2008年12月7日日曜日

知っておきたいわが家の宗教

書店で平積みにされていたので購入。

結構、宗教には興味あって(でも、勧誘は結構です)、いろいろと本を読んでいるにも関わらず、基本的なことを知らなかったりする。学生時代にいかに日本史をサボっていたかがバレるほど。

知っておきたいわが家の宗教 (角川ソフィア文庫)
知っておきたいわが家の宗教 (角川ソフィア文庫)

以前読んだ「日本の10大新宗教」でも指摘されていたが、日本人は「無宗教」ではない。年中行事に宗教は根付いているし、不祝儀の際にはなんらかの宗教を拠にする。神仏習合は日本人独自の信仰形態であると著者は説明する。ちょっと長いが、第一章の一部を引用しよう。
 日本の宗教の二大潮流といえば、言うまでもなく神道と仏教である。神道は神社を中心とする信仰で、太古の昔から固有の宗教として日本人の精神のバックボーンとなってきた。そして仏教は六世紀の前半(五三八)に朝鮮半島を経由して大陸から伝えられた。
 仏教が伝来したとき、神道との間で争いが生じたが、やがた仏教が根付くにしたがって両者は互いに歩み寄るようになった。そして、平安時代の中ごろから神仏習合、つまり、神と仏をともに仰ぐという日本独自の信仰が定着していったのである。江戸時代までは神社の境内に三重塔や阿弥陀堂、観音堂などが建つなど、まさに仏教と神道は渾然とした状態で信仰されていた。
 このような信仰形態は罰末まで続いたが、明治維新を迎えて政府が神道が国教と定めると、神と仏を明確に区別する必要が出てきた。維新政府は神仏分離政策を強化して、仏教と神道の引き離しを図ったのである。その結果、神社の境内にあった阿弥陀堂などの仏教的施設は撤去され、神社は神社らしく、寺院は寺院らしいすがたに整備された。
 しかし、一〇〇〇年以上にわたって培ってきた神仏習合の政策によって形式的に神仏は分離したが、日本人の心の中には神と仏が同居し続けた。今も仏壇と神棚とをまつる家庭は少なくない。また、お祝い事は神社で、葬儀などの不祝儀はお寺で行うというのが通り相場だ。神仏習合はまさに日本人の精神の中に深く刻まれているのである。
 無宗教であるとか、信仰心がないといわれる日本人。しかし、その実態は神と仏の両方に守られるという豊かな信仰形態を実践してきたということができるのではないだろうか。
まさにそのとおりだと思う。ここにさらにキリスト教の影響もあるが、信者ではない一般人へのキリスト教の影響は主にイベントのものにとどまっているように見える。その意味では、日本はやはり神道と仏教の国だ。本書の中で仏教に割かれるページ数が多いのも理解できる。
目次
第一章 わが家の宗教の基礎知識
◆人口を大きく上回る日本の宗教人口
◆日本にはどんな宗教があるのか?
◆わが家の宗教の基本は祖先崇拝だ!
◆神仏習合―日本人独自の信仰形態
◆仏教の誕生とその広がり
◆大乗仏教と小乗仏教
◆仏教の宗派はいくつあるのか
◆檀家制度とは?
◆密教抜きには語れない日本の仏教
◆もっとも身近なわが家の宗教
◆わが家の宗教としてのキリスト教
◆わが家の宗教としての神道
第二章 仏教編
奈良時代から続く三大宗派
天台宗
◆開祖・最澄のプロフィール
◆天台宗の教え
  五時八教/最澄が主張した法華一乗思想
◆天台宗の主要経典
  根本経典の『法華経』とは
◆総本山・比叡山延暦寺
◆比叡山の分裂
