2013年1月7日月曜日

亀田音楽専門学校

BASS MAGAZINE (ベース・マガジン) 2007年 11月号 [雑誌](CD付き)

1月3日と4日の2日に渡って、NHK Eテレで「亀田音楽専門学校 J-POPの魅力に迫る」が放送された。昨年解散した東京事変の名ベーシストとして、さらには数々のJ-POPのヒット曲のプロデューサー/アレンジャーとして有名な亀田誠治さんが、J-POPのヒット曲の秘密を解説した番組だったのだが、大変面白かった。

1月3日の1限目は「泣ける歌 胸キュンコード学」と題して、コード進行からヒット曲の技法を解説した。キーワードは「クリシェ」。

クリシェとはコード進行の中で1音を半音ずつ上昇または下降させる技法だ。例えば、C→CM7→C7→C6というコード進行では、C、B、B♭、A(以上、単音)と半音ずつ下降する音があり、最後のA(単音)が「行き場を探す」状態になり、これが歌を泣かせる要素になるという。この半音ずつ下降する音以外はCEG(ドミソ)の共通するコードとなり、C(コード)の安定状態からC6のAの不安定な状態を作り出し、これが次に展開されるD(コード)のD(単音)の安定状態で落ち着くことになる。番組では、これを「音符同士が恋をする」という言い方をしていた。

例として出されたドリカムの「Love Love Love」では、「ねぇ、どうして〜」と歌われる部分のコードにおいて、同じく半音ずつ下がるクリシェが使われていることを紹介していた。

ゲスト講師で参加していた平井堅さんが紹介したJ-POPは次の3曲。
  • 時の過ぎゆくままに(沢田研二)
  • カブトムシ(aiko)
  • Innocent World(Mr. Children)
いずれもクリシェが用いられた楽曲だ。

「時の過ぎゆくままに」では「ときのすぎゆくままに」の「ままに」の不安定さが、「カブトムシ」では「あなたのみみによせた〜」の「あなたのみみに」の不安定な部分が、クリシェを使った箇所である。いずれも、その後の安定状態を導くための「音の待ち合わせ」場所である。

一方、「Innocent World」でのクリシェの使い方は「サビへのジャンプ台」だ。サビ直前の「Mr.Myself」の部分のメロディはコード進行で言うとG#7→Aと移る部分であり、この部分は無くてもサビ前からサビまではつながる。実際、番組でこのクリシェ部分を抜きにして、平井堅さんが歌ってみていたが、つながることはつながるのであるが、なんとも盛り上がりに欠ける。つまり、この部分のクリシェの存在はサビに向けて不安定から安定を作り出すために必要な部分だ。

同じように「サビへのジャンプ台」としてクリシェを使っているのが、平井堅さん自身の「瞳をとじて」だ。サビ直前に「Your Love Forever」と歌いあげる部分があるが、これは最初は無かったそうだ(平井堅さん談)。盛り上がりを作り出すために、クリシェを挿入し、今の形になったという。ここのコード進行はG7→G7/B→A♭M7。番組では、この最後の「A♭M7」を「涙ためコード」と呼んでいた。

1限目の最後に紹介された曲は松田聖子さんの「瞳はダイアモンド」。この曲は「クリシェ三昧」と言えるほど、クリシェが使われている。ルート(根音)が下降するクリシェで、自然とその対位になる形でメロディ(主旋律)が上昇する。作曲者は呉田軽穂さん、ユーミンだ。さすが。

1限目はこの「瞳はダイアモンド」を平井堅さんが歌い、亀田誠治さんがベースを弾くという贅沢な生演奏で終わった(アレンジも亀田誠治さん)。

1月4日に行われた2限目は「泣ける歌 メラメラのメロディ学」と題し、「メラメラ=情念」をテーマに解説が行われた。キーワードは「リフレイン」。

まず取り上げられたのが、小田和正さんの「ラブストーリーは突然に」。「あのひあのときあのばしょできみにあわなかったら」の部分は同じメロディを繰り返している。これがリフレインだ。ベートーヴェンの運命などでも使わているようにクラシカルな手法だという。

