2009年9月13日日曜日

仕事するのにオフィスはいらない

仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)
仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)

本書は副題の「ノマドワーキングのすすめ」のほうが私にはぴったりとくる。ノマドとはNomad(遊牧民、放浪者)であり、定住する場所を持たず、自由に移動する人々のこと。

コンピュータネットワークの世界でも、ノマディックコンピューティングという言葉がある。これはユビキタスコンピューティングと近い概念であるが、ユビキタスコンピューティングがデバイスやセンサーなどで自律的に協調動作するのに対して、ノマディックコンピューティングはもっとネットワーク側を中心とした考えだ。移動体通信と言っても良い。時と場所と手段、そしてデバイスを選ばずに、通信可能にすること。それがノマディックコンピューティングだ。

この「ノマド」の考えを引き継ぐノマドワーキングは言うならば「どこでもお仕事」。時と場所を選ばずに、どこでも仕事をするそのようなワーキングスタイルだ。こう書くと、四六時中仕事に縛られているのは嫌だと思うかもしれない。デジタル社会の弊害だと。だが、違う。ここで言う、「どこでも」というのはある会社に縛られているのではなく、それこそ遊牧民のように、自ら最も適切と思うところに所属し、そこで自分の価値観に基づいて仕事をするスタイルのことだ。

このような考えは以前から私も持っていた。このブログでも、「看板を背負わない生き方と看板を彩る生き方」というエントリで個人としての生き方を考えた。また、「ICという生き方」の中では会社組織に所属しないという生き方を紹介した。

そう。ノマドワーキングは自分主体の生き方を取り戻す大事な考え方なのだ。

本書では、このノマドワーキングについて、ノマドワーキング概要(「ノマドワーキングのすすめ」)とノマドワーキングの方法論(「アテンションコントロール」、「情報コントロール」、「コラボレーション」)、ノマドワーキングで使えるツール(「クラウドを使いこなす」)、そしてノマドワーキングが象徴する社会について(「ノマドライフスタイルの時代へ」)に分けて解説している。

1人で仕事する場合、どうしても他人の目がない分、自分をコントロールすることが課題となる。そこで本書では、どうやって集中力/注意力を維持するか、どうやって洪水状態にある情報と付き合うか、どうやって他人と協調するかをそれぞれの章を設けて解説している。ここで書かれているいくつかの方法はたとえ、一般企業でデスクワークしている場合でも非常に役立つだろう。

「クラウドを使いこなす」は実際のツールの解説。同じものをそのまま私が使うことは無いが、ほかの人がどのようなツールを選択し、どのように使いこなすかを知ることができ、参考になる。残念ながら、ブラウザはFirefoxをお使いのようだが、しばらくしたら私が使っているGoogle Chromeで同じことができるようになるだろう(すでに一部はUserScriptsなどで可能だ)。

本書は、著者の佐々木さんの前著、「ひと月15万字書く私の方法」や「3時間で「専門家」になる私の方法」などと合わせて読むことをお勧めする。

今までも主体を個人に戻すことは提唱されてきた。だが、今は社会がそれを要求し、仕組みがそれを支えつつある。あとは個人が変わるだけだ。本書はそのための良いきっかけになるだろう。

最後になるが、本書は佐々木さんから贈呈いただいたものだ。佐々木さん、毎回、本当にありがとうございます。

仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)

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