最近あまり映画を見ていない。今年ももうすぐ終わりだというのに、今年見た映画で記憶に残るものがあまりない。
そんな中でも
「おおかみこどもの雨と雪」は今年見た中では一番記憶に残るものだ。
「サマーウォーズ 」の細田守監督の新作だったが、期待通り、絵も素晴らしく、キャラクターも魅力的だった。
以下、ネタバレを含むので、読みたくない人はここでストップ。
おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]
主人公の花とおおかみおとこの恋愛は切ない。愛しあう二人にやがて子どもが生まれる。質素ながらも幸せな生活の先に訪れる死別。まだか弱い少女の面影を大きく残していた花も強くなり、子どもたちを自然の中で育てることにする下りからは母親の強さを感じる。
生まれた雨と雪の可愛さは半端ない。天真爛漫。今の子どもたちが失った自然を楽しむ心を持ち続ける。映画の中での画像の美しさも格別。いつか、おおかみこどもだということばれるのではないかとドキドキしながら見ていた。
やがて子どもたちは成長し、雨と雪はそれぞれの道を進む。
この物語は、親離れと子離れをテーマにしたものだ。どんな動物であっても、訪れる子どもの巣立ち。親は子離れを、子どもは親離れをしなければならない。そのための準備はしていても、その日は急にやって来る。
ただ、親離れと子離れということを考えても、この映画の訴えたかったものは当初わからなかった。今でも本当は何を訴えたいと思っているかはわからない。
通常、親は子の進む先はある程度予想が着く。自分の経験や知識、知恵を分け与えることで、自分一人で生き抜いていけるように、子どもを送り出す。それもこれも、子どものこれからはある程度予測可能だからだ。また、彼らが自分が授けたものをどう継承していくかを見続けることもできる。たまに里帰りする彼らやその子どもたちに会うことによって。
だが、花の場合はどうだろう。山に帰ってしまった雨に会うことはもう無い。花もはじめからそれを覚悟して育てた。自分では教えられないおおかみとしての生き方を教えて貰えるように自然の中で暮らすことを選んだ。
花の喜びは何だろう。彼女はこのあと、山にある自宅でどのように生きていくのだろう。
子離れをテーマとしては、少し残酷な終わり方ではないか。
そう思ったが、実は人間の家族においても、これは常に起こっていることではないかと気づく。自分の価値観とは全く違う価値観を持ち、自分の道を歩んでいく子ども。先がまったく見えない社会。
このような中で親は子を送り出し、子は巣立っていく。
変化の激しい現代での親子の関係を考える映画ではないかと考えた。