この繰り返しの後に続くメロディと合わせて、せき止めていたものを吐き出すような強い効果があるという。番組では「人に気持ちを伝えるには繰り返し言うでしょう」という説明もされていた。

サザンの「真夏の果実」も同じくリフレインを効果的に使った楽曲だ。「ラブストーリーは突然に」が小さな箇所を繰り返していたのと比べて、こちらの「真夏の果実」は大きな箇所を繰り返している。

平井堅さんが紹介したのは、次の3曲。

  • 本能(椎名林檎)
  • Automatic(宇多田ヒカル)
  • お久しぶりね(小柳ルミ子)
平井堅さんいわく、「メラメラというのには演歌的なものを感じる」。マイナーキーで歌い上げるものであり、歌唱法としてもビブラートなどを効果的に用いることが多いという。宇多田ヒカルさんの曲も声が特徴的だ。昭和歌謡のようなものが好きだという平井堅さんは小柳ルミ子さんの「お久しぶりね」の桜の花びらがひらひらと舞い落ちるような歌い方に憧れたと言っていた。

「メラメラ=情念」と言ったら、この人でしょうと言って紹介されたのが、中島みゆきさん。それも「わかれうた」が例に出された。この曲はリフレインとともに、「音符1つ1つに言葉をはめている」のが特徴的だという。「短く、等間隔」に言葉が音符に載せられる。これにより「縦」のノリが作られる。人は強調したいときに「だ・か・ら」とか「はっきりいって」(この2つとも本当は「傍点」を入れたい)のように、一音一音を区切って発音する。これと同じような効果があるという。番組では、同じ中島みゆきさんの「時代」が横に流れるような歌になっているのと比較していた。「時代」をわざとスタッカートで平井堅さんに歌ってもらうなどもして、わかりやすく解説していた。


2限目の最後は平井堅さんや亀田誠治さんの生演奏で、平井堅さんの「告白」。この「告白」もリフレインを用いたものであり、「わかれうた」のように一音一音をしっかりと音符に載せたものとなっている。

ー*ー*ー*ー*ー*ー

わずか30分ずつの番組であったが大変濃い内容のものであった。言葉ではなかなか伝わらないと思うので、もし再放送があったら是非見て欲しい。お勧め。

ヒットの理由―人気音楽プロデューサーが読み解く ヒット曲は偶然生まれない
ヒットの理由―人気音楽プロデューサーが読み解く ヒット曲は偶然生まれない

2013年1月6日日曜日

マラソンはゆっくり走れば3時間を切れる! 49歳のおじさん、2度目のマラソンで2時間58分38秒

「マラソンはゆっくり走れば3時間を切れる! 49歳のおじさん、2度目のマラソンで2時間58分38秒 」を読んだ。

この本はサブスリー、すなわちフルマラソンを3時間を切って走ることを目的にしているランナーのためのものであるが、私のようにサブフォー(4時間以内で完走するレベル)のランナーにも役立つ。

マラソンはゆっくり走れば3時間を切れる!   49歳のおじさん、2度目のマラソンで2時間58分38秒 (ソフトバンク新書)

書いてあることは極めてシンプル。

距離信奉を止めて、メリハリのある練習をすること。

野口みずきさんの言った「走った距離は裏切らない」という名言にあるように、記録を良くしようと思った場合、ある程度の距離を走ることが必要である。走らないで記録を良くしようと思うのは虫が良すぎる。

しかし、走り過ぎることによる故障もアマチュアランナーには大変多くある。故障までいかなくても、疲労が抜けずにレースに臨むことになり、凡庸な記録に終わることもあると言う。

本書では、少ないポイント練習で高い負荷をかける代わりに、それ以外の練習は疲労抜きジョグに徹することを勧めている。疲労抜きジョグは自分の最速のペースの半分のペースで走ることである。例えば、1kmを3分半で走る人の場合は、1kmを7分以上かけて走るくらいのペースだ。これくらいのペースで走ることにより、ポイント練習での疲労を抜くのが良いとしている。

