2012年12月31日月曜日

Life is Good ~ Looking back at the year of 2012

Looking back at the year 2012.

As the last blog post in 2012, let me try to write in English.

In January, I was featured in a documentary program of NHK (Japan's national broadcaster). The program was called "Professional - Style of Work" (プロフェッショナル 仕事の流儀) and it focused on Google's engineering culture to deliver innovative technologies across the world to change people's lifestyle and workstyle.  I still don't think I was the person who to be covered by the program but I enjoyed the experience.

プロフェッショナル 仕事の流儀 IT技術者 及川卓也の仕事 挑まなければ、得られない [DVD]

In the same month, I went to the Perfume Live in Saitama Super Arena. It was great and I learned a lot.

Perfume 3rd Tour「JPN」(通常盤) [DVD]

In February, I gave a talk at Developers Summit. Like last year, my talk was warmly accepted by the audience. The title of my talk was "Leap before You Look ~ Let's change the society with the power of Geeks" (見る前に翔べ ~ ギークの力で社会を変えよう).



In March, I went to Iwate prefecture for the first time in my life. Iwate was where my mother and father were born in.  It was a short trip so I decided to be back soon.


In April, I ran Nagano Marathon and finished in less than 4 hours as I had committed.



In May, I went to the Perfume Live in Tokyo dome again.  My seat was very close to the stage, let's say probably in less than 5 meters!  It was a wonderful show.

And, my book titled "Nothing ventured, nothing gained" (挑まなければ 得られない) was published.  It was based on my personal blog but I updated lots contents as well as several new contents.

挑まなければ、得られない Nothing ventured, nothing gained. (インプレス選書)

In June, I went to San Francisco to attend Google I/O.

PANO_20120627_191618

In July, I gave a keynote at JANOG30. The title of my speech was "The Internet and Amara's law" (インターネットとアマラの法則).  The audience, Japan Network Operators Group, enjoyed my talk.  I hope they took something.

At the end of the month, I went to Isinomaki to attend IT Boot Camp for Ishinomaki Industrial High School students. I taught Smartphone application development. I was also a judge for Startup Weekend Ishinomaki.


In August, I was again in Iwate to see suffered areas.

Untitled

In September, I went to Kobe twice to give talks to people in West Japan. The 2nd talk I gave was for Developers Summit Kansai and the title of the talk was "Agile and Scalable Software Development Methodology learned from Chrome Project" (Chromeのプロジェクトに学ぶAgileでScaleするソフトウェア開発手法).  Too many Katakana computer jargon in the title ;-)

In October, I went to France for the first time of my life to attend W3C TPAC.

In the same month, I was nominated for one of "The Most Influential People for Japan" (次代を創る100人) selected by Nikkei Business (日経ビジネス).  Don't know the selection criteria but I am delighted to be one of 100 people in 2012.  BTW, the page I was printed on was the flip side of the one for Kyarypamyupamyu (きゃりーぱみゅぱみゅ).  So honored ;-)


In November, I went to my old school, Waseda Jitsugyo School (早稲田実業学校) to give a career talk.  One day before that, I ran Fuji Mountain Marathon.


In December, new magazine called "Magna Carta" (マグナカルタ) was published, in which my conversation with Katsuhiko Shimaji was featured.

マグナカルタ Vol.1 WINTER 2012


So many things happened this year and I cannot write all of them here.

And, on Dec 25th (Christmas!), I was admitted to the hospital and had surgery on 27th.  I'm still in the hospital and entering a new year here.

What a life :-)

Good news is that I'm expecting to be discharged from the hospital pretty soon, hopefully tomorrow.

