2010年3月1日月曜日

生きているだけで、愛。

江國作品がある意味、予定調和で安心して読めるのだけれど、この「生きてるだけで、愛。」はその真逆だ。本谷有希子さんの作品は初めてだったので、まだ作風に慣れていないからかもしれないが、パンクなスピード感にのめり込みそうだ。なんと言ってもタイトルが良い。彼女には「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」という芥川賞候補作品もあるようだが、こっちのタイトルも素敵だ。まだ読んでいないが、たぶん遠くない将来に読むことになるだろう。

この「生きているだけで、愛。」はいわゆるメンヘラーの女主人公の極端な形での愛の表現、生の表現がテーマだ。メンヘラー主人公の行動パターンをすべてその病気の所為にしてしまっているようなところは、その病気への理解に疑問を感じてしまうところもあり、必ずしも好きではないのだけれど、それでもそのような背景を持たせることでエキセントリックな奇態を通じての愛から気づかされることも多い。いや、私は好きだ、こういう作品。こういう生き方。

ウオシュレットへの恐怖を理解してもらえないだけで絶望し、それを破壊し、せっかく始めたバイト先を飛び出す。どうやって世間と折り合いをつけようか。そんなでも楽をして生きることには怒りを覚え、最後まで理解を求める。

いや、本当、「生きているだけで、愛。」だよ。

生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)

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