2010年4月19日月曜日

アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ

この種の書籍のレビューは自分の仕事と関係が深いこともあって、なかなかやりにくい。実際に書けないことも多い。歯切れがいつもにも増して悪いと思ったら、その所為だと思って欲しい。

アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ (光文社新書)

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本書は「クラウド」という、その業界の真っ只中にいる人でさえ説明しにくく、もしかしたら単一の定義さえ無いのではないという概念をわかりやすく解説するものだ。類書は数あれど、解説の切り口は端末側においているのは面白い。このほうがそれこそ「雲をつかむような」話を自分の手元にあるデバイスと関連付けて考えられるので、理解はしやすいだろう。

クラウドのベンダーとして、グーグルとマイクロソフトが入るのは至極当たり前であるが、アップルをそれに並べて評価するところも新しい。著者いわく、課金システムとアプリケーション配信プラットフォームであるiTunesを抑えているアップルはクラウドという言葉さえ使わずに、実質的なクラウドでの勝者となる可能性を秘めていると言う。現在のiTunesの課金やアプリケーション配信がそこまで優れているかは別にして、確かにクラウド上でサービスを組み立てるに際して、課金は重要なビルディブロックだ。だからこそ、どこも「*** マーケット」を確立する。

アマゾンが入っていないのは、本書がPaaS (Platform as a Service) ベンダーを取り上げる方針をとっているため。ちなみにクラウドは、IaaS (Infrastructure as a Service)、PaaS (Platform as a Service)、SaaS (Software as a Service) に分類され、現在のアマゾンはこのうちIaaSを提供している。

切り口は面白いし、非情にわかりやすく書いているので、短時間で読める。ただ、内情がわかっているものからすると、少し事実誤認がある(それを書けないのももどかしいのだが)。自分の知らない部分でも間違っているところがないかが気になってしまう。また、ややカジュアル過ぎる気がする文体も好みが分かれるかもしれない。また、すでにクラウドなどを知っている人にも物足りない。業界外の人向きと考えた方が良い。

なお、本書は光文社からの献本だ。ありがとうございます。