Life is good.  It is good to give us so many experiences including tough challenges.  Who has experienced be in the hospital in new year eve? :-)

Wish you have happy new year!

from Takuya with Love

2012年12月23日日曜日

おおかみこどもの雨と雪

最近あまり映画を見ていない。今年ももうすぐ終わりだというのに、今年見た映画で記憶に残るものがあまりない。

そんな中でも
おおかみこどもの雨と雪」は今年見た中では一番記憶に残るものだ。

サマーウォーズ 」の細田守監督の新作だったが、期待通り、絵も素晴らしく、キャラクターも魅力的だった。

以下、ネタバレを含むので、読みたくない人はここでストップ。

おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]
おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]

主人公の花とおおかみおとこの恋愛は切ない。愛しあう二人にやがて子どもが生まれる。質素ながらも幸せな生活の先に訪れる死別。まだか弱い少女の面影を大きく残していた花も強くなり、子どもたちを自然の中で育てることにする下りからは母親の強さを感じる。

生まれた雨と雪の可愛さは半端ない。天真爛漫。今の子どもたちが失った自然を楽しむ心を持ち続ける。映画の中での画像の美しさも格別。いつか、おおかみこどもだということばれるのではないかとドキドキしながら見ていた。

やがて子どもたちは成長し、雨と雪はそれぞれの道を進む。

この物語は、親離れと子離れをテーマにしたものだ。どんな動物であっても、訪れる子どもの巣立ち。親は子離れを、子どもは親離れをしなければならない。そのための準備はしていても、その日は急にやって来る。

ただ、親離れと子離れということを考えても、この映画の訴えたかったものは当初わからなかった。今でも本当は何を訴えたいと思っているかはわからない。

通常、親は子の進む先はある程度予想が着く。自分の経験や知識、知恵を分け与えることで、自分一人で生き抜いていけるように、子どもを送り出す。それもこれも、子どものこれからはある程度予測可能だからだ。また、彼らが自分が授けたものをどう継承していくかを見続けることもできる。たまに里帰りする彼らやその子どもたちに会うことによって。

だが、花の場合はどうだろう。山に帰ってしまった雨に会うことはもう無い。花もはじめからそれを覚悟して育てた。自分では教えられないおおかみとしての生き方を教えて貰えるように自然の中で暮らすことを選んだ。

花の喜びは何だろう。彼女はこのあと、山にある自宅でどのように生きていくのだろう。

子離れをテーマとしては、少し残酷な終わり方ではないか。

そう思ったが、実は人間の家族においても、これは常に起こっていることではないかと気づく。自分の価値観とは全く違う価値観を持ち、自分の道を歩んでいく子ども。先がまったく見えない社会。

このような中で親は子を送り出し、子は巣立っていく。

変化の激しい現代での親子の関係を考える映画ではないかと考えた。

2012年12月20日木曜日

留学のほえづら もう笑うしかない! 海外留学生22人の泣きっつら体験

たまたまだとは思うのだが、語学留学をして英語を喋れるようになったという人に会ったことがない。逆に、語学留学をしたはずなのに、ほとんど喋れないまま帰国してきた人には何人か会ったことがある。

英語学習において、良くある勘違いが、英語をシャワーのように浴びる環境に行けば、自然と身につくというものだ。英語に対する拒否反応は無くなるかもしれないし、ある程度までは耳が慣れるというのはあるかもしれないが、単に聞き流しているだけで身につくものではない。周りにネイテイブがいるからと言っても、引きこもってしまっていては、英語でのやり取りする機会もなく、向上は見込めない。むしろ、いくらでも英語に接する機会を持てる日本のほうが学習には向いていることもある。

留学のほえづら もう笑うしかない! 海外留学生22人の泣きっつら体験」は海外留学した22人のエピソードを悲喜こもごも紹介したコミック&エッセイだ。

ホスピタリティの欠片もないホストファミリーで苦労した人、ネイティブではないホストファミリーやアジアを中心とした海外からの留学生しかいない語学学校でネイティブの英語を学ぶ機会を持てなかった人、ストーカーに絡まれまくる人などなど。笑いながら読めるが、おそらくこれはごく一部の特殊なケースというわけではないのだろう。

留学には、英語で何かを学ぶというのと、英語を学ぶという、似て非なる2つのゴールがあるが、後者の英語を学ぶことを目的とした留学の場合には、いろいろな環境がありうることを覚悟し、そこからの学びを意識したほうが良い。

