2010年2月2日火曜日

ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術

 以前、検索エンジンを運営する企業に勤務する友人からこんな話を聞いた。
「佐々木さん、これからの時代、将来的に子どもに独立してビジネスをさせたいのなら、できるだけ他の人と似たような名前を付けないほうがいい。なぜなら、どのような名前をつけるかによって、子供の人生が変わるかもしれませんから」
佐々木俊尚さんの新刊、「ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術」の冒頭にこのような逸話が出てくるが、この友人はもしかしたら私のことかもしれない。

ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術 (宝島社新書)

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私は以前より、組織の看板より自分の看板で勝負できるようになることの重要性やネットを活用したセルフプロモーションについて書いていた。
この本は私のそのような思いを代弁してくれているものだ。組織に頼らない生き方の重要性を説き、具体的にネットを使った方法を解説する。本書の中でも書かれているが、ネット上でセルフプロモーションを行うのには、ある程度プライバシーを露出する必要があり、特に個を隠し、組織の一員としてのみ機能することが求められる日本社会においては、必ずしも多くの人に支持されるものではないと思っていたが、Amazonのレビューを見ると、この本の主張に賛同する人が多いようだ。日本も変わってきたのだろうか。

自分の中でトラウマになってしまっているので、いわゆる「実名 vs. 匿名」論争には今でもあまり加わらないようにしている。トラウマになってしまったのは2年前あるセミナーで「ネットで検索してもひっかからない人は存在しないも同じ。ブログなどには写真を入れておくべき」と発言したことに端を発して受けたバッシングが原因だ。この時の発言が対象者やどのようなコンテキストで語られたかを抜きにして一人歩きし、はてなブックマークでは「死ねばいいのに」タグを付けられるまでになった。そのセミナーは学生がメールやブログをビジネスでどう活用するかを説いたセミナーだったので、自分を売り込むためにはということで、このような発言を行ったのだが、そのときにネット住民から受けた反対意見はプライバシー露出することによる危険性をどう考えているのかというものであった。はっきり言うと、きちんとTPOをわきまえて情報を公開すれさえすればほとんど危険など無いのだが、何を言っても無駄な状況と判断して、特に反論をしなかった。もっとも私がブログで反論したとしても、彼らはきっとそれを読む気もなかったろう。

この本では、そのセミナーで私が発言したようなことが多く含まれている。時代を先取りしていたなどと言うつもりは毛頭ない。むしろ、この本がきちんと受け入れられるようになってきたことを喜ばしく思う。

さて、他人には勧めておきながら、改めて見直すと自分のセルフプロモーション/ブランディングは正直言って意図しない形となってしまっている。本でも勧められているTwitterを私も早くから使っていたのだが、当初よりできるだけ仕事のことは書かないようにしていたし、自分の気持ちをそのまま吐き出すことにより不思議と同じような趣味趣向の人が集まってくるのが心地よく、本当に気持ちの赴くまま書いている。結果、どうなったかというと、酒飲みの私のフォローワーはほんとんどがアル中かアル中予備軍で、夜にもなると、どれだけ酔っ払っているかを競いあうかのような醜いTL (Time Line) となってしまっている。いったい私はどういうブランドを目指しているのか。

ちなみに、Twitterでのプロモーションやブランディングは実は結構難しい。成功している人も多いが、そのような人はかなりの努力をしているか、Twitter以外ですでにある程度名前を知られた人だ。実名以外でアカウントをとってTwitterで発言をしていたことがあったのだが、いかにフォローしてもらうことが大変かをその時に肌で感じた。私の本当のアカウントで行っているのと同じような発言をしていても、リプライ (@mentions) やRetweetはしてもらえない。これからもわかるように、やはりネット上だけでブランディングを行うのではなく、あくまでもネットを1つのツールとして利用するぐらいのスタンスのほうが良いだろう。

なお、本書は佐々木俊尚さんから贈呈いただいた。いつも本当にありがとうございます。