2007年7月20日金曜日

竹内まりや Denim

村上龍が以前ビートルズについて語った際、流行歌は常に人々にその時代の記憶をよみがえらせると発言をしていた。「欧米にはビートルズがいた。自分の若いときには日本にはそのようなアーチストが存在しなかったが、今はユーミンやサザンがいる」というような内容だったと記憶している(ユーミンやサザンというアーチスト名から分かるように、1980年代後半か1990年代前半の話だ)。

音楽は鮮明に過去を思い出させる。

時間だけは無限にあるものの、有り余るエネルギーの吐き出し場所を見つけられずに、仲間で集まっては青臭い議論をした大学時代。Long Hot Summer(Style Council)の気だるいムードが妙にマッチした。

Introducing the Style Council
The Style Council
B00000747N

大学3年の春休みに、くじ運の悪い私は体育の単位をとるために、日光までスケート合宿に行かねばならなかった。当時すでに、父は先の長くない病気だったが、合宿に来る前には、まだ会社に通っていた(実はこれは奇跡的なことなのだが)。日光での約1週間、屋外スケート場では、浜田省吾のJ.BOYからの曲が繰り返し流れる。合宿から帰ると、父が緊急入院したという。病院に駆けつけると、状況はそんなに悪くなく、普通に会話できた。合宿の様子などを話したと思う。変調を起こしたのは、そのすぐ後。意識がなくなり、10日ほどで他界した。

J.BOY
浜田省吾
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就職活動の時期、自分のやりたいことがわからず、完全に迷走していた私は、シンクタンク、石油開発会社、コンピュータ会社など手当たり次第、話を聞いた。そして、その中の数社に応募した。今考えると、自分でもよくわからないのだが、なぜかその中にTBSがあった。もしかしたら、応募はしなかったのかもしれない。説明会には行ったはずだ。会社を案内してもらった際に、当時人気番組だった「ザ・ベストテン」のリハーサルで、流れていたのが、少年隊の「君だけに」。指を鳴らして始まるこの曲。このとき違う選択をしていたら、その後に違う道を歩んだことになるのだが、今でもこの曲を聴くとふと違う道を歩んだ場合の自分のことを想像してしまう。

これらは一例に過ぎないが、街角で流れていると急に過去に引き戻されてしまうような楽曲はいくつかある。

そのような曲に加わることになりそうなのが、竹内まりやのDenimだ。正確には曲ではなく、CDだが。

昨年のクリスマスにテレビで流れた曲(クリスマスは一緒に)が印象に残っていたのだが、その曲以外にも、心に染み入る曲が多い。自身の状況を重ね合わせたり、似た立場の友人を思い出させたりする歌詞。その歌詞を包み込むようなメロディ。良質のポップというのはこういうのを言うのだと思う。山下達郎は以前から良く聴いていたが、竹内まりやのほうが日本人の情に訴えるウエットなものをもっている。以前、山下達郎がある竹内まりやの曲を評して、「あれがぎりぎり」と言っていたが、山下達郎は日本人の好むウエットな部分が苦手なのだろう。

B000O76P6MDenim (通常盤)
竹内まりや Alan Jay Lerner 服部克久
ワーナーミュージック・ジャパン 2007-05-23

by G-Tools


このDenimだが、通勤時、勤務中、入浴中、ドライブ中など最近いつも聴いている。いい時期に巡り合えてよかった。