紹介したような泣き笑いありの大変な体験をしていても、本書に出てくる22人は極めて前向きだ。留学しなければ良かったと思う人間は皆無で、むしろ貴重な体験をしたと感謝している。

留学や海外滞在での一番の成果はこれだろう。日本にいたら得ることのできない、異なる文化での生活を通じての経験こそがほかでは得がたいものなのだろう。そのためにも、積極的に環境を楽しむことが肝要だ。

留学のほえづら もう笑うしかない! 海外留学生22人の泣きっつら体験
沼越康則

4048864394

関連商品
スーパーリアルDVDで素のネイティブ200人と対話すればリスニング力が急激に伸びる! 見る英会話留学
留学で人生を棒に振る日本人―“英語コンプレックス”が生み出す悲劇 (扶桑社新書)
ネイティブ500人に聞いた! 日本人が習わない、雑談英会話・最新420選 米国人とノリよく話して友達になれる10レッスン
ネイティブ500人に聞いた! 日本人が知らない、はずむ英会話術
「カルト宗教」取材したらこうだった (宝島社新書) by G-Tools

※本書は出版元のアスキー・メディアワークスより献本いただいた。

島地勝彦責任編集 マグナカルタ 創刊

マグナカルタ


出版人マグナ・カルタ9章

① 読め。
② 耳をたてろ。
③ 両眼をあけたままで眠れ。
④ 右足で一歩一歩歩きつつ、左足で跳べ。
⑤ トラブルを歡迎しろ。
⑥ 遊べ。
⑦ 飲め。
⑧ 抱け、抱かれろ。
⑨ 森羅萬象に多情多恨たれ。

右の諸則を毎日三度、食前か食後に
暗誦、服用なさるべし。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、これは島地勝彦さんが週刊プレイボーイ編集長になった際に、亡き開高健さんが送った言葉である。

本日、この「マグナカルタ」を題名に持つ雑誌が発売される(形態としては単行本である)。「島地勝彦責任編集」として、すべての記事に「編集長前曰」が入るほどの力の入れようだ。

大変名誉なことに、その創刊号に島地さんとの対談を掲載していただいている。「新時代の旗手」というタイトルだ。

Googleの話から、組織論、リーダー論、そして震災復興の話まで12ページを使って取り上げていただいている。

対談は記事になることなどすっかり忘れるほど楽しいもので、予定されていた時間はあっという間に過ぎ、対談後の食事のときも編集者の方がずっと録音をされていたほどだった。

取り留めもない話も多かったので、あんなので記事になるのかと思っていたが、見事にわかりやすくまとめていらっしゃる。また、写真が素晴らしい。

島地さんは、雑誌は写真が良くないといけないというのを持論にされていらっしゃり、このマグナカルタも表紙に続く数ページは立木義浩さん撮影による女性ヌード。私の対談記事でもプロ写真家による写真が使われている。

創刊号の内容は以下のとおり。

マグナカルタ
人を統べる者が持つべきものとは――
【特集・人間の器】

中西輝政
劣化列島――戦略なき改革の迷走

浜矩子
賢者の知恵、愚者の教訓

御厨貴
ニュース映像でとらえる宰相の器

磯田道史
江戸の古文書を深く読み解く

堤尭
昭和史の真実

町山智浩
日本ではなぜハリウッド映画がウケないのか?

川村二郎
天声人語を添削する

松本基弘
ドラマ『相棒』を作った男

田所昌幸 「大きな物語」を失った日本人の不機嫌

瀬戸内寂聴/小泉武夫/中谷巌/福原義春/南伸坊 他

大人が読むに値する雑誌というのが少なくなってきたが、間違いなく本誌はその少ない雑誌の1つに加わるものだ。

全286ページで税込980円。季刊(クオータリー)。買うべし。

2012年12月19日水曜日

東電帝国―その失敗の本質

出版社(文藝春秋)より昨年すでに献本いただいたいたにもかかわらず、やっと今になって読んだのが、この本、「東電帝国―その失敗の本質」だ。

読んでみて、あまりにも自分が無知であったことに情けなくなった。

私は資源工学科というちょっと珍しい学科を出た。

私が在学当時でも同じような学科を持つ大学は全国でも10も無かったのではないだろうか。今は学部名も学科名も変わってしまったようだが、当時はエネルギーや材料資源の探査から開発、加工、それに付随する安全工学までを網羅していた学科だった。

