者はそのような意図は無いと思う)。
  • また、本書では、何歳までに何をしておかないと手遅れだという解説が繰り返される。その多くは30歳台までへのメッセージである。自分個人のことを考えた場合、すでにその年齢を超えているので、指をくわえてポツーンというか、「俺にどうしろと言うのか」感は否めなかった。特に、年齢を加えてからの人間としての魅力、すなわち「心」の部分の魅力というのは、「どんな子供だったかということ」と最後の最後に締めてくれる。
    人をマネージメントしたり、リーダーになったりする上で大切なことは、実は正直さとか義理堅さとか、親が子供に言って聞かせるようなことばかりなのではないでそうか。ですから、子供時代に親が教えてくれたことをすべて実行できれば、本当に良いリーダーになれると思います。
    って、最後の最後に、親から受けた教育のことを言われても、困るのだが。アル中の父親に育てられた人はその後いくら本人が頑張っても著者の言うトップ5%には入れないっていうことなのか?
後者の部分に関しては、キャリア転機の戦略論でキャリア後期の人間に貪欲なまでの成長意欲があることを考えると、考え方が古いというか、硬直していると思わざるを得ない。

特に、著者がピラミッド型の上意下達を良しとする日本の従来の組織構造に限界を感じると言いながら、結局のところ本書では、レガシーもしくはトラディショナルな日本的な会社におけるキャリアしかロールモデルとして示せていないところに限界があるように感じる。会社を超えたところでのキャリアの道があったり、起業という道が日本でも一般的になるなど、いくつもいろんな選択肢があることを考えた場合のキャリアというのはこの本で書かれているものがすべてではないだろう。

ただ、すでに述べたように、ここ書いた2点を除くと(実は、この2点が結構本書全体の柱になっているので、除くことが難しいのだが)、本書で書かれていることに同意できる点は多い。古典にあたることの重要性。これは安岡正篤に学ぶでも書いたことだが、私自身、最近意識し始めている。また、逆三角形の下にいるのがリーダーだという考え方。すなわち、ホスピタリティ/サービスアビリティなどを駆使して、如何にして組織や部下、メンバーをモチベートしてゴールを達成していくかの考え方などはまったくそのとおりだと思う。外資で言う、エンパワーメントというやつだ。この概念も非常にわかりやすく解説している。

あ、言い忘れたが、転職しようと思っているわけではないので、変な勧誘電話はお断り。単に、いつものようにブックオフで仕入れて、サクサクって読んでしまったものの1冊だ。