2009年6月20日土曜日

ひと月15万字書く私の方法

佐々木俊尚さんからの贈呈いただいた。いつもありがとうございます。

いただいておいて辛口のコメントもしずらいのだが、この本は評価が分かれるだろう。実際、Amazonでのレビューも分かれている。

佐々木さんは「3時間で「専門家」になる私の方法」という本を2年前に出されいる。そこでは彼の卓越した情報収集手法が紹介されていた。本書はその集めた情報をどのように加工し文書にするかを解説したものだ。

情報収集の後の工程を情報集約、構造化、物語(化)という3つに分類し、それぞれを紹介する。佐々木さんは、各工程での手法を「フレームワーク」という言葉を使っているが、コンサル嫌いな私としては避けたい言葉の1つだ。本書の内容とは関係ないが。

この工程の説明は明快であり具体的なのだが、問題はITを駆使するあまり、ツールの説明が多くなり、そのツールを使っていない場合にはどのように作業すれば良いかを頭の中で考えなければいけないことだ。ベストなのは、佐々木さんの手法をそのまま取り入れることにし、すでにツールが手元にある状態で読むことだが、そのような読者はほとんどいないだろう。

紹介されているツールは、EvernotedeliciousMind42WZ EDITOR、ドキュメントスキャナの5つだ。このうち購入が必須なのが、WZ EDITORとドキュメントスキャナであり、ほかは無料か無料版があるものだ。WZ EDITORもオンライン版ならば、7千円代で買えるので、それほど高価というほどではないのだが、購入しなければいけない、または使い慣れていないツールを前提に話が進められると、途中でついていけなくなってしまうところが多いのも事実だ。

その結果、ページ数をそれなりに割いているツールの説明を読んでも文字を追うだけになってしまい、肝心の何をやるためにこのツールを使っているかが頭に入ってこない。

おそらく、この解説は単行本という形式で行うものではなく、書籍ならば、写真やスクリーンショットを満載したムックで行うほうが良いだろうし、もっというとセミナーなどでデモを交えて行うほうが良い。それをDVD化したりしたほうがわかりやすいだろう。問題はそこまでのコストをかけてそれを回収できるかだろう。セミナーならば受講者ありきで開始すれば良いのだが、多くの人にノウハウを分けるという目的は達成できない。

さらには、これら5つのツールが統合されていないために、データのインポートやエクスポートに手作業が多く入る。ここまで書いて考えたのだが、佐々木さんはどっかのベンチャーと共同で統合ツールを開発してしまったら良いのではないだろうか。WZ EDITOR相当のアウトラインプロセッサだけはローカルアプリケーションになるかもしれないが、あとはオンラインのアプリケーションにできるはずだ。マインドマップとアウトラインプロセッサはもともと相性が良いので、そこは1つのアプリケーションになっていても良いはずだし、それ以外はもともとオンラインのアプリケーションなので、ウェブサービスがあればそれと連携し、無かったら最悪ウェブページをスクレイピングして統合してしまえば良い。問題はどれほど需要があるかだが、私はあったら使うだろう。額にもよるが有料でも魅力的だとは思う。

ということで、本書は内容は良いのだが、ツールの説明が入るところで、目的と手段が読みながら混乱してしまう可能性があり、さらに手段であるツールの説明が多すぎるところで、読者がどこまでそこを頭で分離できるか、もしくはツールの使用を前提として読めるかによって評価は変わるだろう。

ちなみに、Googleドキュメントについて以下の説明があったが、これはちょっと違う。
GoogleドキュメントはWord、PowerPoint、Excel、PDFの形式を扱うことができるうえ、オンラインのサービスなので複数のパソコンからアクセスできることもあり、かなり利便性が高いのですが、残念ながらこのサービスにもタグの概念がありません。集めたデータはフォルダに分けて収めなければなりません。Googleドキュメントは当初はタグを使った分類も可能だったのですが、バージョンアップするうちにタグは廃止され、改悪されてしまったのが非常に残念です。
タグが廃止され、フォルダになったのは事実なのだが、実は中身は一緒だ。データは複数のフォルダに収めることができるので、実質タグとして使うことができる。

ひと月15万字書く私の方法
ひと月15万字書く私の方法佐々木 俊尚

おすすめ平均
stars確かに「字」は書いてあったが、「文章」ではなかった。
starsついに出た! Web時代の「知的生産の方法」の最高峰
stars少なくとも買う価値は無い

Amazonで詳しく見る
by G-Tools