このような学科だったので、卒業後の進路としても石油開発会社や資源採掘を行う会社が多く、その中に動力炉核燃料開発事業団(動燃)も含まれていた。現在の日本原子力研究開発機構だ。同じ研究室で1つ上の院生の先輩が動燃に入り、人形峠だったか、東濃だったかの事業所に配属なったのを覚えている。

私の同期にも動燃から内定が出ていたのが1人いたのだが、彼はしばらくして辞退してしまった。直接理由を聞く機会は無かったのだが、噂では当時ベストセラーになっていた広瀬隆氏の「危険な話」を読んで気が変わったと言われていた。

危険な話 チェルノブイリと日本の運命
危険な話 チェルノブイリと日本の運命

私が小学生のころは、中国が核実験を行うたびに、放射能汚染された雲が日本にやってきて、放射能の雨が降るとか言われていたりしたころだった。今日は外に出ちゃだめよと母親に言われたりした。また、今よりも広島や長崎の原爆のことを取り上げた映画やドラマも多かった。

そんな環境の中で育った私だったので、学科にあった原子力研究をやっている研究室にも、あまり近づかないようにしていた。この「危険な話」が出たときは、すぐに読んだ。

広瀬隆氏はこの本より前に「ジョン・ウェインはなぜ死んだか」という本も出している。

どちらも原発へ警鐘を鳴らすものだ。後者はハリウッドスターが晩年癌で亡くなるのだが、それがネバダ州での核実験の影響を受けたためであることをデータを元に指摘したものである。当時は戦慄を覚えながら読んだのだが、引用されているデータはその解釈も含め、間違いがあるのではないかということが後に指摘されている。

同じ頃、DAYS JAPANという雑誌が講談社から出版された。私が今でも所有して創刊号を見ると、広瀬隆氏と広河隆一氏による「四番目の恐怖」と題する記事が掲載されているのがわかる。これは、ソ連(当時)のチェルノブイリ、米国スリーマイル、英国ウィンズケール、そして日本の青森県六ヶ所村における原子力の危険を訴えるものであった。

このように、1980年代から1990年代にかけて、原発への不安を訴える情報はそこかしこに見られた。

それがいつからだろう。危険なものではあるかもしれないが、日本経済の発展には必要なものだと思わされるようになったのは。人間により制御可能なものであると信じるようになったのは。

そのような巧みな宣伝を行ったのが東電であり9電力会社だ。

この「東電帝国―その失敗の本質」では、日本のエネルギー政策の変遷とどのようにして9電体制が生まれたかを紐解く。また、唯一の被爆国でありながら、原子力発電を実現するに至った経緯を解説する。

自分が無知であったことを恥じると書いたが、私は、あの正力松太郎氏が原子力発電の父と呼ばれるような存在(原子力委員会初代委員長)であることさえ知らなかった。

著者の意図とは異なるかもしれないが、この本から私は日本での安定したエネルギー供給を実現する野望に燃えた人物たちのドラマを感じた。歴史を振り返ると、犯罪に近いと言える行為や、とてもフェアとは言えないような形で権利をもぎ取った人たちが見えてくる。だが、それも私利私欲のためだけでなく、日本の将来のためを考えての行動と思えるものが多くある。

この本で紹介される過去の東電の幹部たちは皆曲者ぞろいだ。だが、自社のためだけでない大志がそこからは垣間見れる。それは自社が日本経済にエネルギーを供給しているのだという誇りかもしれない。

