本書も「新書365冊」で推奨されていた本の一冊。少し前の新書だが、若年層に対するITの影響の現状が解説されている。
ネット王子とケータイ姫―悲劇を防ぐための知恵
女の子はケータイに、男の子はネットに依存する傾向があるようだが、その理由を本書では「少女たちは自己への不安から関係性を確認するためにケータイに走り、少年たちは世界に特権的な存在として君臨できない失望を埋めるためにネットに走る」と分析している。本書が書かれたのが2004年なので、その傾向が今も続いているのか興味がある。個人的な感触では、少年(男子学生)もケータイに走る傾向が増えているように思う(まったくの個人的な感覚であり、なんらデータはない)が、それは少年も他者との関係性の確認が必要となってきたのだろうか。
本書では、さらにメディアにおける報道の偏向(「学者とメディアを疑え!」)、少年/少女のIT世界との関係(「電脳世界の恐るべき子どもたち」)、教育現場だけでなく業界などをあげての対策(「学校が教えられないネット世界」)が紹介される。取材に基づいた実態が明らかにされており、IT業界にいる身としては興味深い。低年齢層というのは、IT業界からすると、「しばらくすると大人になる世代」ということであまり注目も去れず、その世代に向けたサービスや製品というのが必ずしも充実していないように思う。しかし、単にビジネスとしての観点からだけでない対応を考える必要があるように思う。以前、小学校の情報教育の現場を見たことがあったが、果たしてあれが貴重な小学校の授業の一コマとして使われるに足るものであったかは疑問だった(詳しいことはまた別途)。
ところで、メディアが自分の有利なような情報しか流さなくなる話をサブリミナル効果の話でいつも出てくるコカコーラ実験の話を例にとって解説されている(有名なコカコーラ実験は真実ではなかったという話)。ゲーム脳のケースもそうだったようだ。この場合はそうとばかりは言えないが、このような状況を「カクテルパーティ効果(騒がしいパーティでも好きな人の声や自分に関係のある内容は聞こえ、それ以外の声は騒音にしか聞こえないという現象)」と社会心理学では言うらしい。なるほど。