2009年3月3日火曜日

就活のバカヤロー

就活のバカヤロー (光文社新書)''
大沢仁

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就職活動、略して就活。私の時代には略さなかった気がする。

私はいわゆるバブル世代のため、わがままさえ言わなければ、就職先には困らなかった。むしろ、企業側の囲い込みが話題になったような時代だ。早めに内定を出した学生がほかに逃げないように研修という名前で海外旅行に連れて行くなど、ちょっと考えれば、あの時代でも異常だと気づくだろうことが普通に行われていた。

ただ、その時代でも、私はそんなに楽に就職は出来ていない。確かに、わがままさえ言わなければどこかには就職できたのだが、5月くらいに見学に行った某大手電機メーカーの工場で正午になると同時に社員が社員食堂めがけて走り込むのを見て幻滅し、某大手プラント会社からは「お前のような奴は作業員に舐められるからデパートの店員にでも成ったほうが良い」と言われ、6月になることにはすっかり何をして良いかわからなくなってしまっていた。

そりゃそうだ。3年生まではレジャーランド化した大学でサークル活動(ロックバンドをやっていた)と読書や映画にばかり時間を使っていたのだから、社会人になることなんて考えていない。周りのみんながすっかり日和って(読めますか? 「ひよる」と読みます)、サラリーマンまっしぐらなのを馬鹿にしていたくらいだし。

焦りだしたのは、今でも就職人気ランキングで上位に入る某大手電機メーカーに電話だけで断られたころからか。技術系は電気系学科出身しかとっていない。はぁ、そうですか。さらに、某シンクタンクからも院卒しかとっていないと言われたころから、焦りだした。

同じ研究室の院の先輩が私も受けかけていたYHP(横河ヒューレットパッカード。今の日本ヒューレットパッカード)の内定を貰って、「じゃあ、及川君はここにしなよ。2人しか就職しない研究室で2人とも同じ会社ってまずいし」と言われて、そのまま素直に受けて入ったのが最初の会社の日本DEC(ディジタルイクイップメント)だ。こんな具合に、なんとも主体性のない就職活動だった。それでもどうにかなってしまうくらいに、いい加減、良く言えば、のんびりした時代だった。

ちなみに、最後は、某テレビ局の技術職員と某石油会社を受けていた。内定が早く出たところに行くと決めていたので、ちょっとでも運命が違っていたら、どうなっていただろうかと今でも考える。

さて、本書は、企業、大学、学生、就職情報会社という4者が繰り広げる、現代の茶番劇(失礼!)を解説したものだ。家に何故か置かれていたので、2回風呂に入る間に読んでしまった。

どんな茶番かは冒頭の「焼肉の生焼け理論」を読めば一発でわかる。
みんなで焼肉をするとき、十分焼いた方がおいしいことは誰もがわかっている。ところが、さっさと食べないと他の人に食べられてしまう危険性がある。

そこで、誰かが抜け駆けして、多少生焼けでも食べるようになる。それに煽られて、他の人もみんな生焼けで食べるようになる。

しかし、心の中では誰もが「生焼けじゃおいしくない」と思っている。でも、他の人に食べられるのはおもしろくない。かくて、みんな生焼けのまずさを我慢して食べることになる。結局、満足する人は誰もいない――。

これが、「焼肉の生焼け理論」だ。
つまり、これと同じことが就活では起きている。誰もが、3年生のときから活動するなんておかしいと思いながら、自分だけ引くことができない。結果、意味が無いと思いながらも、年々エスカレートする、本質的には意味の無い就活プロセスを回し続ける。

私は、何故か、学生にキャリアディベロップメントについて話す機会が多い。先に述べたように、実にいい加減な学生時代を過ごし、かつ実にいい加減な就職活動をしたのにも関わらず、今では偉そうに、学生時代にどのように過ごせば良いか、社会はどういう人材を求めているかなどを話す。そんな資格も無いのに。

正直に言うと、今の学生は私のころよりも、真面目だし、勉強しているし、意識も高い。大学生のうちからインターンシップや交流会などを通じて、社会人と接する機会も多い(もっとも、本書では意味の無いインターンシップなども多いことが暴露されているが)。

私に言えることは、会社なんて10年や20年たてば評価も変わるし、そもそも存続していないことをある(私の最初の会社なんて無くなっているし)のだから、どこの会社に入るなんてことよりも、何をしたいかをじっくり考えるのが良いだろう。さらに言うなら、やりたいことだって変わるのだから、社会人としての生命力をつけることにまずは注力するべきだ。私だって、その生命力をつけるために、いまでももがいているくらいなんだから。

で、この本はそれぞれの茶番劇がいろいろなエピソードを交えて書かれているので、お勧め。