過去の幹部たちのエピソードの紹介のたびに、著者も書いているのが、現在の東電にはその気概さえ見受けられないところだ。過去を礼賛するのではない。クリーンな企業運営でもない。隠蔽体質が無かったわけでもない。だが、いくつかの失敗があっても、当時の幹部やもしくは管理職たちが、プライドを持って事にあたった様子が紹介され、現在の東電にはその片鱗すら見られないと綴られる。

現在も福島原発事故の復旧に懸命にあたっているのも東電社員やそのグループ会社社員、下請け会社社員である。彼らこそはヒーローだ。だが、それを支えなければいけない東電という会社はどうなんだろう。そんなことを強く感じさせる一冊だ。

現在の東電や福島原発事故の原因などを知りたいとすると、本書の内容はちょっとがっかりするかもしれない。東京電力社史ではないかというレビューも見たが、良くも悪くも日本の生き死にさえ左右させかねない大企業の沿革を政治史とあわせて紹介しているこの本は貴重だ。

考えてみると、私は原発を斜め横ぐらいのところに感じながら生きてきているのかもしれない。生まれた年に東海村の原発が日本第一号の原発として運営開始され、中学時代にスリーマイル島事故が起き、大学時代にチェルノブイリ事故が起きた。そして今、福島原発事故だ。来年は年男、そんなときに原発の再稼働を進める自民党が与党に復帰。

直接に関わることはないと思うが、もはや他人ごとではなくなった。もう見ないふりは止めよう。

東電帝国―その失敗の本質 (文春新書)
志村 嘉一郎

416660810X

関連商品
ルポ東京電力 原発危機1カ月 (朝日新書)
福島原発の真実 (平凡社新書)
ドキュメント東京電力―福島原発誕生の内幕 (文春文庫)
日本中枢の崩壊
ディアスポラ by G-Tools

2012年12月18日火曜日

サムスンの決定はなぜ世界一速いのか

今から7〜8年前だったと思う。当時のソニー会長の出井伸之氏が報道ステーションでのインタビューで「サムスンから学ぶことは何もなかった」と語っていた。WEGAという平面ブラウン管技術を持つがあまり、薄型液晶への投資が遅れ、サムスンと提携したことを振り返っての発言だったと思う。

技術面では確かにその通りだったのかもしれない。しかし、きっとソニーはほかに学ぶことがあったのだと思う。その後のサムスンの躍進のヒントがそこにあったはずだ。

サムスンの決定はなぜ世界一速いのか」はサムスンに電子常務として10年勤務した経験を持つ著者が書いた世界首位を走り続けるサムスンの秘密だ。

サムスンや韓国企業は日本ではまだあまり評価されていないように感じるし、下手をすると、褒めた人間が売国奴扱いされかねない。だが、ここまで成長していることは紛れもない事実であり、そこから生ぶことは多いはずだ。本書が真実を語っているかどうかはわからないし、書かれていない恥部もあるのかもしれない。だが、参考できるところはしたら良い。

と少し冷静に書いてみたものの、実は本書で書かれていることは私が常日頃考え、そして発信している内容と重なるところが多い。

本書のタイトルになっているように、著者はサムスンの成長の秘密はその意思決定の速さにあると言う。

日本では「石橋を叩いて渡る」慎重さが尊ばれる風潮がありますが、いまはそれが許される時代ではありません。韓国の人たちは、腐っている橋でも渡り、渡り終えたあとにはその橋を壊してしまうような感覚を持っています。

また、韓国の格言には「始めたら半分終わったも同じ」というものがあります。
日本では「百里の道を行くのも九十九里をもって半分とせよ」という格言があるのですから、発想は正反対です。
どちらの言葉にも深い意味はありますが、“とにかく始めることが大切”という韓国人の発想のほうが、現在のトーナメント戦に向いているのは間違いありません。

“とにかく始めることが大切”というのは、Facebookのマーク・ザッカーバーグが言う「完璧を目指すよりも、まず終わらせろ」とも通ずるところがある。完璧なことよりも、迅速に動くこと。アジリティ(Agility)、リーン(Lean)などの今のキーワードも思い浮かぶ。

