2014年5月3日土曜日

試着室で思い出したら、 本物の恋だと思う。



書店で平積みされていたのを見て、思わずジャケ買いした本。タイトルが活かしているなと思ったら、著者の尾形真理子さんは博報堂のコピーライターらしい。

収められている短編の各タイトルは次の通り。

あなたといたい、と
ひとりで平気、を
いったりきたり。

悪い女ほど、
清楚な服がよく似合う。

可愛くならなきゃって思うのは、
ひとりぼっちじゃないってこと。

ドレスコードは、
花嫁未満の、わき役以上で。

好きは、片思い。
似合うは、両思い。


文章を書くときに、句読点の配置に結構困る。

私はあまり句読点を使わないこともあって、著者のこのタイトルにおける句読点の用法には違和感がある。句読点の位置で一呼吸置くことを期待しているのか。一呼吸置くことで助詞を引き立てることになり、その前後の言葉やそれらの呼応が強調されているようにも思われる。

少なくとも、違和感を感じさせることで興味を惹くことには成功している。コピーの勝利。

ジャケ買いをしたものの、正直中身にはあまり期待はしていなかった。女性向けの恋愛小説は嫌いではないが、あまりにもガーリー過ぎる。

最初の

あなたといたい、と
ひとりで平気、を
いったりきたり。

を読み終わっても、あまりその感想は変わらなかった。ストーリーは面白いとは思うが、引き込まれるほどではない。

私は名作家は名コピーライターであるという持論を展開しているが、逆は真とは限らない。この小説もそうなのかと思っていたのだが、読み進めていくにしたがって、その考えは変わった。

これは恋愛小説であるとともに、ファッションの小説なのだ。女性向けの小説であるが、それは女性がファッションに対しての真剣だからだろう。

服を着るときのことを、誰に見て欲しいのかを悩み、ショップ店員もそれを支える。ストーリーはすべてこの雛形で展開される。劇的な展開がさほどあるわけではない。だが、読んでいくうちにその展開に安心する。普段ファッションに興味のないにも関わらず、今度の週末にでも服を買いに行ってみようかという気分にさせる。

調べてみると、このコピーはルミネで実際に使われ、女性の間で話題になっていたようだ。

女子なら誰もが共感してしまう、せつないコピーと鮮やかな色彩が印象的な「ルミネ」の広告まとめ - NAVER まとめ

それもなるほどと思わせる。

好き嫌いもあるかもしれないし、物足りなさを感じる人も多いとは思う。ただ、時間つぶし以上のものは与えてくれる。

私が気に入ったから言うのではないが、これはむしろ男性に読んでみてもらいたい。

試着室で思い出したら本気の恋だと思う (幻冬舎文庫)
試着室で思い出したら本気の恋だと思う (幻冬舎文庫)