ポイント練習はインターバルとペース走を勧めている。最初はインターバルでスピードを身につけ、その後にペース走に移ると良い。

ここまでメリハリをつけることを説いている本は初めて出会ったが、書かれていることはごくごく当たり前のことである。しかし、それがなかなか実践できない。自分の練習を振り返ってみても、距離を走ることに満足してしまい、毎回の練習がなんのための練習なのかわからなくなっていることが多い。ジョギングのつもりで走りはじめたのに、ついついペースが上がってしまい、かと言って、負荷をかけるほどの練習にはなっていないというケースがままある。一方、ポイント練習のつもりが、途中で辛くなり、さほど負荷がかからないままで終わってしまっていることも多い。

本書では、サブスリーを狙うランナーには、
インターバル走(週1回 1000m × 7本)1km3分45秒を5分30秒〜6分回し
を、サブ3.5を狙う(3時間半切りを狙う)ランナーには、
インターバル走(週1回 1000m × 7本)1km4分15秒を6分回し
を勧めている(スピードをつける時期)。

「1km4分15秒を6分回し」というのは、1kmを4分15秒で走ったら、1分45秒休む(スローペースでジョギングなど)というのを繰り返す(上の例の場合は7回繰り返す)ということを言う。

持久力をつける時期は、ペース走を週に10kmほど行うだけで良い(サブ3.5を狙うランナー)と言う。

練習にメリハリをつけるという話は、小出監督が書かれた「マラソンは毎日走っても完走できない―「ゆっくり」「速く」「長く」で目指す42.195キロ 」(参照:過去ブログ記事「走る本」)でも言われていた。忙しかったり、疲れていたりすると、頭ではバリエーションを設けた練習をしなければいけないとわかっていても、ついつい単に走るだけになってしまう。本書の内容を元に、自分のレベルに合わせた練習メニューを考えなければいけないと感じた。

奇しくも、久しぶりに勝ったランニング雑誌(ランニングマガジン courir (クリール))でも効率の良いマラソン練習についての記事が巻頭に書かれていた。レースペースでの練習ばかりでは意味がないことを次のようにわかりやすく書いている。
レースでは、練習では発揮したことがない力を出すことができるのです。そのように仕上げていくのがマラソントレーニングです。練習の組み立てにはこのようなマラソンの基本がわかっていることも大切です。
ランニングマガジン courir (クリール) 2013年 02月号 [雑誌]
ランニングマガジン courir (クリール) 2013年 02月号 [雑誌]

のんべんだらりと走るだけでなく(それも気持良いんだけどね)、もうちょっとちゃんとメニューを考えてみよう。

2013年1月4日金曜日

サッポロ黒ラベル 大人エレベーター


日テレの箱根駅伝中継のCM枠はロングバージョンが流せるので、スポンサー各社とも力を入れている。普段あまりテレビを見ないので、スポンサーになっていた勤め先のCMもまとめて見ることができて良かった。

サッポロビールも例年(少なくともここ数年はそうだと思う)、箱根駅伝のスポンサーとなっている。今年流れたサッポロ黒ラベルの大人エレベーターというCMは、JR車内でも見ることができるので以前から知っており、過去に出た宮藤官九郎さんやリリーフランキーさんのものなどは好きだった。

今回は奥田民生さんのロングバージョンが流れていた。これがまた肩に力が入っていない感じでとても良い。彼は私と同い年。

今なら、サッポロビールのWeb(いきなり音が出るので注意)からも見ることができる。私は思わず、全部トランスクライブしてしまった。

いくつか気に入った部分を引用。多分、通常のCMでも流れていたのだと思うが。

妻夫木
大人がしてはいけないことってなんですか?

奥田
いや、ないでしょ!
大人は何してもいいんじゃない?
悪行はダメだけど。
大人は何してもいいってならないと、憧れないじゃないですか、大人に。

妻夫木
昔の自分と今の自分、どっちが好きですか?

奥田
いやー、今でしょう。

妻夫木
何故、今のほうが好きですか?

奥田
いろいろ考えてきたもの。

妻夫木
生きるっていうことは?

奥田
こんな感じ(両手を縦に広げて、ある量が与えられている様を示す)のことを、こうやれって、それぞれに言われて、それをやって過ごすっていう。

妻夫木
調子が悪い時はどう対処しますか?