日本の事例主義との違いについても本書は次のように紹介する。

どこのライバル店もまだこの商品を扱ってはいない。あるいは他の国では売れているけれどもこの国ではまだどこも扱っていない。
そういうときにこそ、その商品でビジネスを展開する決断をします。

誰もやっていないからこそ、自分がやる―。

実際はチャンスといえることではなくても、すぐにチャンスだと思い込んでしまうほど、未開拓分野の発見を重視しています。そして、そこに進出したことで失敗しても、どうしてダメだったのかという反省をすることも基本的にはありません。そうやって過去を振り返るのではなく、“前向きに次を考える”という発想が強いからです。

ある日本企業の方とお話させていただいたときに、やたらと先行事例に拘ることに違和感を覚えたことがある。最初は他社がまだやっていないのだったら、日経一面を飾れるかもぐらいの前向きな話かと思ったら、社内を説得するのに、他社の事例があると助かるという。あまりの意識の差に脱力したのを覚えている。日本企業同士、仲良く横を見て進んでいたら、世界では多くの企業が全く異なるスピード感で動いていた。そんな感じなところもあるのではないだろうか。

ほかにもいくつも刺激的な言葉が続く。
今日と明日とでは何もかも違うという考え方をするのが韓国人ですが、日本人の発想はそれとは逆です。
明日も明後日も、今日と変わらないでほしい。

「静かに暮らしたい」という名言を残されたのは、私の一番最初の会社の尊敬する先輩だ。そのときは、彼は特定の管理職を指して、そのように言ったのだが、今やこれが社会に蔓延してしまっているのか。

仕事の進め方についても、私の考えと共通する部分が多い。私は何かを伝えようとしたときに、伝えたかではなく、伝わったかで考えるようにする。同じと思われるかもしれないが、相手にそれが伝わらなければ、伝えたという行為は自己満足でしかありえない。本書では、IT活用としての「見える化」と「見せる化」という言葉でそれを説明している。

「見える化」というのは、必要な情報をいつでも見えるようにしておくことです。一方の「見せる化」は、その情報が、相手にとって有益なものになるように加工することです。
たとえば、「見える化」では、株価に関するデータを提示できる限り羅列しておくようなことがあります。いつでもそのデータを見られるのは便利ですが、そのデータから有意義な情報を受け取れるかはその人次第です。そこで、その株価のデータを折れ線グラフにしたうえ、複数のデータの関連性をわかりやすく視覚化します。それが「見せる化」です。

この例くらいのことはやっていると思うかもしれないが、意外とやれていないものだ。データをどのように活用するかによって、決定は大きく異る。裸のデータを用意することは大事だが、あることを進めたいと思うならば、そのドライブする側の人間が加工し、その判断材料となる状態にまでしておくことが意思決定を速めることとなる。

日本企業が陥りがちな「過剰品質」についても本書では言及している。

実は、私は日本品質について話すことにはちょっとトラウマがある。以前、MITメディアラボ副所長の石井裕教授と対談(石井裕×及川卓也が語る「イノベーションの流儀」とは/リクナビNEXT[転職サイト])をさせていただいたときに、「一秒で直せるものならば、ユーザーから言われて直すので十分だ」と言ったのが近しい人も含めて不快な気分にさせてしまった。これはさすがに言い過ぎだったと今は反省しているが、前から「品質とはユーザーの期待値よりもちょっと上を目指すことだ」と思っている。必要以上の部分にまで拘ることは、職人芸としては尊敬されるが、製品の競争力につながらないことも多い。本書の中でも次のように書かれている。

メーカー側がこだわる品質が消費者の要求を超えていて、それによって価格が高くなるようであれば、それは「過剰品質」ということにもなってきます。
消費者が決めるこの消費品質は、〇か一のどちらかです。
つまり、お客さんが実際に使ってみて、アフターサービスの面も含めて、“また買いたい”と感じたなら一になり、なんらかの不平不満を持って“もう買わない”となった場合は〇になります。ここで〇になれば、設計技術や製造品質でどれだけ高いポイントを稼いでいても、その消費者にとってはその製品に対する評価は〇になるのです。
サムスンでは、“品質は顧客が決めるものであり、メーカーが勝手に決めるものではない”“顧客は購入価格によって品質を追求するものだ”という考えが徹底されています。

