2015年1月16日金曜日

そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか

本書は「そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか」というタイトルではあるのだが、別に私が「そろそろ会社辞めようと思っている」から買ったわけではない。かと言って、絶対に辞めようなんて思っていないわけでもない。というか、そもそもこの本は買った本ではない。一時、株式会社KADOKAWAの株主だったことがあるのだが、その際に株主優待として角川グループからの出版物を貰えたので、本書を選んだのだった。

そんな経緯もあったので、正直たいして期待していなかったのだが、読み始めたら、引き込まれるように読んでしまった。それくらいに読みやすい。ただ、1,500円の価値があるかどうかは読者次第か。

本書のターゲットは(表紙からはわからないかもしれないが)就活生もしくはその少し前の学生だろう。社会人1〜3年目の若者も対象になるかと思うが、少なくともそろそろリストラの対象にされそうな中高年をターゲットにはしていない。

本書が言う「一人で食べていける」とは起業し、自らが企業のオーナーになることだ。したがって、内容は利益をあげるための考え方と起業に向けてのステップだ。

序章では、年功序列や終身雇用という高度成長期を支えた日本株式会社の枠組みが崩れた現在の状況が説明される。ここで「一人で食べていく」ことの重要性が謳われる。

1章と2章では利潤をあげるビジネスシステムの肝を解説している。事業を考えたことがある人であれば知っている内容だとは思うが、もう一度リキャップしたい人やそれこそ就活生には良い内容だろう。3章が具体的に起業に向けてのステップであり、4章と5章は心構えのようなものだ。

後半になればなるほど、起業しない人にとっては直接は関係ない内容になっていくが、読みやすいので、起業に現時点で興味ない人も最後までは読んでしまって良いだろう。また、対象ではないけど間違って手にとってしまったリストラ対象の中高年も起業しなかった自分を悔やむために読んでみても良い。

本書の中心は2章と3章だが、その3章では、独立前に丁稚奉公やプロに弟子入りすることを進めている。

最近、以前話題になった以下のブログ記事を読んだが、そこで書かれている派遣社員と共通する部分も感じられる。

新卒で就職する以外の選択肢 - UEI shi3zの日記

石の上にも三年とか言って炎上した経営者の発言が数年前にあった。学ぶことのない仕事に三年もついている必要はないと思うが、類まれなる才能も突飛なアイデアも無い場合は、組織や人について働くことで、まずは社会を理解するというのは手段としては悪くない。

Amazonのレビューでは、このご時世に簡単に起業を勧めてということで厳しい評価をしているのも見受けられる。その通りだと思うが、雇われた立場だとしても、一人で食べていく場合のことを意識して働いていくことは意味があるだろう。会社としてもそのように起業家精神を持った社員を求めていくようになるだろうし、実際に一人で食べていかなければならなくなったときに生きてくるだろう。

日本は70年代から80年代を中心に機能した雇用モデルが未来永劫続くものとの幻想を抱き続けていたが、もうそれが通じなくなっていることを皆知っている。本書のようなものが多く出ることで、多様な生き方を考えるきっかけになれば良いと思う。

それにしても、タイトルはミスリードを呼ぶだろう。ちょっと惜しい。

そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか
山口揚平

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