そんなときに本屋で「2008年総合ランキングトップ50~あなたが選んだ今年最良の本は」と表紙に書かれていたダ・ヴィンチ 2009年 01月号を衝動買いした。
総合ランキングだけでなく、分野ごとのランキングも出ているが、知らない本がいっぱい。まぁ、ダ・ヴィンチの読者とは人種が違う気もするので、あまり気にはならないが、それでも自分が普段読んでいる本はちょっと偏っている気がする。新書やビジネス書が多すぎる。小説は好きだったつもりだけど、改めて考えてみると、最近あまり読んでいない。
別にほかの人と同じ本を読まなければいけない理由はないが、紹介されていた本のいくつかは興味を持ったので、年末年始の休暇にでも読んでみようかと考えている。もちろん、その前に買っただけでまだ読んでいない10冊を超える本をどうにかしなければいけないのだが。
ところで、このダ・ヴィンチの中に「復活 百人書評」というコーナーがあって、読者からの書評が紹介されている。今月号では「西の魔女が死んだ」が取り上げられた。若い人からの声が多いが、結構ベタボメ。児童書と思って馬鹿にしちゃいけないという声もある。そんなに褒められているなら、読んでみようか。
確か家にもあったはずと探してみると、この間、ブックオフに持っていこうと思って、思いとどまった一冊だった。捨てずに良かった。
西の魔女が死んだ (新潮文庫)
身も蓋もない言い方をすると、良質の説教。自然への回帰や軟らかな死生観などを交えて、癒されながらも、いろいろと考えさせられるものとなっている。説教臭さはあまり無い。
私は劣等感を引きずるほうで、またその劣等感をバネに成長するのを良しとしているのだが、最近、そういうのに疲れてきてしまっていた。次の言葉が胸に響く。隣人を疑う主人公のまいを魔女が諌める場面だ。
「<略> まいの言うことが正しいかもしれない。そうでないかもしれない。でも、大事なことは、今更究明しても取り返しようもない事実ではなくて、いま、現在のまいの心が、疑惑とか憎悪とかいったものでしはいされつつあるということなのです」そう。マイナスエネルギーは心も体も不必要に疲弊させる。
「わたしは……真相が究明できたときに初めて、この疑惑や憎悪から解放されると思うわ」
まいは言い返した。
「そうでしょうか。私はまた新しい恨みや憎悪に支配されるだけだと思いますけれど」
おばあちゃんはまいの手を優しくなでた。
「そういうエネルギーの動きは、ひどく人を疲れさせると思いませんか?」
もうひとつの癒される会話が以下の部分だ。まいが過去の自分を思い出し、そこから逃げた自分を悔いているときの、魔女との会話だ。
「わたし、やっぱり弱かったと思う。一匹狼で突っ張る強さを養うか、群れで生きる楽さを選ぶか……」他人だけでなく、自分さえも許す限りない優しさは、弱さではなく、強さの上にこそ持てるものと教えてくれる小説だ。
「その時々で決めたらどうですか。自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」
この作品の映画の予告編をYouTubeで見た。映画も見に行けば良かった。清里にあるロケセットはまだ見れるみたいだ。年末年始にちょっと足を伸ばしてみようか。その前に、まずDVDで映画のほうを見ないと(年末年始って、そんなに休日あったっけ? (^^;;;)。
西の魔女が死んだ 特別版 【初回限定生産2枚組】 [DVD]