日本品質こそが国際標準になるべきところも多く、他国の品質基準まで下げる必要はないが、品質の定義、ここで言う、顧客から見た場合の価値という基準は忘れないようにしないといけないだろう。

サムスンが嫌い、韓国企業が嫌いという人も多いだろう。繰り返しになるが、それでも彼らが成功しているという事実を真摯に受け止め、学べるところは学ぶと良い。本書でも、もともとサムスンは松下幸之助氏の教えから学んだのではないかとの推測が書かれている。日本が失ってしまった精神を再度海外企業から学ぶというのもあるのかもしれない。

本書では、ほかにもデザインへの考え方、多品種少量生産を実現する仕組み、世界各地で成功するための現地法人のあり方、トップダウンとボトムアップからなる組織運営などなど、考えさせられるネタが満載だ。批判精神を持って読み、自分の会社ならばこうすると考えるもよし、そのまま参考にするのも良し。もし読む機会があったならば、是非じっくりと考える材料としてほしい。

最後に、これまた気に入ってしまった名言を引用して終わる。

「卵の殻を自ら割れば、生命を持った鳥になるが、他人が割れば目玉焼きにしかならない」

サムスンの決定はなぜ世界一速いのか (角川oneテーマ21)
吉川 良三

4047102822

関連商品
サムスンの戦略的マネジメント (PHPビジネス新書)
危機の経営 ~ サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション
勝つための経営 グローバル時代の日本企業生き残り戦略 (講談社現代新書)
おそるべし韓国企業 日本がサムスンに勝てない理由 (扶桑社新書)
徹底解析!!サムスン 成功の秘密 (洋泉社MOOK)
by G-Tools

追伸:「東日本大震災、その時企業は」でも書いたように、あの非常時下、日本企業はスピード感をもって意思決定を進めることができていた。今も非常事態は続いている。原発事故や次の震災ということだけではなく、グローバルな経済の中での生き残りという意味においても。是非、あの時の気持を思い出し、企業改革を進めてほしいと思う。

2012年12月15日土曜日

LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?


LINEというアプリケーションがある。もはや説明するまでも無いだろうが、スマートフォンをメインとするチャットサービスだ。

このLINE、インプレスR&Dによる「LINE利用動向調査報告書2013」(参考: インプレスR&Dのニュースリリース)によると、女性10代で73.0%、女性20代で64.8%という驚異的な普及率を誇っている。国内で3500万人のユーザーだが、世界でも7500万人ユーザーというのだから、久々の日本発で世界展開を実現したサービスだ。

私自身は今年初めからアカウントは登録している。アカウント登録当初は面白がって、スタンプ(キモカワイイ? キャラクターの絵文字みたいなもの)を送ったりしていたのだが、携帯を増やしたときに、アカウントを共有できなかったりして、すっかり萎えてしまって、今は特定の人との通信にしか使っていない。

しかし、そのユーザー数が示すように、今や押しも押されぬ大規模ソーシャルサービスに成長している。

このLINEというサービス、ネットを以前から使っていた人にはどこに独自性があるかわからなかったり、必要性を感じなかったりして、どうにも正体が掴めないのだが、「LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか? 」を読んでみて、少しわかってきた。

もう少しデータを見てみよう。LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか? に書かれている開発・運営元のNHN Japan調査データによると、男女比は男:女=51:49で、職業は会社員が38.5%であり、学生が30.3%だ。年齢別の構成を見ると、実際のユーザー像がもっとクリアになる。

