2009年11月16日月曜日

生命保険のカラクリ

文藝春秋さんから贈呈いただいた本。米国やら広島やらに出張に行っていた関係で書評を書くのが遅くなってしまったが、この本は面白い。文藝春秋さん、ありがとうございました。

生命保険のカラクリ (文春新書)

4166607235

関連商品
「夜のオンナ」の経済白書 ――世界同時不況と「夜のビジネス」 (角川oneテーマ21)
希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学
空気を読むな、本を読め。 小飼弾の頭が強くなる読書法 (East Press Business)
裸でも生きる2 Keep Walking私は歩き続ける (講談社BIZ)
週末起業サバイバル (ちくま新書 811)
by G-Tools

ちょうどこの季節、年末調整がある。富豪でもない一般サラリーマンの方ならば、この時期の年末調整で生命保険料の控除申請を行うことになるので、自分の入っている生命保険を改めて見直す人も多いだろう。ただ、見直すとは言っても、この機会に、解約やオプションへの追加加入までを検討する人はまれだろう。ただ、「こんなに入っていたのか」と思ったりするだけのことが多いのではないか。

かくいう私もその1人だ。会社関係で入ったものから、コンサルを受けて契約をしたものまで、いくつかの保険に入っている。だが、自分でどのような保険なのかをきちんと説明できない。空で言えないのは仕方ないにしても、書類を前にしても説明できる自信がない。本書に書かれているように、生命保険というのは住宅についで、おそらく人生で2番目に高い買い物である(1千万円を超えることも珍しくない)にも関わらず。

保険を選ぶ際にキーとなるのは、GNPだ。Gは義理、Nは人情、そしてPはプレゼント。最近でもプレゼント攻撃があるのかどうか知らないが、新卒のころ私の部署の人間を片っ端から口説いていた保険セールスレディはまさにこのパターンだった。私は生命保険なんて入る気がまったくなかったので、プレゼントだけ貰いまくって、結局入らなかったら、逆ギレされてしまった。後から、あのプレゼント購入費は営業員が身銭を切って購入していたことを知り、悪いことをしたと思ったものだ。

本書では、生命保険の本質をわかりやすく解説する。日本においては公的援助が手厚くあるため、多くの場合、医療保障はさほど必要ないこと。また、保険と貯蓄というのは、現在のような低金利時代では分けて考えるべきであり、貯蓄を追求するならば、保険に頼らないほうが良い。この2点を知っているだけでも、生命保険に対する見方が変わるだろう。

保険という商品が分かりにくいものであり、複数の商品間での比較対象が難しい。こういうものだと思って諦めてしまっていた。面倒臭いことを繰り返すのは嫌だから、一度入った保険は見直さない。健康の時に入った保険はそのまま契約し続けるのが良いとも言われていた。だが、これがすべて保険会社側の策略だとしたら? 商品を必要以上にわかりにくくし、比較検討を困難にし、契約の見直し/解除が損なように思わせていたのだとしたら? このように複雑怪奇なものにしていたほうが保険会社が儲かるようになっているのだ。

規制緩和が行われて、やっと今になってこの状況に変化が見られているようだ。外資やネット生保などによる新しい展開。この本はそのネット生保(ライフネット生命保険)の副社長が書いたものだ。彼も本文やあとがきに書いているように、この本で書かれていることはある一面からのものに過ぎない。伝統的な大手生保各社にはそれぞれ言い分もあるだろう。だが、それでも、複雑な生保をごく簡単な評価軸に落として考えることができるように紐解いた本書の役割は大きい。

Amazonなどでの評価も高いようだが、それも納得できる。

生命保険に入っている人、もしくは入ろうとしている人は必読の本と言っても良い。

関心しているだけではいけないので、私も自分の保険を見直してみよう。担当営業の方、ご覚悟ください ;-)