悪いがしばらく誰も話しかけないで欲しい。頭の中に充満したCostelloの声を消したくない。
生々しいというのはこういうことを言うのだろう。いや、「生々しい」という言葉が適切とも思わない。だが、会場に響き渡るCostelloの声、そしてギターの音は時に繊細であり、時に荒々しく、感情豊かに聴く者に迫る。
Costelloが来るというだけで喜んでチケットを買ったのだが、会場に入ってステージを見るまではソロだということを知らなかった。いったいどれだけマヌケなのか。ソロの彼を聴くのはもちろん初めてだが、バンドに負けずとも劣らない迫力と多彩な伴奏をギター1つでこなしてみせる。決して超一流というわけではないのだが、彼のギターがまた魅力的。ボーカルをこれ以上ないくらいに引き立てる。
途中、肉声で歌ったが、なんて声が通るのだろう。年齢をまったく感じさせない。また、会場からのリクエスト(「Monkey to Man」)に「Why not?」と気軽に応える。歌を聴かせる、楽しんでもらいたいという真のシンガーの姿を見た気がする。
「Here's the song I hate」と紹介して歌い出した「Everyday I write the book」はぶっきらぼうな演奏ながら聞き入ってしまったし、多分本人は歌いたくなかったのではないかと思う「Smile」と「She」のメドレーではうかつにも涙を流しそうになる。
アンコールは果てしなく続くかと夢見るほど多くしてくれたが、Nick Loweの曲が続いたときには24年前にタイムスリップしてしまった。新宿厚生年金ホールだったと思うが、その時のライブはNick Loweがギターで参加していた。最後は「Pump it Up」でノックアウト。
ごめん。しばらく僕には話しかけないで欲しい。
* 追加: http://www.elviscostello.info/wiki/index.php/Concert_2011-03-01_Tokyo にセットリストがあった。