2012年12月15日土曜日

LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?


LINEというアプリケーションがある。もはや説明するまでも無いだろうが、スマートフォンをメインとするチャットサービスだ。

このLINE、インプレスR&Dによる「LINE利用動向調査報告書2013」(参考: インプレスR&Dのニュースリリース)によると、女性10代で73.0%、女性20代で64.8%という驚異的な普及率を誇っている。国内で3500万人のユーザーだが、世界でも7500万人ユーザーというのだから、久々の日本発で世界展開を実現したサービスだ。

私自身は今年初めからアカウントは登録している。アカウント登録当初は面白がって、スタンプ(キモカワイイ? キャラクターの絵文字みたいなもの)を送ったりしていたのだが、携帯を増やしたときに、アカウントを共有できなかったりして、すっかり萎えてしまって、今は特定の人との通信にしか使っていない。

しかし、そのユーザー数が示すように、今や押しも押されぬ大規模ソーシャルサービスに成長している。

このLINEというサービス、ネットを以前から使っていた人にはどこに独自性があるかわからなかったり、必要性を感じなかったりして、どうにも正体が掴めないのだが、「LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか? 」を読んでみて、少しわかってきた。

もう少しデータを見てみよう。LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか? に書かれている開発・運営元のNHN Japan調査データによると、男女比は男:女=51:49で、職業は会社員が38.5%であり、学生が30.3%だ。年齢別の構成を見ると、実際のユーザー像がもっとクリアになる。

12才~19才 16.5%
20才~24才 22.6%
25才~29才 21.9%
30才未満 過半数

要は、私のような中高年ではなく、圧倒的に若者に支持されているサービスなのだ。この種のサービスはインストールした後しばらく触って、その後すっかり使わなくなるということも多いのだが、LINEのアクティブユーザー率も高い。月間アクティブユーザーが86.1%というから驚きだ。週間のアクティブ率も今年5月のジャストシステムの調査では74%となっている。

LINEを一言で言うならば、キモカワイイキャラクターデザインのスタンプという機能が売りのテキストチャットかつ無料通話やソーシャル的な使い方も可能なスマホアプリということになるのだろう。実際にはブラウザやPCからも使えるのであるが、うまく携帯のスマホシフトに乗った形だ。

たかがチャットじゃないか。TwitterのDMやFacebookやGoogle+のメッセージ機能で充分。そう感じてしまうのだが、本書を読むと、ちょうどそれぞれのソーシャルサービスで対応できないようなユーザー層やコミュニケーションに刺さっているようだ。

LINEはアドレス帳によるユーザーマッチングが特徴だ。携帯のアドレス帳に登録しているような間柄だから、LINEで友達になっても良いでしょうというコンセプトを基礎とする。一方、友達の友達が友達であるという、ほかの多くのソーシャルサービスが持つ友達を永遠に広げさせていくような考えには後ろ向きだ。この絶妙の友達空間(ソーシャルグラフ)がほかサービスとの差別化要因となり、日本を中心として若者に支持されているのだろう。

私は電話が昔から嫌いで、今でも電話の前にメールかチャットで電話して良いかと確認して欲しいと思うくらいなので、アドレス帳はほとんど殻だ。待ち合わせ際の連絡もメールかチャット(メッセンジャー)で行う。電話での連絡をする可能性がある場合には、事前に番号を交換するが、それをアドレス帳に入れることはほとんど無い。Androidになってから、いろいろなサービスのコンタクトリストがアドレス帳と同期されたりした結果、エントリーはあることにはあるのだが、リアルの自分の人間関係を反映したものでは全くない。

このようなこともあり、LINEのアドレス帳によるマッチングはどうにも好きになれないのだが、多くの人には評判が良いようだ。

LINEの機能だけ見れば、Twitter、Facebook、Google+などのソーシャルサービスやSkypeやほかチャットをベースとするコミュニケーションツールと大きく変わらない。むしろ足りない面もあるくらいかもしれない。だが、この絶妙のソーシャルグラフの構成、スマホに最適化されたデザインと機能、そしてキモカワイイキャラクター。これらの組み合わせがLINEの特徴だ。LINEホームやタイムラインというFacebookのウォールやニュースフィード、Twitterのタイムラインのようなソーシャルを全面に出す機能がどこまで普及するかはこれからだが、LINEの本質が維持され続ける限りはLINEの人気は変わらないのだろう。もっとも、DeNAのcommのように類似サービスが後発でも出てくるし、以前から人気のあったカカオトークはYahoo! JAPANとの連携を発表するし、勢力図がどう変わるかはわからないが。

なお、個人的には、本書にも少し書かれていたように、マイクロソフトのチャットサービスであるメッセンジャー(MSNメッセンジャーやWindowsメッセンジャー)が本来ならば、LINEのポジションをとれたかもしれないと考えることもできる。米国発の製品にしては、面白い絵文字を登場させたり、画面全体を揺らすシェイクという遊び心満載の機能が入っていた。それでも、LINEほどの成功に結びつかなかったのは、LINEには、やはり、スマホシフトなどと絶妙にあったタイミングと勝機を機敏に捉える戦略があったためだろうか。

本書は「LINE? 聞いたことあるけど、良くわかんない」という人向け。良く使っている人でも新たな発見があるだろう。

なお、本書は著者・出版社の方から献本いただきました。ありがとうございました。

LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか? (マイナビ新書)
コグレ マサト まつもと あつし

4839944881

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