真言宗
◆開祖・空海のプロフィール
◆真言宗の教え
◆真言宗の主要経典
 『十住心論』(全一〇巻)
◆総本山・高野山
浄土真宗
◆法然上人と浄土宗
  ◆浄土宗の教え
   聖道門と浄土門/念仏は何回となえるか/自力と他力
  ◆浄土宗の主要経典
    浄土三部経/『一枚起請文』
  ◆総本山・知恩院
◆浄土真宗
  開祖親鸞の生涯/親鸞以降の浄土真宗/浄土真宗中興の祖蓮如
  ◆親鸞の思想
    非僧非俗/同胞同行/悪人正機
  ◆浄土真宗の教えと主要経典
    『教行信証』/『歎異抄』
◆時宗
  開祖一遍の生涯
  ◆時宗の歴史
  ◆時宗の教え
  ◆賦算と遊行
  ◆時宗の主要経典
禅宗
◆菩薩達磨
◆達磨以降の禅宗
◆禅の教え
◆公案
◆日本の禅宗
◆臨済宗の歴史
  ◆日本臨済宗の開祖・栄西
  ◆臨済宗の教えと主要経典
◆曹洞宗
  ◆開祖・道元のプロフィール
    禅の思想に触れる/入宋/帰国/永平寺の創建
  ◆道元の思想
  ◆生死即涅槃
  ◆曹洞宗の主要経典
    『典座教訓』/日本人が書いた最高の思想書―『正法眼蔵』/坐禅の指南書―『普勧坐禅儀』
  ◆二大本山―永平寺と総持寺
    永平寺/総持寺
  ◆栄西の禅と道元の禅
◆黄檗宗
  ◆開祖・隠元のプロフィール
  ◆黄檗宗の教えと主要経典
  ◆黄檗宗独特のお経の読み方
日蓮宗
◆開祖・日蓮のプロフィール
  辻説法と法難/佐渡に流されて
◆日蓮宗の教え
  『法華経』こそ最高の教え/国家・国民一丸の信仰
◆日蓮宗の主要経典
◆日蓮宗の本尊―大曼荼羅
◆総本山―身延山久遠寺
第三章 神道とキリスト教
◆神道とは何か?
  ◆変化した神社の信仰
  ◆国家神道
  ◆戦後の宗教の崩壊
  ◆祝詞とは何か?
  ◆神道の行事―祭り
  ◆日本の神の特徴
◆キリスト教の歴史
  ◆キリスト教はいつ日本に伝えられたか?
  ◆聖書とは
  ◆唯一絶対の神とは
  ◆三位一体とは
  ◆カトリックとプロテスタントの違い
  ◆キリスト教の行事
  ◆洗礼とは何か?
第四章 実践編
◆戒名とは
◆戒名のつけ方
◆宗派によって異なる戒名
◆戒名料とは
◆位牌とは
◆年忌法要は何階営むか?
◆祥月命日と月命日
◆お盆
◆彼岸
◆葬儀のいろいろ
◆仏式の葬儀
  通夜/葬儀/お焼香の回数は宗派によって異なる/将校の順番は?
◆神道の葬儀
  神葬祭/通夜際/葬儀/玉串奉奠の仕方/神道の葬儀後の行事
◆キリスト教の葬儀
  通夜(カトリック)/通夜(プロテスタント)/葬儀(カトリック)/葬儀(プロテスタント)/キリスト教の葬儀後の行事
◆なぜ寺には墓地があるのか?
◆お墓はいつごろから普及したのか?
◆墓地を求めるには?
◆御香典、玉串料、お花料
◆仏教徒になるには?
◆神道の信者になるには?
◆キリスト教の信者になるには?
◆仏式の結婚式
◆神前結婚式
◆キリスト教の結婚式
目次を見てもらえるとわかるが、第四章は大人のためのマナー本のようだし、ほかの章は子供のための入門書みたいになっている。だが、すべてにおいて、日本人が現在のような形で宗教に接するようになったかの説明をベースにされているため、単なる知識を吸収するためだけの読み物とはなっていない。

日本の宗教を改めて理解したい人&日本社会の宗教行事の歴史的背景を知りたい人にはお勧め。