12才~19才 16.5%
20才~24才 22.6%
25才~29才 21.9%
30才未満 過半数

要は、私のような中高年ではなく、圧倒的に若者に支持されているサービスなのだ。この種のサービスはインストールした後しばらく触って、その後すっかり使わなくなるということも多いのだが、LINEのアクティブユーザー率も高い。月間アクティブユーザーが86.1%というから驚きだ。週間のアクティブ率も今年5月のジャストシステムの調査では74%となっている。

LINEを一言で言うならば、キモカワイイキャラクターデザインのスタンプという機能が売りのテキストチャットかつ無料通話やソーシャル的な使い方も可能なスマホアプリということになるのだろう。実際にはブラウザやPCからも使えるのであるが、うまく携帯のスマホシフトに乗った形だ。

たかがチャットじゃないか。TwitterのDMやFacebookやGoogle+のメッセージ機能で充分。そう感じてしまうのだが、本書を読むと、ちょうどそれぞれのソーシャルサービスで対応できないようなユーザー層やコミュニケーションに刺さっているようだ。

LINEはアドレス帳によるユーザーマッチングが特徴だ。携帯のアドレス帳に登録しているような間柄だから、LINEで友達になっても良いでしょうというコンセプトを基礎とする。一方、友達の友達が友達であるという、ほかの多くのソーシャルサービスが持つ友達を永遠に広げさせていくような考えには後ろ向きだ。この絶妙の友達空間(ソーシャルグラフ)がほかサービスとの差別化要因となり、日本を中心として若者に支持されているのだろう。

私は電話が昔から嫌いで、今でも電話の前にメールかチャットで電話して良いかと確認して欲しいと思うくらいなので、アドレス帳はほとんど殻だ。待ち合わせ際の連絡もメールかチャット(メッセンジャー)で行う。電話での連絡をする可能性がある場合には、事前に番号を交換するが、それをアドレス帳に入れることはほとんど無い。Androidになってから、いろいろなサービスのコンタクトリストがアドレス帳と同期されたりした結果、エントリーはあることにはあるのだが、リアルの自分の人間関係を反映したものでは全くない。

このようなこともあり、LINEのアドレス帳によるマッチングはどうにも好きになれないのだが、多くの人には評判が良いようだ。

LINEの機能だけ見れば、Twitter、Facebook、Google+などのソーシャルサービスやSkypeやほかチャットをベースとするコミュニケーションツールと大きく変わらない。むしろ足りない面もあるくらいかもしれない。だが、この絶妙のソーシャルグラフの構成、スマホに最適化されたデザインと機能、そしてキモカワイイキャラクター。これらの組み合わせがLINEの特徴だ。LINEホームやタイムラインというFacebookのウォールやニュースフィード、Twitterのタイムラインのようなソーシャルを全面に出す機能がどこまで普及するかはこれからだが、LINEの本質が維持され続ける限りはLINEの人気は変わらないのだろう。もっとも、DeNAのcommのように類似サービスが後発でも出てくるし、以前から人気のあったカカオトークはYahoo! JAPANとの連携を発表するし、勢力図がどう変わるかはわからないが。

なお、個人的には、本書にも少し書かれていたように、マイクロソフトのチャットサービスであるメッセンジャー(MSNメッセンジャーやWindowsメッセンジャー)が本来ならば、LINEのポジションをとれたかもしれないと考えることもできる。米国発の製品にしては、面白い絵文字を登場させたり、画面全体を揺らすシェイクという遊び心満載の機能が入っていた。それでも、LINEほどの成功に結びつかなかったのは、LINEには、やはり、スマホシフトなどと絶妙にあったタイミングと勝機を機敏に捉える戦略があったためだろうか。

本書は「LINE? 聞いたことあるけど、良くわかんない」という人向け。良く使っている人でも新たな発見があるだろう。

なお、本書は著者・出版社の方から献本いただきました。ありがとうございました。

LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか? (マイナビ新書)
コグレ マサト まつもと あつし

4839944881

関連商品
LINE仕事術 (日経BPムック)
ウェブで政治を動かす! (朝日新書)
MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体
ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?
Webサービスのつくり方 ~「新しい」を生み出すための33のエッセイ (Software Design plus) by G-Tools