奥田
なんとかしますよ。

妻夫木
大人ってなんだろうなって話を。

奥田
それこそ、お好み焼に行ってね。
まぁ、広島だったら、こうヘラで、鉄板の上から直接食べるんすよ、男は。
子どもはできないじゃん、熱いし、危ないから。
ぐらいかね?

妻夫木
夢ってなんですか?

奥田
夢もないし、予定もないんだけれども、
どうやったら明日の仕事が楽にできるかなとか。

妻夫木
好きな言葉は?

奥田
いい感じで―。とか、そういう感じですかねー。
焼き加減は? いい感じで―。

妻夫木
大人がするべきことは?

奥田
責任を持つこと。
一緒にいる人もなんとかすること。



いい感じでー ;-) 肩の力が抜けている。新年始まったばかりだけれど、楽しくいきたい。

P.S. 過去のリリーフランキーさんの大人エレベーターを見たくなったのだけれど、サッポロビールのサイトにはその欠片もない。悲しい。権利関係かしらん。

2012年12月31日月曜日

Life is Good ~ Looking back at the year of 2012

Looking back at the year 2012.

As the last blog post in 2012, let me try to write in English.

In January, I was featured in a documentary program of NHK (Japan's national broadcaster). The program was called "Professional - Style of Work" (プロフェッショナル 仕事の流儀) and it focused on Google's engineering culture to deliver innovative technologies across the world to change people's lifestyle and workstyle.  I still don't think I was the person who to be covered by the program but I enjoyed the experience.

プロフェッショナル 仕事の流儀 IT技術者 及川卓也の仕事 挑まなければ、得られない [DVD]

In the same month, I went to the Perfume Live in Saitama Super Arena. It was great and I learned a lot.

Perfume 3rd Tour「JPN」(通常盤) [DVD]

In February, I gave a talk at Developers Summit. Like last year, my talk was warmly accepted by the audience. The title of my talk was "Leap before You Look ~ Let's change the society with the power of Geeks" (見る前に翔べ ~ ギークの力で社会を変えよう).



In March, I went to Iwate prefecture for the first time in my life. Iwate was where my mother and father were born in.  It was a short trip so I decided to be back soon.


In April, I ran Nagano Marathon and finished in less than 4 hours as I had committed.



In May, I went to the Perfume Live in Tokyo dome again.  My seat was very close to the stage, let's say probably in less than 5 meters!  It was a wonderful show.

And, my book titled "Nothing ventured, nothing gained" (挑まなければ 得られない) was published.  It was based on my personal blog but I updated lots contents as well as several new contents.

挑まなければ、得られない Nothing ventured, nothing gained. (インプレス選書)

In June, I went to San Francisco to attend Google I/O.

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In July, I gave a keynote at JANOG30. The title of my speech was "The Internet and Amara's law" (インターネットとアマラの法則).  The audience, Japan Network Operators Group, enjoyed my talk.  I hope they took something.

At the end of the month, I went to Isinomaki to attend IT Boot Camp for Ishinomaki Industrial High School students. I taught Smartphone application development. I was also a judge for Startup Weekend Ishinomaki.


In August, I was again in Iwate to see suffered areas.

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In September, I went to Kobe twice to give talks to people in West Japan. The 2nd talk I gave was for Developers Summit Kansai and the title of the talk was "Agile and Scalable Software Development Methodology learned from Chrome Project" (Chromeのプロジェクトに学ぶAgileでScaleするソフトウェア開発手法).  Too many Katakana computer jargon in the title ;-)

In October, I went to France for the first time of my life to attend W3C TPAC.

In the same month, I was nominated for one of "The Most Influential People for Japan" (次代を創る100人) selected by Nikkei Business (日経ビジネス).  Don't know the selection criteria but I am delighted to be one of 100 people in 2012.  BTW, the page I was printed on was the flip side of the one for Kyarypamyupamyu (きゃりーぱみゅぱみゅ).  So honored ;-)


In November, I went to my old school, Waseda Jitsugyo School (早稲田実業学校) to give a career talk.  One day before that, I ran Fuji Mountain Marathon.


