前回の投稿から、かなり間が空いてしまった。
ペースは落ちたものの、いろいろ本は読んでいる。
本書は地元の図書館に予約していたのだが、人気があったのか、ついこの間やっと借りることができた。
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
城 繁幸
本書では、年功序列、終身雇用を「昭和的価値観」と位置づける。このブログでも何回か書いているが、私は「会社によって養われている」という考えが嫌いであり、「会社の看板」で自分の実力を勘違いするようなことは常に避けている。本書は私の考えの多くをそのまま代弁してくれているようなものであり、是非、これから社会に出ようという学生に読んで欲しいと考える。
私は、大学を卒業してから現在の会社が3社目になるが、すべて外資系。しかも、IT関係だったこともあって、最初の会社である日本DECという会社に入ったときから、終身雇用の恩恵に与れるとは考えたこともなかった。
当時のDECは世界第2位のコンピューターメーカーで、IBMを射程圏内に捕らえていた(と考えられていた)こともあって、社内はかなり勢いがあった。年配の方も少なくなく、会社が家族を大事にするカルチャーを持っていたこともあって、同期には定年まで同じ会社に勤め続けることを考えた連中もいたのかもしれない。しかし、なぜか私は冷めていた。それは、終身雇用と同時に年功序列が、少なくとも日本のDECでは採用されていたからだ。本書で紹介されているほかの日本企業に比べれば、日本DECの年功序列はそれほど練られたものではなかったが、それでも新卒で生意気な社員のやる気をそぐだけのものではあった。また、なぜか日本だけ「アソシエイト」で始まるジョブタイトル(すなわち、それだけ他国に比べるとスタート地点が低いということだ)など、不満が多く、ここに生涯いることはないのではないかと漠然と思っていた。念のため、書いておくが、日本DECはそれでも恵まれていた。若い連中にかなりの権限委譲が図られており、私も20代後半で重要なプロジェクトのリーダーを任せられるようにもなった。その意味では感謝している。
DECが傾きはじめ、早期退職プログラムなどが年中行事になると、多くの人間が終身雇用に疑問を抱き始めた。日本DECの早期退職プログラムは、私が辞めたあとはさすがに工夫されるようになったが、当初はあまり制限も設けていなかったため、優秀な若い人間も多く辞めていった。「優秀な人間から辞めていった」とは言わない。優秀な人間の中にも、「この会社をどうにか自分の力で復活させたい」と思う連中も多くいたのは事実だ。私は優秀ではないが、天邪鬼だったこともあって、結局、早期退職プログラムには応募していない。早期退職プログラムの合間を縫って退職してしまったような形になっている(脱線するが、かっこつけないで、早期退職プログラムに応募すればよかったと思う今日この頃 ;-))
で、その後2社に在籍しているが、どちらでも終身雇用されることを考えたことはない。会社と自分の関係は契約だと思っており、その契約内容によってはいつでも双方が契約終了を申し出れるくらいに考えている。幸いなことに、2社とも年功序列という考えはまったくない。自分よりも年上の部下を持ったこともあるし、自分より年下の上司に仕えたこともある。また、管理職ではないキャリアパスが設けられており、スペシャリスト(Individual Conributorというのが正しい)としてのキャリアも認められている。
このように会社との関係を契約と割り切る代わり、会社に多くは期待できない。契約の範囲外のものに関してはまったく期待しないほうが良い。
付き合いのあった日本企業の中には、リストラをしているにもかかわらず、(ほぼ?)専属の病院や料亭まで持っているようなところもあった。福利厚生が充実していると言えば言えるのかもしれないが、何かちょっと違うように思う。語弊があるかもしれないが、こんな環境にいればスポイルされてしまい、ほかの会社には移れなくなることが容易に想像できる。
私の社会人人生で感じた伝統的な日本企業の経営スタイル(終身雇用+年功序列+労使協調)に対する考えを大学生などに話すことも多かったが、これからは本書を読むことをまず勧めることにしよう。