私の積読コーナーに結構ある、「ブックオフで100円だったから買っちゃったよ本」の中の1冊。正直、あまり期待していなかったのだが、これがなかなか良い。
私は外資系3社を渡り歩いていて、外資系の良いところも悪いところもわかっているつもりだったが、甘かった。良く考えてみたら、当たり前で、私の知っている外資系というのはアメリカ資本の会社だけだし、しかもコンピュータ/ソフトウェア系の会社だけだ。
本書はLBS(ロンドン大学ビジネススクール)での教鞭の傍ら、現地の世代と性別の違う社会人にインタビューした結果わかった英国のキャリアデザインをまとめたものである。アマゾンのレビューなど見ると、タイトルと内容が違うということでがっかりされていらっしゃる方もいたようであるが、私から見ると、米国とも日本とも違う英国の考え方や歴史などがわかり、大変参考になった。たとえば、日本より転職が多いとは言え、戦略なき転職はジョブホッパー(Job Hopper)と呼ばれ尊敬されない。これなどは、シリコンバレーで3年おきに会社を変わるのさえ珍しくないというのとはまったく異なる。
本書では、世代と性別の違う12人が登場する。
- キャリア初期(20歳代から30歳代前半): 男性3人
- キャリア中期(30歳代半ば40歳代まで): 男性3人+女性3人
- キャリア後期(50歳以上): 男性2人+女性1人
最後に登場する日系英国人女性は40歳を過ぎてから大学に入り、その後、大学院の修士課程、そして博士課程まで進んでいる。本書執筆時に、すでに65歳を過ぎているのだから驚きだ。彼女に限らず、キャリア後期の方々の学習意欲には刺激を受けた。
また、同じくこのキャリア後期に属する別の男性のリストラを生き延びる方法は参考になる。彼曰く、1) 信頼できる友人・知人を持っていること、2) 精神的な若さを保つこと、3) 自分自身の能力開発に常に務めること。どんな国でも会社でも、この先少なくとも2年くらいは厳しい状況が続くと予想される今、サバイブし続けていくために、この3つのポイントは重要だ。
最後に、筆者は一般の戦略論の際に必要となる、次の5つの視点が必要と説く。
- 短期よりも中長期
- 後手後手ではなく先手
- ビジョンや使命や目標が必要
- メリハリをつけ選択
- 自然な流れ
100円で良い本に巡り会えた。いつもながらブックオフに感謝。
キャリア転機の戦略論 (ちくま新書)
榊原 清則
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