In December, new magazine called "Magna Carta" (マグナカルタ) was published, in which my conversation with Katsuhiko Shimaji was featured.

マグナカルタ Vol.1 WINTER 2012


So many things happened this year and I cannot write all of them here.

And, on Dec 25th (Christmas!), I was admitted to the hospital and had surgery on 27th.  I'm still in the hospital and entering a new year here.

What a life :-)

Good news is that I'm expecting to be discharged from the hospital pretty soon, hopefully tomorrow.

Life is good.  It is good to give us so many experiences including tough challenges.  Who has experienced be in the hospital in new year eve? :-)

Wish you have happy new year!

from Takuya with Love

2012年12月23日日曜日

おおかみこどもの雨と雪

最近あまり映画を見ていない。今年ももうすぐ終わりだというのに、今年見た映画で記憶に残るものがあまりない。

そんな中でも
「おおかみこどもの雨と雪」は今年見た中では一番記憶に残るものだ。

「サマーウォーズ 」の細田守監督の新作だったが、期待通り、絵も素晴らしく、キャラクターも魅力的だった。

以下、ネタバレを含むので、読みたくない人はここでストップ。

おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]
おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]

主人公の花とおおかみおとこの恋愛は切ない。愛しあう二人にやがて子どもが生まれる。質素ながらも幸せな生活の先に訪れる死別。まだか弱い少女の面影を大きく残していた花も強くなり、子どもたちを自然の中で育てることにする下りからは母親の強さを感じる。

生まれた雨と雪の可愛さは半端ない。天真爛漫。今の子どもたちが失った自然を楽しむ心を持ち続ける。映画の中での画像の美しさも格別。いつか、おおかみこどもだということばれるのではないかとドキドキしながら見ていた。

やがて子どもたちは成長し、雨と雪はそれぞれの道を進む。

この物語は、親離れと子離れをテーマにしたものだ。どんな動物であっても、訪れる子どもの巣立ち。親は子離れを、子どもは親離れをしなければならない。そのための準備はしていても、その日は急にやって来る。

ただ、親離れと子離れということを考えても、この映画の訴えたかったものは当初わからなかった。今でも本当は何を訴えたいと思っているかはわからない。

通常、親は子の進む先はある程度予想が着く。自分の経験や知識、知恵を分け与えることで、自分一人で生き抜いていけるように、子どもを送り出す。それもこれも、子どものこれからはある程度予測可能だからだ。また、彼らが自分が授けたものをどう継承していくかを見続けることもできる。たまに里帰りする彼らやその子どもたちに会うことによって。

だが、花の場合はどうだろう。山に帰ってしまった雨に会うことはもう無い。花もはじめからそれを覚悟して育てた。自分では教えられないおおかみとしての生き方を教えて貰えるように自然の中で暮らすことを選んだ。

花の喜びは何だろう。彼女はこのあと、山にある自宅でどのように生きていくのだろう。

子離れをテーマとしては、少し残酷な終わり方ではないか。

そう思ったが、実は人間の家族においても、これは常に起こっていることではないかと気づく。自分の価値観とは全く違う価値観を持ち、自分の道を歩んでいく子ども。先がまったく見えない社会。

このような中で親は子を送り出し、子は巣立っていく。

変化の激しい現代での親子の関係を考える映画ではないかと考えた。

2012年12月20日木曜日

留学のほえづら もう笑うしかない! 海外留学生22人の泣きっつら体験

たまたまだとは思うのだが、語学留学をして英語を喋れるようになったという人に会ったことがない。逆に、語学留学をしたはずなのに、ほとんど喋れないまま帰国してきた人には何人か会ったことがある。

英語学習において、良くある勘違いが、英語をシャワーのように浴びる環境に行けば、自然と身につくというものだ。英語に対する拒否反応は無くなるかもしれないし、ある程度までは耳が慣れるというのはあるかもしれないが、単に聞き流しているだけで身につくものではない。周りにネイテイブがいるからと言っても、引きこもってしまっていては、英語でのやり取りする機会もなく、向上は見込めない。むしろ、いくらでも英語に接する機会を持てる日本のほうが学習には向いていることもある。

