「ラブ・ミー・テンダー」では長年連れ添った夫婦の他人には理解できないかもしれない愛が語られ、表題作「ぬるい眠い」では高校生と付き合いながらも前の彼を忘れられない女性が葬る愛が語られ、「放物線」では一時期を一緒に過ごした仲間との間の変わらぬものへの愛が語られ、「災難の顛末」では愛猫についたノミとの格闘を経てわかった自分への愛が語られ、「とろとろ」ではほかの男達と関係を持つことで強まる彼への愛が語られ、「夜と妻と洗剤」ではあるプロトコルで関係が保たれる夫婦の愛が語られ、「清水夫妻」では死という日常のイベントに参加し続けることで感じられる生きることへの愛が語られ、「ケイトウの赤、やなぎの緑」では不思議な人たちとの集まりの中から感じられる彼への愛が語られ、「奇妙な場所」では一年に一度の行われる家族イベントから感じられる日常への愛が語られる。愛に生きる人たちを語る江國ワールド。
「災難の顛末」ではある日自分の体にできた赤い斑点、それは愛猫のノミが原因だと後に判明する、との戦いが書かれる。主人公は、彼よりも、そしてその原因である愛猫よりも、自分の体が愛おしいという事実に気づく。ストーリーを簡単に書いてしまうとこんなものなのだが、このノミとの格闘を通じて、自分以外のものの価値に気づく部分の描写は戦慄とさせる。
「清水夫妻」は赤の他人の葬式に潜り込むことを趣味とする夫婦。その夫婦と一緒に葬式に参加するようになり、死を身近に感じることによって、生の魅力に気づく主人公。その前には現在進行形の自身の恋愛さえ色あせてしまう。「私もいつか死んだとき、愉しく生きたことをまわりの人たちに憶えていてほしいなと思う。だからそのためにも愉しく生きたいと。」主人公の言うこの言葉は私の考えと一緒。
「ケイトウの赤、やなぎの緑」は「きらきらひかる
江國作品は良くも悪くも安心して、予定調和の世界が楽しめるのが良い。
ぬるい眠り (新潮文庫)
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