「留学のほえづら もう笑うしかない! 海外留学生22人の泣きっつら体験」は海外留学した22人のエピソードを悲喜こもごも紹介したコミック&エッセイだ。

ホスピタリティの欠片もないホストファミリーで苦労した人、ネイティブではないホストファミリーやアジアを中心とした海外からの留学生しかいない語学学校でネイティブの英語を学ぶ機会を持てなかった人、ストーカーに絡まれまくる人などなど。笑いながら読めるが、おそらくこれはごく一部の特殊なケースというわけではないのだろう。

留学には、英語で何かを学ぶというのと、英語を学ぶという、似て非なる2つのゴールがあるが、後者の英語を学ぶことを目的とした留学の場合には、いろいろな環境がありうることを覚悟し、そこからの学びを意識したほうが良い。

紹介したような泣き笑いありの大変な体験をしていても、本書に出てくる22人は極めて前向きだ。留学しなければ良かったと思う人間は皆無で、むしろ貴重な体験をしたと感謝している。

留学や海外滞在での一番の成果はこれだろう。日本にいたら得ることのできない、異なる文化での生活を通じての経験こそがほかでは得がたいものなのだろう。そのためにも、積極的に環境を楽しむことが肝要だ。

留学のほえづら もう笑うしかない! 海外留学生22人の泣きっつら体験
沼越康則

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※本書は出版元のアスキー・メディアワークスより献本いただいた。

島地勝彦責任編集 マグナカルタ 創刊

マグナカルタ


出版人マグナ・カルタ9章

① 読め。
② 耳をたてろ。
③ 両眼をあけたままで眠れ。
④ 右足で一歩一歩歩きつつ、左足で跳べ。
⑤ トラブルを歡迎しろ。
⑥ 遊べ。
⑦ 飲め。
⑧ 抱け、抱かれろ。
⑨ 森羅萬象に多情多恨たれ。

右の諸則を毎日三度、食前か食後に
暗誦、服用なさるべし。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、これは島地勝彦さんが週刊プレイボーイ編集長になった際に、亡き開高健さんが送った言葉である。

本日、この「マグナカルタ」を題名に持つ雑誌が発売される(形態としては単行本である)。「島地勝彦責任編集」として、すべての記事に「編集長前曰」が入るほどの力の入れようだ。

大変名誉なことに、その創刊号に島地さんとの対談を掲載していただいている。「新時代の旗手」というタイトルだ。

Googleの話から、組織論、リーダー論、そして震災復興の話まで12ページを使って取り上げていただいている。

対談は記事になることなどすっかり忘れるほど楽しいもので、予定されていた時間はあっという間に過ぎ、対談後の食事のときも編集者の方がずっと録音をされていたほどだった。

取り留めもない話も多かったので、あんなので記事になるのかと思っていたが、見事にわかりやすくまとめていらっしゃる。また、写真が素晴らしい。

島地さんは、雑誌は写真が良くないといけないというのを持論にされていらっしゃり、このマグナカルタも表紙に続く数ページは立木義浩さん撮影による女性ヌード。私の対談記事でもプロ写真家による写真が使われている。

創刊号の内容は以下のとおり。

マグナカルタ
人を統べる者が持つべきものとは――
【特集・人間の器】

中西輝政
劣化列島――戦略なき改革の迷走

浜矩子
賢者の知恵、愚者の教訓

御厨貴
ニュース映像でとらえる宰相の器

磯田道史
江戸の古文書を深く読み解く

堤尭
昭和史の真実

町山智浩
日本ではなぜハリウッド映画がウケないのか?

川村二郎
天声人語を添削する

松本基弘
ドラマ『相棒』を作った男

田所昌幸 「大きな物語」を失った日本人の不機嫌

瀬戸内寂聴/小泉武夫/中谷巌/福原義春/南伸坊 他

大人が読むに値する雑誌というのが少なくなってきたが、間違いなく本誌はその少ない雑誌の1つに加わるものだ。

全286ページで税込980円。季刊(クオータリー)。買うべし。